皆さんは、「不言実行」という四字熟語を知っていますか? あまり馴染みがないかもしれませんが、仕事への姿勢や取り組み方を表すこともある言葉です。ビジネスシーンでは、不言実行する人に憧れる人や、座右の銘として使う人もいるようですよ。そこで本記事では、「不言実行」の意味や使い方、そして「有言実行」との違いについて解説します。
「不言実行」とは?
「不言実行」の読み方は、「ふげんじっこう」です。辞書の意味を確認していきましょう。
文句や理屈を言わずに、黙ってなすべきことを実行すること。「―の人」「―の時だ」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
不平不満や愚痴などを言わず、黙々となすべきことをすることを「不言実行」と言います。「不言」は、「言葉に出さないこと」、「実行」は「行動すること」なので、簡潔に言うと「何も言わずに行動すること」という意味合いになります。
使い方を例文でチェック!
「不言実行」は馴染みのある表現ではないので、使い方がわからないという方も多いのでは? 「不言実行」は理想的な人物像として、座右の銘のように使われることのある四字熟語なんですよ。さっそく例文を見ていきましょう。
1:大工の棟梁である祖父は、昔から不言実行の人だ。
夢や目標を軽々しく口にせず、ただ黙々と目の前の仕事に取り組む人はまさに「不言実行の人」。昔気質の職人やシニア世代に多い特徴かもしれませんね。寡黙ではあるものの、真摯に仕事に取り組む姿勢からは、仕事への情熱やプライドが感じられます。「何も言わずに実践している姿がかっこいい」と尊敬する人も多いでしょう。
2:何かと言い訳をしてしまいがちなので、今年の目標は“不言実行”とすることにした。
日常生活では、つい職場で愚痴を言ったり、やると言いながらもなかなか行動に移せないこともありますよね。何かと言い訳をして、やりたいことができていない場合は、「不言実行」を目標にしてみては? 意識が変わり、夢や目標を実現できるきっかけになるかもしれません。
3:今がまさに不言実行の時だ!
「今は何も言わず、行動に移すべき時だ」という意味ですね。頭の中で色々と考えているだけでは、状況は何も変わらないまま。理屈や不平不満などは置いておいて、今まで蓄えてきた知識やスキルを発揮するべきタイミングなのでしょう。人生のターニングポイントとも言えますね。
類語や言い換え表現は?
「不言実行」とよく似た四字熟語に、「無言実行」と「有言実行」があります。それぞれどんな意味があるのか、そして不言実行とはどんな違いがあるのかチェックしていきましょう。
1:無言実行
「無言実行」の読み方は、「むげんじっこう」です。「むごんじっこう」ではないため、気をつけてください。「無言実行」は、「不言実行」とよく似ているため、「不言実行の間違いなのでは?」と思われがちですが、辞書にも記載されています。「不言実行」と同じく、「黙ってなすべきことをすること」という意味です。
(例文)
・同じ野球チームのA君は、無言実行の人だ。
・自分で無言実行すればいいと思って、口をつぐんだ。
2:有言実行
「不言実行」と聞くと、「有言実行」という言葉を思い出す人も多いのでは? 「不言実行」と同じく、座右の銘として用いられる言葉ですが、どのような意味なのか改めて確認していきましょう。
《「不言実行」からつくられた語》発言したことを責任をもって実践すること。「―で優勝する」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
自分が発言したことを必ず実践することを、「有言実行」と言います。「今月は営業でトップの成績をとります」「必ず第一志望校に合格します!」など夢や目標を周囲に宣言し、その言葉通り実行する人は、まさに「有言実行するタイプ」。先に宣言することで自分を追い込み、必ず成功させようとする心の強い人でもありますね。
口に出さずに黙々と行なう「不言実行」とは、アプローチの仕方は異なりますが、「なすべきことを実践する」という点においては同じと言えるでしょう。
(例文)
・兄は有言実行した通り、見事弁護士試験に合格した。
・彼は有言実行する人だから、きっとリーダーとして信頼されるだろう。
対義語はあるの?
「不言実行」の対義語としては、「有口無行(ゆうこうむこう)」が挙げられます。「有口無行」とは、「口先だけで行動が伴わないこと」。いくら「こういうことがやりたい」と言っていても、行動しなければ何も状況は変わりません。口先ばかりで、何もしない「有口無行」は、口を出さずに実践する「不言実行」とは正反対と言えるでしょう。
(例文)
・弟は有口無行なところがあるので、今回も結局何もしないだろう。
・できるだけ有口無行になることは避けたい。
英語表現は?
「不言実行」のように、何も言わず実践することが素晴らしいという意味合いを持つ英語表現に、「Action speaks louder than words」があります。英語のことわざで、直訳すると「行動は言葉よりも雄弁だ」という意味。「どれだけ言葉を並べるよりも、行動に移すことに価値がある」という意味合いです。
(例文)
・My motto is “Action speaks louder than words”.(私のモットーは、不言実行です)
・My goal for this year is to be “Action speaks louder than words”.(私の今年の目標は、不言実行です)
最後に
「不言実行」は、「余計なことを言わずに、実践すること」。不平不満や理屈などを口に出さずに、やるべきことをやる人のあり方を、前向きに捉えた言葉です。現在では、「有言実行」の方がよく使われる言葉となっていますが、元々はこの「不言実行」から作られた言葉だというのは意外でしたね。「不言実行」と「有言実行」、よりお手本にしたい方を座右の銘として選んでみてはいかがでしょうか?
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