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この記事のサマリー
・「呉越同舟」は、敵対関係でも利害一致で共に行動することを意味します。
・「呉越同舟」と似た意味の言葉に「昨日の敵は今日の友」などがあります。
・単なる協力関係ではなく「不本意な共闘」も含む点に留意しましょう。
ビジネスシーンや人間関係において、立場や意見が異なる相手と手を組む場面は少なくありません。そんなときにぴったりの表現が「呉越同舟」です。
この言葉の由来や背景には古代中国の興味深い逸話があるので、ぜひチェックしてください。一緒に類語表現との違いを知っておくと、言葉選びの幅が広がりますよ。
辞書に基づき、会話や文章での自然な使い方、英語表現まで紹介していきます。
「呉越同舟」とは?
最初に、「呉越同舟」の読み方と意味を確認しましょう。
「呉越同舟」読み方と意味
「呉越同舟」は「ごえつどうしゅう」と読みます。
『デジタル大辞泉』では、次のように定義されています。
ごえつ‐どうしゅう〔ゴヱツドウシウ〕【呉越同舟】
《「孫子」九地から》仲の悪い者どうしが同じ所に居合わせたり、行動を共にしたりすること。また、敵対していてもいざというときには共通の困難や利害のために協力し合うこと。
引用:『デジタル大辞泉』
「呉越同舟」は、古代中国、戦国時代の故事に由来する言葉で、敵味方の区別なく、共通の困難や目的に向かって行動することを意味します。
「呉越同舟」の語源と背景
「呉越同舟」の舞台は、古代中国の戦国時代に遡ります。長きにわたり激しく争っていた古代国家、呉(ご)と越(えつ)。本来は敵対関係にある両国の人々が、図らずも同じ船に乗り合わせ、協力し合った逸話がもとになっています。
舟が難破しそうな絶体絶命の状況下では、敵味方の区別なく助け合う以外に道はありません。たとえ心中に不満が渦巻いていても、共通の困難を乗り越えるために協力し、共に成果を上げざるを得ないこの状況は、現代の私たちにも、共感できる教訓を与えてくれます。
参考:『デジタル大辞泉』、『故事俗信ことわざ大辞典』(ともに小学館)

「呉越同舟」の使い方と例文
いがみ合うだけでは前に進めない—そんな状況は、現代のビジネスや政治、人間関係でも珍しくありません。具体的な例文を見ながら、使える場面を確認しましょう。
「ライバル企業同士が呉越同舟で新しいプロジェクトに取り組んでいる」
共通の困難や目的のために、本来は敵対する関係の者が協力し合う状況の例です。
他にも、ビジネス、政治・選挙活動、SNS上の議論などでの使用例を紹介します。
例:
「意見が対立していた二人が、呉越同舟で会議に臨んだ」
「選挙では、かつての政敵が呉越同舟の形で共闘することもある」
「SNSの炎上対応では、普段対立しているユーザーも呉越同舟で発信者を守った」
「呉越同舟で共同開発に乗り出したが、水面下の主導権争いは続いている」
「呉越同舟」は「表面上は協力しているが、内心は反発している」といった緊張感や皮肉を含意する場合もあります。
例:「与野党が呉越同舟で法案成立に協力する展開となったが、その後の関係修復ができるかどうかは不透明だ」
「呉越同舟」の類語や言い換え表現
「呉越同舟」と近い意味を持つ表現には、以下のようなものがあります。意味や用法の違いを理解しておくことで、適切に使い分けることができますよ。
「昨日の敵は今日の友」
「昨日の敵は今日の友」とは、かつて敵だった者同士が、事情の変化により現在は味方になっていることを意味します。「昨日の仇は、今日の味方」とも表現します。
「呉越同舟」と同様に、対立から協力への転換を示します。
「昨日の敵は今日の友」は、人の心は移ろいやすく、あてにならないという意味も含み、浄瑠璃や歌舞伎、明治期の記録文献などにも登場します。
例文:「昨年はライバル同士だった二人が、今年はタッグを組んで事業を立ち上げた。まさに『昨日の敵は今日の友』だ」
参考:『故事俗信ことわざ大辞典』(小学館)
「利害一致」
「利害一致」は、お互いの利益や損害が一致していることを表します。
「呉越同舟」はもともと敵対していた関係が前提ですが、「利害一致」は対立の有無に関係はありません。
例:「互いの技術力を必要としていたため、あの二社が提携したのはまさに利害一致の結果といえる」
参考:『デジタル大辞典』(小学館)

英語で「呉越同舟」はどう表現する?
英語で「呉越同舟」に近い意味を表す言い回しに、“strange bedfellows”があります。
“strange bedfellows”は、直訳すると「奇妙な同衾者(同じベッドで寝る者)」という意味で、通常は相いれない者同士が、ある目的や利益のために手を組む状況を指します。
ことわざとして、“Misfortune makes strange bedfellows.”(不幸が縁で奇妙な友情が生まれる。)という表現もあります。
参考:『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)

「呉越同舟」に関するFAQ
ここでは、「呉越同舟」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「呉越同舟」はポジティブな意味で使えますか?
A. 対立していた者同士が、共通の目的のために協力するという文脈では、前向きな意味合いになります。
Q2. 会話で自然に使うにはどうすればいいですか?
A. 状況説明とセットで使うとわかりやすいです。
「互いに反対意見でしたが、呉越同舟で協力しました」など、背景を添えると伝わりやすくなります。
Q3. 「呉越同舟」を使うと、相手に失礼になることはありますか?
A. 表現によっては「本当は仲が悪いのに」といった皮肉に聞こえることもあるため、関係性や場面に配慮が必要です。
最後に
いがみ合うだけでは決して解決しない、複雑で困難な問題に直面したとき、まさにこの「呉越同舟」という言葉が当てはまります。
これは、現代のビジネスにおける協業や人間関係の調整など、日常的なシーンでも頻繁に発生する状況です。この記事を、対立を超えて共通の目標を達成するための知恵として、ぜひ役立ててください。
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