「本末転倒」とは?
日本語を学ぶ、外国の方が近年、増えてきていますね。日本人であるならば、正しい日本語を理解し、正しく使いたいものです。そうした日本語の一つ、「本末転倒」について本記事では解説します。
「本末転倒」の意味や使い方、「本末転倒」と似た意味を持つ言葉まで、紹介していきますよ。
「本末転倒」の意味
辞書で、「本末転倒」は以下のように説明されます。
ほんまつ‐てんとう〔‐テンタウ〕【本末転倒】
[名](スル)根本的で重要なこととささいでつまらないことを取り違えること。「─もはなはだしい」「─した考え」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「本末転倒」は、結果としてマイナスになってしまう状況に対して使われます。
例えば、「学生が、勉強をおろそかにしてアルバイトに打ち込む」のは、「本末転倒もはなはだしい」状況。学生にとって重要なことは勉強です。優先すべき勉強を後回しにしてアルバイトに打ち込んだ結果、単位を落としてしまったら、元も子もないですよね。
「本末転倒」の使い方を例文を用いて紹介
「本末転倒」とは、具体的にどのような状況を指すのでしょうか? 例文を交えながら紹介します。
1:「早く帰宅するために急いで仕事をしたら、最後にミスが見つかった。結局、いつもよりも帰るのが遅くなり、本末転倒になった」
良かれと思ってしたことが裏目に出てしまった、なんて苦い経験をしたことはありませんか? そんな状況は、まさに「本末転倒」と言えます。
2:「彼女を励ますつもりが、むしろ泣かせてしまった。これでは本末転倒もはなはだしい」
「本末転倒」と「はなはだしい」は、しばしばセットで使われます。
「はなはだしい」とは、「程度が普通をはるかに超えている」という意味。「本末転倒もはなはだしい」は、「本末転倒」の度合いをさらに強調するために用いられています。
ちなみに、「はなはだしい」は漢字で「甚だしい」。送り仮名を「甚しい」にしがちなので要注意です!
3:「今日は、明日のプレゼンのために早く休もう。プレゼン当日に倒れるなんて、本末転倒な事態は避けるべきだ」
「本末転倒な事態」や「本末転倒した考え」のような使い方もできます。大切なことをいいかげんにしている状況や考え方を指していますよ。
「本末転倒」と似た意味を持つ表現は?
続いて、「本末転倒」と似た意味を持つ表現も紹介しますね。
1:主客転倒
「主客転倒」は、辞書では以下のように説明されます。
しゅかく‐てんとう〔‐テンタウ〕【主客転倒/主客×顛倒】
[名](スル)主と客の力関係が逆になること。物事の軽重・本末などを取り違えること。「─した議論」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「物事の重要度を取り違えること」という意味では、「本末転倒」と共通しています。従属的な物事や上下関係が反対になっている場合に使えるのは、「主客転倒」になります。
2:角を矯めて牛を殺す
「本末転倒」と似た意味を持つ、ことわざも紹介します。
角(つの)を矯(た)めて牛(うし)を殺(ころ)す
《牛の曲がっている角をまっすぐに直そうとして、かえって牛を死なせてしまうことから
小さな欠点を直そうとして、かえって全体をだめにしてしまうたとえ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「角を矯めて牛を殺す」は、「良かれと思った一手で、余計に事態を悪化させる」ということを意味します。
「角を矯めて牛を殺す」の「矯めて」は、「直して」という意味です。「ミスをしないようにゆっくりやっていたら、締め切りを過ぎてしまい、角を矯めて牛を殺すことになってしまった」などというように使います。
3:葉を截ちて根を枯らす
「葉を截ちて根を枯らす」の意味は、以下の通りです。
葉(は)を截(た)ちて根(ね)を枯(か)らす
葉を切って大切な根まで枯らしてしまう。元も子も無くしてしまうことのたとえ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「元も子も無くしてしまう」とは、「結局、何もかも失ってしまう」ということ。例えば、「スカートについた小さなシミを取ろうとしたら、全体に大きく広がってしまった…。まさに、葉を截ちて根を枯らすことになった」のように使います。ちなみに、「葉をかいて根を断つ」ということわざも同じ意味です。
4:ほとけを直すとて鼻を欠く
実は、本末転倒と似た意味を持つことわざは数多く、「ほとけを直すとて鼻を欠く」もそのひとつです。
ほとけ を 直(なお)すとて鼻(はな)を欠(か)く
少しの欠点を直そうとして、度が過ぎ、全体をだめにしてしまうことのたとえ。角を矯(た)めて牛を殺す。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
仏像を修繕しようと手を加えているうちに、仏像の大切な鼻が欠けてしまうということから、「もっと良くしようとして、肝心な部分を損なってしまう」という意味で用いられます。「ぬいぐるみのほつれを直そうとしたがうまくいかず、“ほとけを直すとて鼻を欠く”になってしまった」などというように使うことができますよ。
最後に
「本末転倒」は、重要なことと、つまらないことを取り違える四字熟語だとわかりました。本人は気づかなくても、他人から見たら「本末転倒」だと思えることって意外と多いものですよね。「私は大丈夫だ!」などと過信せず、気をつけたいものです。
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