皆さんは「酔生夢死」という言葉をご存知ですか? 国語の教科書などで目にしたことがあるかもしれませんが、実際に使ったことがないので、意味を知らないという方も多いでしょう。そこで本記事では、「酔生夢死」の意味や使い方、類語、対義語を解説します。
「酔生夢死」の意味と読み方
「酔生夢死」の読み方は、「すいせいむし」。意味を辞書で確認していきましょう。
《「程子語録」から》酒に酔ったような、また夢を見ているような心地で、なすところもなくぼんやりと一生を終わること。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「酔生夢死」とは、虚しく生涯を終えること。まるでお酒に酔い夢見心地のまま、何1つ有意義なことをせず、一生を終えることを表す四字熟語です。1日1日をぼんやりと過ごし、何もすることがないまま一生を終えることを指す場合に使用します。
使い方を例文でチェック!
「酔生夢死」は、何もしないまま一生を終えることを意味する言葉。そのため、会話の中でも、「酔生夢死となってしまった」「酔生夢死ではいけない」というようなニュアンスで用いられることが特徴です。主な使い方を例文で見ていきましょう。
1:私の父の人生は、例えるなら酔生夢死のようなものだった。
「酔生夢死」は、誰かの人生や毎日の過ごし方などに対して使われることが一般的です。「酔生夢死」は、お酒に酔ったようにふらふらしていること、やるべき仕事もないことなどを意味するため、基本的にはあまりいい意味では使いません。
2:リストラに遭い、しばらく酔生夢死のような状態になっていたが、一念発起して起業することを決めた。
今までやっていた仕事を辞めて、何もせず日々を過ごしていた経験がある方もいるでしょう。休んでいる間に今後の人生のことを考えて、このままではいけないと行動に移し、起業したり、別の業種に転職することも。自ら「酔生夢死」の状態から抜け出したことは、人生のターニングポイントになりそうですね。
3:叔父は、「酔生夢死の人生は悲しいものだ」と語った。
人との出会いや、目標に向かって努力したこと、感動したことは人生を彩る貴重な体験です。時には人とぶつかって落ち込んだり、仕事で失敗して凹んでも、後から振り返ると「壁を乗り越えられたおかげで今がある」と思えることも少なくありません。様々な経験をすることで人生が豊かになったと考える人から見ると、「酔生夢死」のような生き方は悲しく思えてしまうのかもしれませんね。
類語や言い換え表現は?
「酔生夢死」の類語には、「無為徒食」「遊生夢死」「飽食終日」が挙げられます。それぞれどのような暮らしや生き方を表しているのか、一緒に見ていきましょう。
1:無為徒食
「無為徒食」とは、「むいとしょく」と読みます。意味は以下の通りです。
[名](スル)なすべきことを何もしないでただ遊び暮らすこと。「貯金を頼りに―して日々を過ごす」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「無為」は、「何もしないでぶらぶらしていること」。「徒食」は、「働かないで遊び暮らすこと」。つまり、何も仕事をせず、遊び暮らすことを「無為徒食」と言います。「無為徒食する」「無意と食して過ごす」というように使うのが一般的です。時間を有意義に使わず、のんびりと過ごしているところが、「酔生夢死」と共通していますね。
(例文)
・「若い者が無為徒食するな」と祖父に叱られた。
・仕事を辞めてから、貯金を頼りに無為徒食して過ごしている。
2:遊生夢死
「遊生夢死」は、「ゆうせいむし」と読みます。読んで字のごとく、「遊んで生き、夢のように一生を過ごすこと」を表す言葉です。「酔生夢死」とは、1文字しか違っておらず、ほぼ同じような意味と捉えて問題ないでしょう。仕事に追われ、やるべきことこなす人生とは真反対の生き方と言えそうです。
(例文)
・お金持ちの息子である彼は生涯、遊生夢死のような人生を送った。
・私からすると、彼女は遊生夢死を体現しているように見える。
3:飽食終日
「飽食終日」は、「ほうしょくしゅうじつ」と読みます。字面から意味を想像できるかもしれませんが、「一日中、おなかいっぱい食べて、何もせずに日々を過ごすこと」を表します。「飽食」とは、「飽きるほどたくさん食べること」。「終日」は、「朝から晩まで」。食べる以外のことをせず、無駄に日々を過ごすことという意味があります。
(例文)
・彼女は、休職している間、飽食終日といった状態だった。
・何も仕事をせず、飽食終日している彼がうらやましい。
対義語は?
人生をぼんやりと過ごす「酔生夢死」の対義語としては、「物事に一生懸命取り組むこと」「さまざまな人生経験をしていること」を意味する言葉が当てはまります。ここでは、「精励恪勤」「波瀾万丈」をチェックしてみましょう。
1:精励恪勤
「精励恪勤」は、「せいれいかっきん」と読みます。難しい言葉が組み合わされた言葉ですが、どのような意味なのでしょうか?
仕事などにまじめに励むこと。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
任務や職務などに一生懸命励むことを、「精励恪勤」と言います。「精励」は、「勉学や仕事に励むこと」。「恪勤」は、「真面目に務めること」。自分のやるべきことに精を出し、真面目に取り組む姿は好感が持てますね。何もせず、ぼんやりと過ごす「酔生夢死」とは正反対と言えそうです。
(例文)
・私の兄はまさに精励恪勤を絵に描いたような人だ。
・新しく入社してきた山田さんは、精励恪勤な人で素晴らしい。
2:波乱万丈
「波乱万丈(はらんばんじょう)」の意味は、以下の通りです。
劇的な変化に富んでいること。「―の人生」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
浮き沈みの激しい人生のことを、「波瀾万丈の人生」と表現されることがありますね。仕事で成功を収めたかと思えば、その後思いもよらぬ転落人生を歩んだ、というような大変な経験をしてきた場合に使われることが多いでしょう。毎日変わり映えのしない日々を送り、ぼんやりと過ごしている「酔生夢死」とは、正反対の生き方ですね。
(例文)
・銀幕スターの彼女は、恋多き波瀾万丈の人生を送った。
・財閥の社長は、その波瀾万丈の人生をインタビューで語った。
最後に
「酔生夢死」とは、「まるで酒に酔ったように、ぼんやりと何もしないまま一生を終えること」。基本的には、「酔生夢死のままではいけない」というように、否定的なニュアンスで用いられることが多い言葉です。どんな人生を送るかは個人の自由ですが、自分自身が納得できる生き方を選びたいものですね。
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