普段の生活の中で、物事がうまく進まず、もどかしく感じことがあるという人は少なくないのではないでしょうか?
例えば、職場で相手とのコミュニケーションがうまくいかずに仕事がスムーズに進まなかったり、男友達との距離感が何とも言えないものであったり…。他にも、本を読んでいて、一体何を伝えたいのか、そわそわするという心情になった人もいるかもしれません。
このように、もどかしくてじれったい様子を「隔靴掻痒」と言います。この記事では、「隔靴掻痒」の読み方や意味、例文での使い方、類似表現、英語での表現などについて解説します。
「隔靴掻痒」の意味について
「隔靴掻痒」の読み方は、「かっかそうよう」。意味は「思うようにならず、もどかしいこと。本質的なところには触れないで、はがゆいこと」というものです。「履いた靴の上からかゆいところをかく」という行為に由来し、靴の上からかいてもかゆみは解消されないことから、本質に触れずにもどかしいというニュアンスを帯びるようになりました。
「隔靴掻痒」は、南宋時代の禅の書物である『無門関(むもんかん)』にその記述が見られます。「棒を棹(ふる)って月を打ち、靴を隔てて痒を掻く」という一文です。
ちなみに、「麻姑掻痒」という表現もあります。読み方は「まこそうよう」。意味は「思いどおりに物事が進むこと」です。「麻姑」とは、中国の伝説上の仙女のこと。麻姑は爪が長く、その爪でかゆいところまで手が届くことから、物事がうまく進むという意味になったと言われています。「隔靴掻痒」とは、対義語の関係です。
「隔靴掻痒」を使った例文
次に「隔靴掻痒」を使った例文を見ながら、実際の使い方を確認していきます。
1:「友達とのオンライン飲み会も楽しいけれども、直接会えずなんだか隔靴掻痒で寂しい気持ちもある」
コロナ禍で流行したオンライン飲み会。感染対策のため、直接人と会うことが難しい時期がありました。直に集まって話すのとは異なり、不慣れなウェブ会議などで、機器の操作に苦労したり、誰に話しているのかわからなかったり、もどかしさを感じたという人は少なくないのではないでしょうか?
このような状況は、まさに「隔靴掻痒」と言えます。うまく意思疎通ができない場合に、この表現が使われることも。
2:「新しい職場に慣れなくて、自分が言いたいことが伝わらず、仕事がなかなか進まないのがちょっと隔靴掻痒な感じ」
物事がうまく進まなくて、はがゆい様子を表す場合でも、「隔靴掻痒」は使えます。仕事がなかなか進捗しないことを、じれったく思う様子がわかりますね。
3:「あの人からのメール文は、趣旨が明確ではなく、何が言いたいのかわからないので、隔靴掻痒の感がある」
「隔靴掻痒の感」という使い方もします。この例文では、ある文章がわかりにくく、本質的なところをつかめないというもどかしさを表現していますね。文章や作品などについて、なかなか本質をつかめない様子を「隔靴掻痒」と表すこともあります。
「隔靴掻痒」の類似表現
次に、「隔靴掻痒」に似た意味を持つ熟語について見ていきます。
1:「御簾を隔てて高座を覗く」
「御簾を隔てて高座を覗く」の読みは、「みすをへだててこうざをのぞく」。意味は「意のままにならず、もどかしいこと」。「御簾」は竹製のすだれのことで、天皇など身分の高い人に謁見する際、直接顔が見えないようにかけられていました。相手の顔を見ようとしても、なかなか見えず、もどかしいニュアンスが伝わります。
例文:
「部長に自分の提案を聞いてほしいけど、内容が不十分なのかなかなか取り合ってもらえません。御簾を隔てて高座を覗く心境です」
2:「さおだけで星を打つ」
意味は「思うとおりにならず、はがゆいこと」。竹竿で星を払い落とすのは不可能であることから、不可能なことをする愚かさや、もどかしさをたとえています。
例文:
「学生時代にもっと勉強しておけばよかった。さおだけで星を打つ気持ちになる」
3:「二階から目薬をさす」
意味は「遠回りで、効果がおぼつかないこと」。二階から目薬をさそうとしても距離がありすぎて、的確に薬をさすのは簡単なことではありません。ターゲットが小さすぎます。したがって、それからうまくできずに、回りくどくてもどかしいというニュアンスがあります。
例文:
「ダーツバーで目隠しをしながら的を狙うも、うまく矢が当たらない。まさに、二階から目薬をさすようなもの」
「隔靴掻痒」の英語表現
「隔靴掻痒」を英語で表現する場合、「もどかしい」というニュアンスをいかに表現するかが重要になります。英語では「irritating(はがゆい)」「impatient(もどかしい、いらいらする)」という単語で、「隔靴掻痒」のニュアンスを伝えることが可能です。
例文:
・「Her attitude to me was very irritating(彼女の私に対する態度には、非常に隔靴掻痒だった)」
・「I was impatient at the shortage of food(食糧不足にいらだっていた)」
・「She was impatient with the traffic jam(彼女は大渋滞に隔靴掻痒だった)」
最後に
「隔靴掻痒」は、「思うようにならず、もどかしいこと。本質的なところには触れないで、はがゆいこと」という意味であり、うまくいかない様子を表します。この記事を一つの参考にしていただき、「隔靴掻痒」をうまく使いこなしていただけたら、うれしいです。
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