眼高手低とは?
眼高手低は「がんこうしゅてい」と読みます。知識はあって理想は高いのに、実力が伴わないといった、揶揄するニュアンスのある言葉です。
ここでは、眼高手低の意味を解説します。
言葉の意味
眼高手低は、批評する能力や知識はあるが、実際に創作する能力はないという意味です。理想は高いものの、実力が伴わないという意味でも使われます。
がんこう‐しゅてい
出典:小学館 デジタル大辞泉
理想は高いが実行力が伴わないこと。特に、批評する力はあるが創作力がないこと。
マイナスの意味で使うことが多い
眼高手低は、マイナスの意味で使われることの多い言葉です。「口ばかり達者で実行する能力がない人」「理想ばかり言って、実際にそれを行う実力はない人」に対して、否定的なニュアンスで使われる傾向にあります。
眼高手低の例文
眼高手低の例文をみて、言葉の理解を深めていきましょう。
・彼は彫刻について詳しく、その評論は高い評価を得ていた。その知識をもとに実際に彫刻をしてみたらまったくうまくできず、陰で眼高手低だといわれている
・課長は部下の出した提案にいつもダメ出ししているが、自分ではまったくアイデアを出そうとしない。眼高手低の見本のようだ
・彼女は料理の勉強をしようとレシピ本をたくさん集めたが、読むばかりでなかなか実践しようとせず、眼高手低といわざるを得ないだろう
・彼は理想だけは高く、いつも達成が難しいような高い目標を立てている様子がまさしく眼高手低だ。案の定、毎回目標を達成することがなく終わっている
眼高手低の類義語
眼高手低には、次のような類義語・言い換え表現があげられます。
・志大才疎(しだいさいそ)
・紙上談兵(しじょうだんぺい)
・机上の空論(きじょうのくうろん)
いずれも、「知識はあるが、実際に行動する能力は低い」という眼高手低と似た言葉です。
それぞれ、詳しくみていきましょう。
志大才疎
志大才疎は、志は雄大だが、それに見合った才能に欠けるという意味です。文字通り、志は大きいものの才能に疎いことを表しています。中国の古典である「後漢書」に書かれていた言葉です。
〈例文〉
・志を高く持つだけなら誰でもできるよ。それを実行に移すのが難しい。できないなら、志大才疎といわれるだけだ
・夢を持つのはいいが、具体的に叶える手段を考えないと志大才疎に終わってしまうよ
紙上談兵
紙上談兵は、理屈ばかりの議論をして、実行が不可能であること、あるいは実際の役に立たないことを表す言葉です。紙の上で戦術を議論することをたとえにしています。
〈例文〉
・試合後の記者会見を受けた監督は、敗因について「作戦に実行性がなく、紙上談兵だったことにあると考えている」と述べた
・あのチームは会議ばかりしていて、なかなか行動に移そうとしない。周りから紙上談兵だといわれている
机上の空論
机上の空論とは、頭で考えただけで、実際にはまったく役に立たない議論や計画を指します。「机上」は机の上のことで、「空論」は根拠のない議論・理論のことです。行動せず、無駄に議論を繰り返してばかりいることを指して使う言葉です。
「卓上の空論」や「砂上の空論」と間違えやすいため、注意しましょう。「卓上の空論」という言葉はなく、「砂上の空論」は、机上の空論と似た言葉である「砂上の楼閣(実現が困難という意味)」と混同している誤用です。
〈例文〉
・彼の提案はもっともらしく聞こえるが、まったく現実的ではなく、机上の空論だといわれている
・机上の空論にならないために、しっかり実行可能性を検証することが大切だ
眼高手低の対義語
眼高手低の対義語にあたるのは冷暖自知(れいだんじち)で、体験したものでなければわからないという意味です。水が冷たいか温かいかは、飲めばおのずとわかる、ということをたとえにしています。
何事も実際にやってみないと本当のことはわからないこと、人から聞いた知識ではなく自分で体験して確かめる必要があることを伝えている言葉です。真の悟りは自分で感得するものであるということを表した仏語でもあります。
理想は高いものの実行力が伴わないという意味の眼高手低とは、対照的な言葉といえるでしょう。
〈例文〉
・教育には、知識を教えるだけでなく実際に物事を体験する冷暖自知の考え方も必要だ
・本を読んで知識をつけるのもよいが、冷暖自知の精神で行動していくことも大切だよ
眼高手低を理解して正しく使おう
眼高手低は、知識があって批評をする能力はあるが、実際に創作する力はないという意味です。理想は高いものの、実力が伴わないという意味もあります。口ばかり達者で実行力のない人に対して使われることが多く、ネガティブなニュアンスを含む言葉です。
同じ四字熟語の類義語に「志大才疎」「紙上談兵」「机上の空論」があり、対照表現には「冷暖自知」があげられます。あわせて覚えておけば、眼高手低の理解がより深まるでしょう。
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