皆さんは、「傲岸不遜」という四字熟語を聞いたことはありますか? 一文字違いの「傲慢不遜」は知っているけれど、「傲岸不遜」は知らないという方も多いのではないでしょうか。そこで本記事では、「傲岸不遜」の意味や使い方、類語などを解説します。
「傲岸不遜」とは?
「傲岸不遜」は、「ごうがんふそん」と読みます。一文字違いの「傲慢不遜」と間違って読んでしまいがちなので注意が必要な言葉です。「傲岸不遜」とは、「おごり高ぶり、人に屈することのないこと、またそのような様子」を表します。威張っていて人を見下し、調子に乗っているさまを表す言葉です。
「傲岸」と「不遜」はどちらも「おごり高ぶる」という意味があり、2つ組み合わせることでその意味を強調しています。ちなみに、「岸」という文字単体だと、「角が立っていること」を意味します。
「傲慢不遜」とは違う?
よく似た四字熟語に「傲慢不遜」がありますよね。日常会話ではこちらの方が馴染みのあるのではないでしょうか?
「傲慢不遜」も、「おごり高ぶり、人に屈することのないこと」。「傲岸不遜」と同じ意味と理解しておいていいでしょう。ちなみに一文字違いの「慢」は、「思い上がって、人をあなどること」という意味。「慢心(おごり高ぶること)」「漫言(おごり高ぶって言うこと)」という言葉にも使われます。
使い方を例文でチェック!
「傲岸不遜」は、「傲岸不遜な人」「傲岸不遜な態度」などというように使われることが多い言葉です。会話の中で使われる主なパターンを見ていきましょう。
1:部長は傲岸不遜な人なので、部下から距離を置かれている。
おごり高ぶる人物のことを「傲岸不遜な人」と形容することも。たとえ、上の役職についていたり、成績が優秀であったとしても、他人を見下したり、偉そうな口調で指図する人は尊敬できません。仕事はデキるが、誰もついてこないタイプの人かもしれませんね。
2:試合中の彼の傲岸不遜な態度が問題になっているらしい。
暴言を吐いて相手を挑発したりするなどの「傲岸不遜」な態度が、スポーツマンシップに反するとして問題視されることも。いくら技術力が高くても協調性がなく、他の選手と衝突してばかりいると、メンバーから外されてしまう可能性も考えられます。
3:夫の傲岸不遜な態度が原因で、離婚を決意しました。
高圧的な態度をとってきたり、浮気をしても言い訳をするなどの行為が原因であることが考えられますね。自分の非を認めず、相手のせいにしたりすると、結局反省することがないため、同じ問題行動を繰り返すことにつながります。普段一緒にいるパートナーはうんざりしてしまうかもしれませんね。
類語や言い換え表現は?
「傲岸不遜」の類語には、「傲岸無礼」「傍若無人」「高慢」などが挙げられます。いずれもおごり高ぶる人柄や、態度などを意味する言葉です。意味を1つずつ確認していきましょう。
1:傲岸無礼
同じ「傲岸」を使った四字熟語に、「傲岸無礼(ごうがんぶれい)」があります。意味は「傲岸不遜」と同じく「おごり高ぶり、人に屈することのないこと」。「無礼」には、「礼儀に外れること」という意味があります。
(例文)
・彼のような傲岸無礼な人は初めてみた。
・傲岸無礼な人にはなりたくない。
2:傍若無人
「傍若無人(ぼうじゃくぶじん)」の意味は以下のとおりです。
[名・形動]《「史記」刺客伝から。「傍(かたわ)らに人無きが若(ごと)し」の意》人のことなどまるで気にかけず、自分勝手に振る舞うこと。また、そのさま。「―な態度に腹が立つ」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
人のことを気にせず、自分勝手なことをすることを「傍若無人」と言います。自分勝手な人を見て「なんて傍若無人な人だろう」などと憤慨する時に使います。他人に配慮せず、自己中心的な振る舞いが「傲岸不遜」と共通していますね。
(例文)
・兄の傍若無人ぶりには驚いた。
・上司の傍若無人な振る舞いには嫌気がさしました。
3:高慢
「高慢(こうまん)」の意味は以下のとおりです。
[名・形動]自分の才能・容貌(ようぼう)などが人よりすぐれていると思い上がって、人を見下すこと。また、そのさま。「―の鼻を折る」「―な人気俳優」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
人より自分の方が優れていると自惚れており、他人を見下すことを「高慢」と言います。どこか上から目線で、馬鹿にしたような態度をとる人に対して用いられることが多いですね。プライドが高いとも言い換えられそうです。
(例文)
・その俳優は、高慢な態度でスタッフに接しているようだ。
・成績優秀だが、高慢な態度が鼻につく。
対義語は?
「傲岸不遜」の対義語としては、「人に対して誠実で、腰が低いこと」という意味を持つ言葉が当てはまるでしょう。例えば、「温厚篤実(おんこうとくじつ)」は、「性質が穏やかでまじめなさま」。人当たりが柔らかく、誠実な人のことを表します。
また、「謹厳実直(きんげんじっちょく)」は、「慎み深く、まじめで正直であること」。誠実な働きぶりなどを褒める時使われます。いずれの言葉も、真面目で誠実な人柄を好意的に思っている場合に使われるため、「傲慢不遜」とは正反対の意味であると言えるでしょう。
(例文)
・彼の温厚篤実な人柄に惹かれて結婚しました。
・彼女の謹厳実直な働きぶりには感心しました。
最後に
「傲岸不遜」とは、「おごり高ぶり、人に屈することのないこと」。他人を見下したり、調子に乗っている人の姿を見て「あの人は傲岸不遜だ」と非難する場合に使われます。一文字違いの「傲慢不遜」とほぼ意味は同じですが、よく似た四字熟語もあることを頭に入れてみてください。他人に対して「傲岸不遜」な態度をとらないように気をつけたいですね。
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