この記事のサマリー
・「矛盾」は、物事の整合性が取れない状態を指す言葉です。
・言動の一貫性がないときに「矛盾」と表現します。
・「矛盾」は、中国の古典『韓非子(かんぴし)』に記された逸話に由来します。
日常の会話やメールで、「その説明は矛盾している」と感じた経験がある人は多いかもしれません。「矛盾」は私たちにとって身近なものですが、複数の意味を持ち、有名な故事や論理学にも関係する、なかなか奥深い側面を持っています。
この記事では、辞書の情報に基づき「矛盾」の意味と由来、関連語、そして英語表現までを整理しました。日々の実務や会話で自信を持って使いこなせる知識を、一緒にチェックしていきましょう。
「矛盾」の意味と使い方
まずはじめに、辞書の定義や語源をもとに、「矛盾」の正しい意味と使い方を整理していきましょう。
「矛盾」の読み方と意味
「矛盾」は、「むじゅん」と読みます。2つの物事が互いにくい違い、両立できない状態を指します。辞書では次のように説明されています。
む‐じゅん【矛盾/矛×楯】
[名](スル)
1 ほことたて。
2 《「韓非子」難一の故事から》二つの物事がくいちがっていて、つじつまが合わないこと。自家撞着(じかどうちゃく)。「発言の―を突かれる」「二人の話が―する」
3 論理学用語。
引用(一部抜粋):『デジタル大辞泉』(小学館)
このように、「矛盾」は、「物事の筋道が通らず、つじつまが合わないこと」を意味します。
「矛盾」は、日常的な表現としても、論理学的な概念としても使いますが、いずれの場合も「一貫性がない」「両立しえない状態」を示す点において共通しています。
「矛盾」の語源|中国の故事に由来
「矛盾」という言葉は、中国の古典『韓非子(かんぴし)』に記された逸話に由来します。
ある商人が、「どんな盾でも突き通す矛(ほこ)」と、「どんな矛でも通さない盾(たて)」の両方を売り込もうとしたところ、「それなら、その矛でその盾を突いたらどうなるのか」と問われ、返答に詰まってしまったという話です。
この逸話は、2つの主張が同時に成立しない様子を表すものとして語り継がれており、「矛盾」という言葉が生まれるきっかけになりました。
今日使われる「矛盾」も、この故事を元に、「つじつまが合わないこと」や「2つのことが食い違っている状態」を意味する言葉として定着しています。
「矛盾」の使い方と例文
「矛盾」は、主に「言動や主張のつじつまが合わないこと」「論理的に整合性がないこと」を指して使います。
使用例:
「今回の説明には矛盾があるように感じます」
「その発言は、前回決定した方針と矛盾していませんか?」
「論理的な一貫性を重視するなら、矛盾のない構成にしましょう」

「矛盾」を使うときの注意点と丁寧な言い換え表現
「矛盾しています」とはっきり指摘する言い方は、やや強く、相手によってはきつく感じられることがあります。ここでは、本質を共有しつつ、相手との関係性を維持しながら思いを伝える、スマートな表現のヒントを紹介しますよ。
ストレートに言わずに伝えるには?
例えば、次のような表現に言い換えると、角がを立たずに意思を伝えることができます。
「念のため確認させていただきたいのですが、こちらの内容と一部異なる点があるようです」
「整合性の観点から、すり合わせが必要かもしれません」
このように、「矛盾」という言葉を避けて、「すり合わせ」「整合性」といった言葉を用いると、柔らかく伝えることができます。
相手の立場や状況に配慮しながら、伝えたい内容を整理して言葉にすることがポイントです。
柔らかい言い換え表現の例
他にも、「矛盾しています」という表現の代わりに使える例文を紹介します。どれも、「矛盾」と直接的に言わずに、確認やすり合わせの意図を伝える表現です。
例文:
「解釈にくい違いがあるかもしれません」
「前回との整合性を図れたらと存じます」
「確認のために、情報を一度整理させていただいてもよろしいでしょうか?」

「矛盾」の英語表現
「矛盾している」という言葉を英語では “contradiction” や “inconsistent” などで表します。さらに、日常会話では “Catch-22” といった慣用表現が登場することもあります。
ここでは、それぞれの語の使い方を確認しましょう。
“contradiction”
“contradiction” は、主張や行為が互いに食い違っている場合や、事実と反する内容が存在する場合に用いる名詞です。
例文:“There is a clear contradiction between what he said yesterday and his current statement.”
(彼の昨日の発言と今の発言には、明らかな矛盾があります。)
“inconsistent”
“inconsistent” は、言動・態度・方針などが場面によって変化し、整合性がないことを表します。「〜と一致しない(“inconsistent with ~”)」という形で使うことも多い語です。
例文:“Her explanation is inconsistent with the facts we confirmed.”
(彼女の説明は、私たちが確認した事実と一致していません。)
参考:『プログレッシブ和英中辞典』、『ランダムハウス英和大辞典』(ともに小学館)

「矛盾」に関するFAQ
ここでは、「矛盾」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「矛盾している」の穏やかな言い換え表現はありますか?
A. 「食い違いがある」「一致していない」などが比較的穏やかな表現だといえるでしょう。ビジネスでは「整合性がとれていない」もよく使います。
Q2. 「矛盾」という言葉は失礼になることがありますか?
A. 相手の意見や行動に対して「矛盾している」とストレートに指摘すると、批判的に受け取られる可能性があります。
言い回しや語調には注意しましょう。
Q5. 「矛盾」の使い方で気をつけるべき点はありますか?
A. 「矛盾」という語は論理的な誤りを示すため、安易に使うと相手の立場を否定してしまうことがあります。
伝え方や立場に配慮しながら、できるだけ具体的な内容とともに伝えるのが適切です。
最後に
「矛盾」という言葉は、日常の会話からビジネスの議論まで、幅広い場面で使います。的確に使えば論理的な指摘として機能しますが、伝え方を誤ると相手に不快感を与えてしまうこともあります。だからこそ、その意味を正しく理解し、柔らかい表現に言い換える工夫も大切です。
この記事を通じて、「矛盾」の意味や使い方への理解が深まり、より伝わる言葉選びのヒントになれば幸いです。
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