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「枕を高くして寝る」は、安心することを指す
「枕を高くして寝る」という慣用句が何を意味するのか、知らない人もいるでしょう。「枕を高くして寝る」が何を表すか、どのように使う言葉なのかを調べてみました。まずは、言葉の意味から見ていきましょう。
意味
「枕を高くして寝る」は、心配事がなくなり、安心して寝ることを表す慣用句です。気にかかることがなく、ゆっくりと安心して眠れる、つまり、心配事がまったくないことを表すと考えてください。
中国・戦国時代の話
「枕を高くして寝る」の由来は定かではありませんが、中国の書物にある話を紹介します。
中国の戦国時代、ある思想家が魏の王を説得しようと次のことを伝えました。「魏が秦と組めば、周りの楚(そ)や韓(かん)はきっと攻めてこない。大王は枕を高くして眠ることができ、何の心配もなくなるでしょう」。
戦国時代の中国では、敵の襲来にそなえ、遠くの音が聞こえるように地面に耳をつけたり、矢を入れる武具を枕にしたりして寝ていたとされています。この時代、王が枕を高くして眠ることは稀だったことがうかがえますね。
「枕を高くして寝る」は会話で使える?
「枕を高くして寝る」は会話で使える言葉です。どのように使うか、特徴や会話例を見ていきましょう。
使い方の特徴をチェック
「枕を高くして寝る」を使うのは、心配なことや不安なことがあり、安心して眠れないときが多いでしょう。気がかりなことが解決したら安心して眠れるという意味で、「枕を高くして寝る」を使います。
言い回しは「枕を高くして寝てみたい」「枕を高くして寝られそうだ」「枕を高くして寝られない」が多いかもしれません。
会話例を紹介
「枕を高くして寝る」を会話で使うパターンを紹介します。先輩と後輩が休憩室で話しています。
先輩「今日は元気がないね、どうしたの?」
後輩「私がミスしたせいで、お客様からクレームのメールが来たんです」
先輩「そうなの? それはいつ?」
後輩「2時間前です。お客様のお怒りが強くて…。課長が戻るのは来週だから、とりあえずそれまで待つことになりました。でも、あのメールを読んだら枕を高くして寝られません」
先輩「そうだったのね。それはしんどいね。オフィスに戻るのは、落ち着いてからで大丈夫よ。メールの件は私がやるから、ちょっとここでゆっくりしたら?」
自分の失敗や過失で相手に迷惑をかけると、安心して寝ることができないかもしれませんね。「枕を高くして寝られない」という経験がある人は、意外と多いのではないでしょうか?
例文を紹介
「枕を高くして寝る」の例文も見ていきましょう。
《例文》
・母は過度の心配性なので、「枕を高くして寝てみたい」といつもボヤく
・ずっと気がかりだったことがようやく解決したから、今日は枕を高くして寝られそうだよ
・あの人に謝ってもらわないことには、枕を高くして寝られない
・これができなくなったらどうしようと考えてしまう。当分枕を高くして寝られそうにない
いずれの例文も、心配事がなくなって安心して寝るという意味で「枕を高くして寝る」を使っています。社会に出ると、「枕を高くして寝る」のは難しくなるのかもしれませんね。
「枕を高くして寝る」の類語は
「枕を高くして寝る」の類語を紹介します。
「枕を高くする」
「枕を高くする」は、安心して寝ることや、安心して暮らすことを意味します。「枕を高くして寝る」と同義であり、使い方も同じと考えていいでしょう。
《例文》資金繰りに目処がついたので、ようやく枕を高くして眠れる
「枕」に関連する慣用句を紹介
ここからは「枕」に関連する慣用句を紹介します。
「枕を濡らす」
つらさや悲しさのあまり、布団の中で涙を流すことを「枕を濡らす」と言います。読み方は「まくらをぬらす」。寝ながらも深く悲しみ、涙を流すさまを表す際に用いる表現です。
《例文》子供が入院してから、パートナーは毎晩枕を濡らしている
「枕を攲てる」
「枕を攲てる」とは、枕から頭を上げて、耳を澄まして聞くことの意。「まくらをそばだてる」と読みます。寝ている部屋の隣でされる話や、ヒソヒソ話をこっそり聞く場合に用いられる言葉です。
《例文》隣室のヒソヒソ話に枕を攲てたが、内容まではわからなかった
「枕を並べる」
並んで寝ることや、大勢の人がそろって同じことをすることを「枕を並べる」と言います。また、同じ場所で倒れることを表す際にも用いられる慣用句です。
《例文》合宿では、先輩後輩関係なく枕を並べて眠ったものだ
「夢枕に立つ」
神仏や故人などが夢の中に現れて、ある物事を告げることを指す「夢枕に立つ」。「ゆめまくらにたつ」と読みます。「夢枕」とは、夢を見ている人の枕元のこと。「夢枕に立つ」は、お告げをする側の表現であり、お告げを受けた側は「夢枕に立たれる」と表現することになります。
《例文》亡くなった人が夢枕に立つと聞きましたが、まだそのような体験をしたことがありません
「寝る」に関連する慣用句を紹介
「枕を高くして寝る」のように「寝る」を使った慣用句を紹介します。さまざまな表現がありますので、それぞれの意味をチェックしてください。「川の字に寝る」「寝る子は育つ」の2つを見ていきましょう。
「川の字に寝る」
夫婦が子供を中にして、「川」の字の形に並んで寝ることを意味する「川の字に寝る」。親子で添い寝することを表す言葉です。
《例文》パートナーと話し合い、もう少ししたら3人で川の字に寝ることにした
「寝る子は育つ」
よく眠る子供は元気で丈夫に育つという意味の「寝る子は育つ」は、よく知られている慣用句かもしれません。ぐっすりとよく寝る子供ほど、元気よく健康的に育つという意味で使われています。
《例文》息子はよく寝るので心配になるが、寝る子は育つというし、あまり気にしないようにしよう
「足を向けて寝られない」
恩義のある人や、尊い人に対して、決してぞんざいにはできないと感じていることを表す慣用句です。特定の人に対する感謝や尊敬の気持ちを表すときに用いることが多いでしょう。
《例文》私がここまで来られたのは、恩師がいてこそ。足を向けて寝られないといつも思っています。
最後に
「枕を高くして寝る」について、意味や使い方をまとめました。由来は不明とされていますが、「枕を高くして寝る=心配事がなく安心して寝る」という意味で使う言葉です。現代では、枕を使う場合、その人に合った適切な高さがよいとされています。枕が高いのがよいわけではありませんので、誤解のないようにしてください。
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