「二束三文」とは
「二束三文」は、商売に関連する言葉です。日常生活やビジネスシーンで用いられていますが、この言葉の正確な意味を把握していますか?
「二束三文」は、数が多くてもひどく安い値段であることを表します。言い換えると、利益にならないことを意味する言葉で、値打ちがないことを表す際に用いられることも。「二束三文」という言葉をどのように使うか、一緒に見ていきましょう。
意味と読み方
辞書で調べた「二束三文」の意味を紹介します。
【二束三文/二足三文】
読み方:にそくさんもん
数量が多くても、値段がごく安いこと。また、ひどく安い値段。「—で売り払う」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
[補説] 2たばでわずか3文の値である意で、金剛草履の値段から出た語という。
「三文」とは、一文銭三枚のこと。一文銭とは、江戸時代の最小単位の通貨を指します。「値段のきわめて安いこと」「価値のない」「粗悪な」などの意味でも使われる言葉です。
辞書の意味から、「二束三文」は商売やお金に関連することで使われることがわかりますね。「値打ちがない」ことを表す際に用いることもあり、ネガティブな意味合いで使われることが多いでしょう。
由来は
「二束三文」の由来は、江戸時代の草履とする説があります。藁(わら)や藺(い)などを編んで作った、形の大きい丈夫な草履を金剛草履(こんごうぞうり)と言いますが、この草履の値段が二足で三文だったことから生まれたとされているのです。
草履ですから、「二足三文」と表記することもあります。
「二束三文」の使い方
ここからは、「二束三文」という言葉の使い方を見ていきましょう。「二束三文」は、商売や値段にまつわることで使われる言葉です。例文を参考にチェックしてください。
《例文》在庫過多のため、二束三文でセールをすることにした。大赤字だが、廃棄するよりはいいだろう
在庫を大量に抱えてしまったため、利益がほとんど出ない値段に下げて売ることを表す例文です。「二束三文」は、単に値段が安いことを表すのではなく、赤字になったり、損をしたりする場合にも使われます。
商売が苦しいことを表す際に用いられることが多いため、取引先や顧客に対して使うのはNG。無礼だと思われる可能性が高いので、注意してください。
《例文》祖母が大切にしていた宝石を鑑定に出したら、二束三文にもならないことがわかった
「二束三文にもならない」は、より利益が出ない状態を表します。「二束三文」より安いことを意味しますので、まったく利益にならない状態や大赤字になるような場合に用いる表現と言えるでしょう。
《例文》閉店セールで購入したコレクション品を開封したところ、二束三文の品でがっかりした
「二束三文」は、粗悪なものを表す際にも用いられます。状態が悪いものや、価値がないものを指す際に「二束三文」を使うことがあるでしょう。
例文からもわかるように、ほめ言葉などで「二束三文」を使うことはほぼないと言えます。そのため、この言葉が与えるイメージはよくないことが多いでしょう。この言葉を使う際に注意したいのが、使う相手やシーンを間違うと、失礼にあたる可能性があるということ。状況や相手に配慮して、「二束三文」を使うようにしてください。
「二束三文」の類語
「二束三文」の類語を紹介します。言い換えの表現として使える言葉をピックアップしましたので、参考にしてくださいね。
類語をチェック
「二束三文」の類語には、次のような言葉があります。
・安い
・粗悪な
・捨て値
・安いっぽい
・安かろう悪かろう
「捨て値」は、損を承知でつける安い値段のこと。捨て売り(捨てるような安い値段で売ること)の値段を指すこともあります。
「安かろう悪かろう」は、値段が安ければ、それだけ質が落ちるであろうことや、安い物によい物はないという意味で使われる言葉。いずれも、「二束三文」を言い換える際に使うことができるでしょう。
「三文」がつく言葉
上述しましたが、「二束三文」の「三文」は、江戸時代の通貨のこと。ここからは、「三文」を使った他の言葉を見ていきましょう。判子の名前やことわざなどを紹介します。
「三文判」
工場などで大量生産されている廉価な判子のことを、「三文判」と言います。公的書類や正式な契約書類などに押印する際、「三文判は不可」とされることも。認印として使うことはできます。読み方は「さんもんばん」。
「三文絵」
「三文絵」とは、安物の絵のこと。「さんもんえ」と読みます。出来が悪い絵や、つまらない絵を表す際にも用いられることがあるでしょう。浄瑠璃に登場する言葉です。
「三文小説」
「三文小説」とは、低級な小説を軽蔑していう言葉。「さんもんしょうせつ」と言います。文学的価値があるとはいえない小説や、とるに足らない小説を指すことも。歌詞に登場することもある言葉です。
「三文文士」
「三文文士」は、安っぽい、あるいは売れない小説ばかり書いている文士のことを言います。文士とは、文筆業の人のこと。作家や小説家、文章家などを指すと考えてください。また、文士を軽蔑する際に、この言葉を使うこともあります。読み方は「さんもんぶんし」。
「早起きは三文の徳」
早起きをすると、健康によいだけでなく、何かとよいことがあるものだということを表す「早起きは三文の徳」。「はやおきはさんもんのとく」と読みます。早起きをすると1日が長くなる分、わずかな徳があるという意味で用いられることも。なお、「早起きは三文の得」「朝起きは三文の徳」と表記することもあります。
江戸時代の通貨単位を使った言葉は他にもある
上述したように、江戸時代のお金の単位は、現代で使われる言葉に多数用いられています。
▷一文無し(いちもんなし)
まったくお金をもっていないことや、そのような人を表します。
▷千両役者(せんりょうやくしゃ)
技芸と風格ともに備わった人気役者を指す言葉。技量にすぐれ、きわだった活躍をして周囲を魅了する役者以外の人を表す際にも使われています。
最後に
「二束三文」の意味や由来、言葉の使い方、類語などを紹介しました。数が多いけれど値段が安い、粗悪であるという意味で使われることが多いため、ビジネスシーンなどで使う場合は注意を払うことをおすすめします。相手や状況によっては失礼にあたるため、配慮することを意識したいですね。
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