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2024.04.17

「阿鼻叫喚」とはどんな意味? 仏教にまつわる由来や使い方、類語を解説

「阿鼻叫喚」とは、「悲惨な状況に陥り、泣き叫ぶこと」。本来は仏語で、地獄にまつわる由来があります。本記事では、「阿鼻叫喚」の意味や使い方、類語を解説します。

近年、世界中で紛争が起きたり、自然災害などがたびたび起きていますね。悲惨な状況をニュースなどで目にして、まるで地獄のようと感じたことがある方もいらっしゃるかもしれません。そんな状況を表すときの四字熟語が「阿鼻叫喚」です。本記事では、「阿鼻叫喚」の意味や由来、使い方、類語を解説します。

「阿鼻叫喚」の意味

「阿鼻叫喚」は、「あびきょうかん」と読みます。意味を辞書で確認していきましょう。

1 仏語。阿鼻地獄と叫喚地獄とを合わせた語。地獄のさまざまの責め苦にあって泣き叫ぶようすにいう。
2 悲惨な状況に陥り、混乱して泣き叫ぶこと。「一瞬の事故で車中は―の巷(ちまた)と化す」

『デジタル大辞泉』(小学館)より引用

「阿鼻叫喚」はもともと仏語で、地獄において酷い苦しみを受けることを意味しています。日常的に使われるのは2番目の意味で、事故や災害などで悲惨な状況に陥り、泣き叫ぶ場合に用いられますね。

(c) Adobe Stock

「阿鼻叫喚」の由来

「阿鼻叫喚」の由来は、「阿鼻地獄」と「叫喚地獄」にあると言われています。仏教の世界では、熱気で責め苦しめられる8種類の地獄があるとされ、その中にあるのが「阿鼻地獄」と「叫喚地獄」。

「阿鼻地獄」は、その最後の第八の地獄とされ、親族を殺すなどの大きな罪を犯した者が落ちるところと言われています。

そして「叫喚地獄」は、第四の地獄で、殺生や盗み、邪淫、飲酒をした者が落ち、熱湯や激しい炎で苦しめられ、泣き叫ぶ場所だそう。この2つの言葉が組み合わされて「阿鼻叫喚」という四字熟語ができたとされています。

使い方を例文でチェック!

「阿鼻叫喚」は、大きな事件や事故が起きた時に使用されます。ニュースや新聞などの報道で「阿鼻叫喚の光景が広がっています」などと表現されることもあるでしょう。主な使い方を3つ紹介します。

1:大規模火災が起きて、ビルの周りは阿鼻叫喚の光景だった。

「阿鼻叫喚」は、酷い事故や事件が起きた際に使われます。「阿鼻叫喚の光景」や「阿鼻叫喚の現場」などと表現されることが多いですね。「阿鼻叫喚」を使うことで、凄まじい炎や煙、逃げ惑う人々など非常に混乱した状況であることを伝えられるでしょう。

2:被災地に支援物資が届かず、阿鼻叫喚の状況であった。

食料や生活用品が底をつき、困窮を極めているということでしょう。交通網が遮断されたり、敵に攻撃されて思うように物資を届けられないなどの理由が考えられます。多くの人々が苦しんでいる被弾な状況であることがわかりますね。

(c) Adobe Stock

3:人気アーティストの結婚発表を聞いて、ファンは阿鼻叫喚した。

推しの結婚発表は、ファンにとっては衝撃的な出来事ですよね。幸せを願いたい一方で、寂しかったり、ヤキモチを妬いてしまったり複雑な心境になるはず。結婚発表のニュースを聞いて、ファンが一同になって泣き叫んでいる光景がイメージできますね。

類語や言い換え表現は?

「阿鼻叫喚」の似た表現として、「地獄絵図」「鬼哭啾々」「慟哭」などが挙げられます。ひとつずつ意味をチェックしていきましょう。

1:地獄絵図

「地獄絵図(じごくえず)」の意味は、以下のとおりです。

1 地獄で亡者が苦しむありさまを描いた絵。地獄絵。地獄変相。
2 きわめてむごたらしい状況になること。「戦争で街は―と化した」

『デジタル大辞泉』(小学館)より引用

美術館などで地獄を描いた絵を見たことはありませんか? 昔は、仏教の教訓や悪いことをしたら地獄に落ちるという戒めを表すために、地獄の絵が描かれることがありました。有名なものだと、『地獄草紙』『六道絵』などがありますね。現在では、そこから転じて、地獄のように酷い状況だとたとえる時に用いられます。

(例文)
・戦争で辺り一帯地獄絵図と化した。
・ここはかつての古戦場で、焼け野原だったそうだ。まるで地獄絵図だね。

2:鬼哭啾々

「鬼哭啾々」は、「きこくしゅうしゅう」と読みます。一体どのような意味でしょうか?

[ト・タル][文][形動タリ]亡霊の泣き声がしくしくと聞こえるようなさま。恐ろしい気配が迫ってすさまじいさま。「―たる激戦地の跡に立つ」

『デジタル大辞泉』(小学館)より引用

まるで亡霊の鳴き声が聞こえるように、恐ろしい気配のある様子を「鬼哭啾々」と言います。荒れ果てた古戦場には、廃墟となった建物など生々しい痕跡が残っている場所もありますよね。「阿鼻叫喚」のように大声で泣き叫ぶわけではありませんが、この世ならざる恐ろしい状況が類似しています。

(例文)
・祖父がかつて戦った、鬼哭啾々たる激戦地を訪れた。
・災害で荒れ果てた土地は、まさに鬼哭啾々な雰囲気だった。

(c) Adobe Stock

3:慟哭

「慟哭(どうこく)」の意味は以下のとおりです。

[名](スル)悲しみのあまり、声をあげて泣くこと。「訃報に接して―する」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用

「慟哭」はあまり聞きなれない表現ですが、悲しみに耐えきれず大声で泣くことを意味します。たとえば、親しい人が亡くなったりした際に「病室で慟哭した」などと表現します。ちょっとしたことで怒られたり、失敗した時に使うのはやや大袈裟に感じられてしまうこともあるため、使うシーンを選ぶ必要がありますね。

(例文)
・父の訃報を聞いて息子は慟哭した。
・長年お世話になった恩師が亡くなり、慟哭した。

最後に

「阿鼻叫喚」は、本来は仏語ですが、やがて地獄のように悲惨な状況を例える時にも使われるようになりました。もしニュースなどで「阿鼻叫喚の光景」などという言葉を聞いた際には、この言葉の由来を思い出すと意味が正しく理解できるでしょう。類語である、「地獄絵図」や「鬼哭啾々」も豆知識として覚えてみてくださいね。

TOP画像/(c) Adobe Stock

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