「辣腕を振るう」「辣腕家」というように使われる、「辣腕」という言葉。正しい意味は知っていますか? 似た表現に、「敏腕」「凄腕」などもあるため、いまいち違いがわからないという方も多いかもしれません。そこで今回は、「辣腕」の意味や使い方、類語、英語表現などを解説しましょう。
「辣腕」の意味とは?
「辣腕(らつわん)」とは、「物事を躊躇することなく、的確に処理する能力があること」です。正確性だけではなく、ときに容赦なく仕事をこなしていくことができる人のことを表します。
「辣腕」の「辣」には、「厳しい」「むごい」という意味があります。そのため、「的確に仕事をこなす」という行動の中に、どこか厳しさや荒々しさが感じられる場合に使われるのが一般的です。
使い方を例文でチェック!
日常生活で「辣腕」は、「辣腕を振るう」「辣腕家」というように表現します。それぞれ、どのようなシーンで使われるのでしょうか? 詳しく見てきましょう。
1:彼は前の営業部でも辣腕を振るっていたようだ。
「辣腕」は、「辣腕を振るう」というように使われます。主に仕事ぶりを褒めるときに使われることが多く、難しい局面でも優れた能力で仕事を進めて行ける人に対して使用します。会話の中では、「相変わらず辣腕を振るわれていますね」「課長の辣腕ぶりは伺っています」などと表現することもできますよ。
2:彼はこの業界では知らぬ者はいないほどの辣腕家だ。
「辣腕家」とは、簡単にいうと「辣腕な人」のこと。物事を処理する能力に長けている人のことを「あの人は辣腕家だね」と表現します。仕事に対する姿勢が誰よりも厳しく、ストイックな性格であるともいえるでしょう。
3:私の兄はテレビで話題の辣腕弁護士だ。
「辣腕」は、仕事ぶりを褒めるときに使われることが多いため、「辣腕弁護士」「辣腕記者」などと、職種や肩書をつけることもあります。その業界では知らない者はいないくらい、飛び抜けた才能を持っている人物に使われることが多いでしょう。
類語や言い換え表現とは?
「辣腕」とよく似た言葉に、「敏腕」や「凄腕」「剛腕」などがあります。いずれも「腕」がつく熟語ですが、どのような違いがあるのでしょうか? 意味や使い方を押さえておきましょう。
1:敏腕
「敏腕(びんわん)」とは、「物事を素早く正確にこなすさま」を表します。仕事をテキパキとこなしながら、なおかつミスも少ない仕事がデキる人という意味合いで使われることが多いですね。「辣腕」と同じく、職種をつけて「敏腕弁護士」などということもあります。「敏腕」の「敏」には、「頭の働きや動作が素早いこと」を指すので、頭脳明晰ともいうこともできそうです。
・プロジェクトリーダーとして敏腕を振るった。
・彼はこの道30年の敏腕刑事だ。
2:凄腕
こちらは、日常生活でもよく耳にする表現ではないでしょうか。「凄腕(すごうで)」とは、文字通り「普通ではできないことをやってのける手腕」を指します。他の人が圧倒されてしまうほど優れた技術を持っている人のことを「凄腕の料理人」と呼ぶこともありますね。
・料理の選手権では凄腕の料理人たちが集まっていた。
・叔父さんはプロの大工も舌を巻くほどの凄腕だ。
3:剛腕
「剛腕(ごうわん)」とは、「物事を強引に推し進める人」のこと。腕っぷしが強いことから転じて、物事を力技でやり抜くという意味合いもあります。仕事ぶりや振る舞いが豪快な人に対して使うことが多いですね。別の漢字を使って「豪腕」とも書きます。
・社内の問題を解決するために剛腕を振るった。
・私の祖父はかつて漁業で剛腕ぶりを発揮していたようだ。
4:有能・やり手
その他の言い換え表現として、「有能」や「やり手」も挙げられます。「有能」とは、「才能のある人」。「やり手」とは、「腕前がある人」のことです。「有能」は、単純に能力や才能があることを指しますが、「やり手」は成功のために手段を選ばない様子や、容赦ない人として「辣腕」に似た意味合いが含まれます。
・1人で3役こなす彼女はとても有能な人材だ。
・彼は業界きってのやり手弁護士だ。
「辣腕」の対義語
「辣腕」には、明確な対義語がありません。「的確に処理する」という意味と、「躊躇なく、厳しい」という二つの意味合いがあるため、明確な対義語を決めるのは難しいようです。
ただし、反対のニュアンスを持つ言葉に「鈍腕」が挙げられます。「鈍腕(どんわん)」とは、「物事を処理する能力が劣ること」。腕前が鈍く、テキパキと処理する能力に欠けているさまを表します。「辣腕」だけでなく「敏腕」や「凄腕」などの対義語として用いられる言葉です。
英語表現とは?
「辣腕」の英語表現としては、「shrewd」が挙げられます。「shrewd」は、「抜け目のない、鋭い、賢い」という意味の単語です。例えば、「a shrewd politician(辣腕な政治家)」「a shrewd lawyer(辣腕な弁護士)」ということができます。
また、「shrewd」の名詞形「shrewdness」を使って、「display one’s shrewdness(辣腕を振るう)」と表現することもできますよ。
・My brother was shrewd in business.(兄はやり手の事業家だった)
・My father displayed great shrewdness on the occasion.(父は大いに辣腕を振るった)
・He’s shrewd in business matters.(彼は商売に対して抜け目がない)
・She is a shrewd businessman.(彼女は商才に長けている)
最後に
「辣腕」とは、「物事を的確に処理する能力」のこと。ただ優秀なだけではなく、やや強引で厳しいニュアンスが含まれている言葉です。「辣腕」な人は、仕事の場面において多少乱暴な手段を使ったり、容赦ない態度をとることもあるでしょう。
ただし、「辣腕」は、ネガティブな意味として用いられる言葉ではありません。あくまでも的確にこなす仕事ぶりを褒める表現であることを覚えておきましょう。
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