「既成概念」とは
ビジネスシーンでは、「既成概念」という言葉をよく使いますよね。アイデアや意見などを出す際に、「既成概念にしばられることなく」「既成概念にとらわれず」のように用いることが多いかもしれません。しかし、「既成概念」の正しい意味を把握している人はそれほど多くないということも。今一度、意味や使い方を見ていきましょう。
また、混合しやすい「固定概念」との違いについても紹介します。まずは辞書で調べた意味をチェックしていきましょう。
意味をチェック
「既成概念」は「既成」と「概念」の二つが組み合わさった言葉です。それぞれの意味を辞書で調べてみました。
【既成】
読み方:きせい
すでにできあがっていること。「—の概念」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
【概念】
読み方:がいねん
1:物事の概括的な意味内容。「—をつかむ」「文学という—から外れる」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
2:《concept》形式論理学で、事物の本質をとらえる思考の形式。個々に共通な特徴が抽象によって抽出され、それ以外の性質は捨象されて構成される。内包と外延をもち、言語によって表される。
上記から「既成概念」とは、「すでに出来上がっている物事の大まかな意味や内容」のことを指すのがわかりますね。すでに、世間に広く知られて定着している「常識」を指すとも言えます。
「既成概念」は、時代と共に変化することが多いでしょう。たとえば、かつては「育休は女性がとるもの」とされていましたが、今はそうではありません。「既成概念」も永続するものではないということを把握しておきたいですね。
「既成概念」の使い方
「既成概念」という言葉の使い方を見ていきましょう。まずは、使い方の特徴を紹介します。例文もあわせてチェックしてくださいね。
使い方の特徴
「既成概念」は、次のような使い方をすることが多いでしょう。
・既成概念にとらわれる(とらわれない)
・既成概念にしばられる(しばられない)
・既成概念に異を唱える
・既成概念を捨てる
・既成概念を壊す
ビジネスシーンで「既成概念」を使うのは、企画やアイデア出しの場面が多いかもしれませんね。新たなことを生み出して価値提供するには、「常識」とされることを打破する必要があるということも。それを伝える場合に、「既成概念にとらわれず」「既成概念を捨てて」というように使います。
例文
《例文》
・既成概念にとらわれていると、新しいものは生み出せないよ。まずは常識を疑おう
・既成概念にしばられないで生きるのは、なかなか難しい
・チーム内の意見で多かったのは、既成概念に異を唱える必要があるということです
・既成概念を捨てて考えろと言われたが、それができれば苦労しない
・彼女の作品の特徴は、既成概念を壊したいと思わせる要素が強いところです
上記の例文はいずれも「既成概念」を壊す、捨てるなどを意味しています。「既成概念」は、何かを生み出すような場面で使われる言葉と言えるでしょう。
「固定概念」との違い
「既成概念」と混同しやすいのが「固定概念」です。どちらも同じ意味だろうと思う人もいるでしょう。「既成概念」との違いについて見ていきましょう。
「固定概念」という言葉はない?
「固定概念」は、「固定」と「概念」が組み合わさった言葉。「固定」とは、一定していて変化がないことや、動かないことを表します。このことから、「一定していて変化のない物事の内容や意味」を表すのが「固定概念」になりますが、意味が重複して不自然ですよね。
実は「固定概念」という言葉は、現時点で辞書に載っていません。「固定概念」は誤用とすることもあり、使う際は注意することをおすすめします。
「固定観念」が正しい?
「固定概念」と似た言葉に「固定観念」があります。「固定観念」とは、常に頭から離れず、その人の思考を拘束するような考えのこと。「固着観念(こちゃくかんねん)」と言うこともあります。
「固定概念」は、「固定観念」の誤用であるとする説があります。言葉の響きや漢字が似ているため、誤って覚えた「固定概念」が広まったのかもしれませんね。
「既成概念」と「固定観念」の違いも調べてみましょう。二つの言葉の意味を比べてみると、「一般的なとらえ方や考え方」を表すのが「既成概念」であるのに対し、「固定観念」は「その人個人の主観による考え」を表すことがわかります。このことから、二つの言葉の意味は大きな違いがあると言えるでしょう。
「既成概念」と似た言葉
ここからは、「既成概念」と似た言葉を紹介します。言い換えの表現として使える言葉もありますので、ぜひチェックしてください。
「思い込み」
「思い込み」は深く信じ込むことや、固く心に込めることを表す言葉です。「こうあるべきだ」「こうに違いない」「そう決まっている」というような、一定の考えや価値観にとらわれることを表す際に用いられることが多いでしょう。
「思い込みが強い」「思い込みで行動する」「思い込みが邪魔する」「思い込みを打ち破る」のように使われており、「既成概念」の言い換えに適していると言えます。
《例文》彼女は思い込みが強く、ブレることがない分、柔軟性に欠ける
「先入観」
前もって抱いている固定的な観念を表す「先入観」。その観念があることで、自由な思考が妨げられる場合に用いられる言葉です。「先入観にとらわれる」「先入観を持つ」「先入観が邪魔する」「先入観を払拭する」のように使います。
この言葉も「既成概念」の類語と言えるでしょう。言い換え表現の一つとして把握しておくのもいいですね。
《例文》先入観を持たずに人と接したいと常々考えているが、実際は難しい
「偏見」
かたよった見方や考え方を表すのが「偏見」です。ある集団や個人に対して、客観的な証拠がないのに抱く非好意的な先入観や判断を指すと考えてください。「偏見を持つ」「偏見にとらわれる」「偏見を払拭する」のように使います。「既成概念」と近い意味を持つ類語と言えるでしょう。
《例文》偏見を持つのは勝手だが、それを他人に押しつけるのはお門違いだ
最後に
「既成概念」について意味や使い方、似た言葉などをまとめました。「固定概念」「固定観念」と混同されがちですが、意味は異なります。誤用すると相手を困惑させるかもしれませんので、使う際は注意したいですね。
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