「鶏口となるも牛後となるなかれ」って?
「鶏口となるも牛後となるなかれ」はことわざですが、正しい意味や読み方を知らない人は多いでしょう。アドバイスとして、このことわざを贈られることもありますので、意味などを把握しておきたいですね。
意味と読み方
▷鶏口(けいこう)となるも牛後(ぎゅうご)となるなかれ
読み方:けいこうとなるもぎゅうごとなるなかれ
《「史記」蘇秦伝から》大きな団体で人のしりについているよりも、小さな団体でも頭(かしら)になるほうがよい。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「鶏口」とは、小さな団体の長や頭をたとえた言葉。「牛後」とは、牛の尻のことで、強大な者の後に従い使われる者をたとえた言葉です。
このことわざは、「大きな組織の末端で人に使われるよりも、小さな組織の長(トップ)になれ」ということを表しています。
由来は
このことわざの由来と言われているのが、中国の『史記』。「蘇秦列伝」にある一節「寧為鶏口、無為牛後」であるとされています。現代の言葉で表現すると、「鶏の口となっても、牛の尻になるべきではない」という意味になりますが、この言葉が形を変え、ことわざとして根づいたのでしょう。
「鶏口となるも牛後となるなかれ」は、就職やキャリア形成のアドバイスなどで使われることもあります。また、将来について悩む人に送るエールとして用いることもあるでしょう。
漢字に注意
「鶏口となるも牛後となるなかれ」を使う際に注意したいのが、漢字や読み方の間違いです。特に「牛後」は、読み書きの間違いが起こりやすいかもしれません。日常的に使う言葉ではないので、誤用のないよう注意したいですね。
「鶏口となるも牛後となるなかれ」の使い方
「鶏口となるも牛後となるなかれ」の使い方を見ていきましょう。例文を紹介しますので、参考にしてください。このことわざが使われるのは、就職やキャリアが関連するような場面でしょう。また、企業活動などで用いられることもあります。
《例文》将来のことを考えるなら、待遇面だけでなく、自分が何をやりたいかも考えるといいですね。「鶏口となるも牛後となるなかれ」というように、小さな組織でトップを目指すという選択肢もあります。
就職活動において、志望企業を決める基準となりやすいのは企業規模や待遇面でしょう。例文では、それだけに目を向けるのではなく、自分が将来何をやりたいかを考えるように促しています。
《例文》私が起業したのは、「鶏口となるも牛後となるなかれ」だと思ったから。自分らしく活躍して、会社を大きくしていきたい
「鶏口となるも牛後となるなかれ」にならい、起業したことを表す例文です。働くことは、自分の生き方に直結すること。環境や状況の変化で見直す必要が生じることもあるでしょう。
働き方に対する価値観はさまざまです。大きな組織で働くことが適している人もいれば、小さな組織でトップを目指すのが性に合うという人もいるでしょう。
自分にあった働き方を見つけるのは時間を要することが多いもの。「鶏口となるも牛後となるなかれ」は、さまざまな選択肢があることを気づかせてくれることわざと言えるでしょう。
使う際の注意点
就職活動の面接などで、このことわざを用いる人もいるかもしれません。組織を引っ張っていく存在になりたいとアピールするのに適していますが、十分な配慮も必要です。
このことわざを使うと、「小さな組織でトップになる」と面と向かって伝えることになります。相手やシチュエーションによっては、よい印象を持ってもらえないかもしれません。そのことを意識し、使う方がいいですね。
また、アドバイスやエールとして使う際も配慮したいもの。なぜなら、大きな組織で働きたいと望む人もいるからです。働き方に対する価値観は、個人により異なります。それを理解せずにアドバイスをしても、単なる押しつけで終わるかもしれません。アドバイスをする際は、相手の考えや意見を尊重したいですね。
「鶏口となるも牛後となるなかれ」と似た言葉は?
「鶏口となるも牛後となるなかれ」と似ている言葉を紹介します。意味や読み方、使い方などをチェックしてください。例文も見ていきましょう。
「鶏口牛後」
「鶏口となるも牛後となるなかれ」を略した言葉とされるのが、「鶏口牛後」。「けいこうぎゅうご」と読みます。意味や使い方も、「鶏口となるも牛後となるなかれ」と同じと考えていいでしょう。座右の銘とする人もいる言葉ですが、アドバイスなどで使う際は、相手に配慮するようにしてください。
《例文》働くなら「鶏口牛後」を目指したいと考え、このセミナーに参加しました。
「鯛の尾より鰯の頭」
「鯛の尾より鰯の頭」とは、大きい団体で人の後に従うよりは、小さな団体でもトップとなる方がよいということを意味します。読み方は「たいのおよりいわしのあたま」。「鶏口となるも牛後となるなかれ」と同じ意味を表すと考えていいでしょう。類語として使うこともできます。
《例文》父から言われ続けたのは、「鯛の尾より鰯の頭」ということ。いずれはトップを目指せるくらいに力をつけたいと考えています。
「芋頭でも頭は頭」
どんなにつまらないものの頭(かしら)でも、頭に変わりはないことを表すのが「芋頭でも頭は頭」。「いもがしらでもかしらはかしら」と読みます。「鶏口となるも牛後となるなかれ」に近い意味を持つと言えるでしょう。
《例文》友人は「芋頭でも頭は頭」と言いながら、立ち上げた会社を軌道に載せようと奮闘している
「大鳥の尾より小鳥の頭」
「大鳥の尾より小鳥の頭」は、「鶏口となるも牛後となるなかれ」の同義語と考えていいでしょう。表現は異なりますが、意味や使い方は同じと考えてください。「おおとりのおよりことりのかしら」と読みます。
《例文》暖簾分けをしてもらって独立した幼なじみは、「大鳥の尾より小鳥の頭」がポリシーだと言っている
最後に
「鶏口となるも牛後となるなかれ」ということわざについてまとめました。働くことに対する価値観は千差万別です。大きな組織がいいと思う人もいれば、小さな組織でトップを狙いたいという人もいるでしょう。アドバイスを送る際は、相手の意向や望みを把握し、尊重するようにしたいですね。
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