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2025.01.21

諸行無常とは永久不変なものはないという仏教の考え方|意味や使い方を紹介

諸行無常とは永久不変なものはないという仏教の考え方で、経典のひとつ、涅槃経に記されています。平家物語の冒頭に使われたこともあり、仏教を超えて広く知られるようになりました。諸行無常の意味や使い方について、例文を通して紹介します。

諸行無常とは? 意味をわかりやすく

諸行無常(しょぎょうむじょう)とは、世の中のすべてのものは常に変化し生滅して、永久不変のものは何もないという考え方です。諸法無我(しょほうむが)、涅槃寂静(ねはんじゃくじょう)と並んで、小乗仏教の三法印(さんぼういん)と呼ばれる3つの根本的な理念の一つです。

しょぎょう-むじょう
仏教の根本主張である三法印の一。世の中の一切のものは常に変化し生滅して、永久不変なものはないということ。

出典:小学館 デジタル大辞泉

諸行無常は涅槃経に記載された言葉

諸行無常は、仏教の経典の一つ『涅槃経(ねはんぎょう)』に記されている言葉です。涅槃経とは正式には大般涅槃経(だいはつねはんぎょう)といい、小乗経典の涅槃経では釈迦の入滅前後のことが記されています。

一方、大乗経典の涅槃経では、釈迦が入滅前に説いた教説が記されています。経典の中で釈迦は、すべての人には仏性が備わり、仏性を持つならば成仏できると説きました。

なお涅槃とは、釈迦が悟りに到達し、煩悩や迷い、悩みを離れた安らぎの境地を指す言葉です。釈迦の入滅は弟子たちを大いに悲しませましたが、完全な涅槃の完成として受け入れられたとされています。

親鸞聖人が伝える諸行無常

『涅槃経』はインドから中国、そして日本にも伝来しました。親鸞聖人も涅槃経の教えを知り、繰り返し諸行無常について伝えた人の一人といわれています。

親鸞聖人は幼い頃に両親を亡くし、天涯孤独の身となりました。「親の次は自分が死ぬ番だ。自分が死んだらどうなるのだろう」と考えた親鸞聖人は、9歳で出家をして仏門に入ります。

親鸞聖人が著した『教行信証』では、「一切有為はみなこれ無常なり」という言葉があります。この世のすべては無常であり、永遠に続くものではない…つまり、諸行無常を言い換えた言葉だともいえるでしょう。

また、親鸞聖人の言葉を集めた『歎異抄』では、「火宅無常の世界は、万のこと皆もって空事・たわごと・真実あること無き」とも書かれています。火のついた家のように不安で無常の世界は、例外なく頼りになるものが何もないという意味で、こちらも同じく諸行無常を基礎とした考え方といえそうです。

平家物語の冒頭に読まれた諸行無常

諸行無常という言葉は、平家一門の栄華と衰退を描いた『平家物語』の冒頭の句、「祇園精舎(ぎおんしょうじゃ)の鐘の声、諸行無常の響きあり」としても知られています。

祇園精舎とは、釈迦のために施入され、教化活動の拠点の一つとなった寺院の名前です。祇園精舎には無常堂と呼ばれる堂があり、弟子が亡くなると無常堂の鐘が鳴らされたとか。鐘が鳴ると弟子の死を想起させ、諸行無常を感じさせる…という意味を、平家の滅亡と重ねて詠んだ句と解釈されています。

諸行無常は日常でも使える言葉! 例文でチェック

諸行無常は仏教に由来する言葉ですが、日常生活でも使われることがあります。たとえば、よく使われる場面は次の2つです。

・虚しさを感じたとき
・変化することを伝えたいとき

それぞれの場面での諸行無常の使い方を例文で紹介します。

失恋した女性
(c)AdobeStock

虚しさを感じたとき

諸行無常は、すべてのものは永続しないという意味の言葉です。平家物語の冒頭のように、永続しない命(=死)や衰退、滅亡といった虚しさを感じさせる場面で、諸行無常と表現することがあります。

・頑張って手に入れても、結局すべてのものは消えてなくなるのよね。まさに諸行無常だわ
・諸行無常の念に取りつかれたのか、何をしても虚しさしか感じない

変化することを伝えたいとき

諸行無常は生から死、栄華から衰退といった変化を表現するときにも使われる言葉です。

・彼女は気まぐれだから、今は好きでも明日には気持ちが変わっているかもしれない。諸行無常とはこのことだ
・諸行無常が真実なら、永遠は存在しない

諸行無常と類似する意味の四字熟語

諸行無常と類似する意味の言葉としては、次のものが挙げられます。

・有為転変
・盛者必衰
・生者必滅

それぞれの意味や諸行無常との違いなどを、例文を通して紹介します。

地球
(c) Adobe Stock

有為転変

有為転変(ういてんぺん)とは、この世の中の事物すべては因縁によって仮に存在しているもので、常に移り変わり、はかないものであるという意味の言葉です。「ういてんべん」と読むこともあります。

諸行無常と同じく仏教由来の言葉で、すべてのものは変化しているという意味では同じですが、事物が因縁によって仮に存在しているというニュアンスは諸行無常にはありません。なお、因縁とは仏教の考え方の一つで、すべてのものは物事が生じる直接の力「因」と、それを助ける間接の条件「縁」の働きによって起こることを指します。

・運命の人だと思ったのに、あっけなく別れてしまった。有為転変は世の習いというが、まさしくそうだった

盛者必衰

盛者必衰(じょうしゃひっすい)とは、無常なこの世では、栄花を極めている者も必ず衰えるときがあることを意味する言葉です。『平家物語』では、「祇園精舎の鐘の声、諸行無常の響きあり」の続きとして、「娑羅双樹の花の色、盛者必衰のことはりを表す」と詠まれています。

諸行無常と同じく無常を意味しますが、盛者必衰は栄えているもの・人を指している点が異なるといえます。

・売れっ子だったのに、いつの間にか「あの人は今」といわれるようになった。盛者必衰とはこのことかもしれない

生者必滅

生者必滅(しょうじゃひつめつ)とは、無常なこの世では、生命あるものは必ず死ぬときが来ることを意味する言葉です。諸行無常が幅広く「不変のものはない」と説くのに対し、生者必滅は死だけに注目しています。

・生者必滅。すべての人はいつかは死ぬものだ

諸行無常の意味を理解しよう

諸行無常とは仏教の根幹をなす考え方の一つで、すべての物事は変わることを意味します。虚しさを感じるともいえる言葉ですが、ある意味、真実とも。すべてのものは変わるからこそ、一瞬一瞬を大切に生きていく必要があるといえるのかもしれません。

メイン・アイキャッチ画像:(c)Adobe Stock

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