「送る」と「贈る」の違いとは
「送る」と「贈る」は、どちらも「おくる」と読む同音異義語です。ただし、意味や使われる場面には違いがあります。
「送る」は、人や物をある場所へ移動させたり、届けたりといった物理的・行為的なニュアンスを持つ言葉です。
一方で「贈る」には、相手への感謝や、気持ちを込めて物を差し出すという、より感情的な意味合いが含まれます。
考えや気持ちを正しく伝えるためには、その場に応じた使い分けが必要です。まずは、それぞれの意味について掘り下げていきましょう。
「送る」の意味
「送る」は、人や物をある場所から別の場所へ移動させたり、相手のもとへ届けたりする行為を指します。
「郵送」や「配送」「送迎」といった漢字表記を見てもわかるように、物理的な移動に適した言葉です。
「送る」の類語にも、同様の意味を持つ語句が多々含まれます。また、「日々を送る」のように、時間の経過を表現することもあります。
【送るの類語】
・届ける
・差し出す
・派遣する
・暮らす
「送る」の特徴は、あくまで動作や状態などを指す点です。役割を持つ人を差し向けることを「人材を送る」と表現することもありますが、そこに特別な感情は含まれていません。
このように、「送る」は日常の幅広いシーンで活用できます。ビジネスにおいても「荷物を送る」、「メールを送る」など、使用頻度の高い言葉といえるでしょう。
おく・る【送る】
出典:小学館 デジタル大辞泉
[動ラ五(四)]
1
㋐物や情報などを、先方に届くようにする。「荷物を―・る」「信号を―・る」「視線を―・る」
㋑人を、ある役割をもたせて差し向ける。派遣する。「刺客を―・る」「企業に人材を―・る」
㋒管轄を移す。「身柄を検察庁に―・る」
2
㋐行く人・去る人に付き従ってある所まで一緒に行く。「駅まで車で―・る」
㋑去って行く人に別れを告げる。見送る。「遠征する選手を駅で―・る」「卒業生を―・る」
㋒遺体に付き従って墓地まで行き葬る。また、死者を見送る。葬送する。「旧友を悲しみのうちに―・る」
3 時を過ごす。「失意の日々を―・る」
4 順々に先に移動させる。「手渡しでバケツを―・る」「バントで走者を次の塁に―・る」
5 送り仮名をつける。「活用語尾を―・る」

「贈る」の意味
「贈る」は、感謝や祝福、敬意などの気持ちを込めて物や言葉を差し出すことを意味します。単に物を渡すのではなく、渡す際の気持ちや目的を重視した言葉です。
たとえば、誕生祝いや結婚祝い、記念の品などを渡す場合は、「送る」ではなく「贈る」が適しているといえます。
「賞を贈る」「言葉を贈る」のように、形のないものにも使える点が特徴です。
類語にも、「何かしらの意味を持つ金品を与える」という意味を含む語句が多く見られます。
【贈るの類語】
・贈与
・寄付
・奉納
・献金
・募金
「贈る」は「送る」に比べ、相手との関係性や気持ちを重視した、ややフォーマルで特別な意味合いを持つ言葉といえるでしょう。
おく・る【贈る】
出典:小学館 デジタル大辞泉
[動ラ五(四)]《「送る」と同語源》
1 感謝や祝福などの気持ちを込めて、人に金品などを与える。贈り物をする。「記念品を―・る」「はなむけの言葉を―・る」
2 官位や称号などを与える。「位階を―・る」
「送る」と「贈る」使い分けのポイント
「送る」と「贈る」を適切に使い分けるためには、「目的」と「気持ちの有無」に着目することがポイントです。
単に物を移動させる行為には「送る」、そこに感謝や祝福といった感情を込める場合は「贈る」を使用します。
実際にどちらを使うべきなのか、それぞれを使う状況について整理していきましょう。

物を届けるときは「送る」
荷物や書類、データなどを相手に届ける場合は、「送る」を使用するのが一般的です。具体的には、商品の発送や、資料のメール送信などが該当します。
このような場面で「贈る」を使うと、「何か特別な意図があるのかな?」と、相手に思われてしまう可能性もゼロではないでしょう。
特に、正確で簡潔なコミュニケーションが求められるビジネスシーンでは、「送る」を適切に使い分けることが大切です。
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感謝を伝えるときは「贈る」
相手に感謝や祝福の気持ちを伝えたいときには「贈る」を使用しましょう。
お祝いのプレゼントや、お歳暮の品などを渡す場合は「送る」ではなく「贈る」とすることで、相手への敬意や配慮が自然に表現できます。
取引先に物を渡す場面では、その物自体に特別な意味合いがあるのかどうかに着目してみましょう。何かのお祝いや、感謝を伝えるために事前に用意した品に対しては「お贈りしました」「お贈りいたします」のように「贈る」を使用する傾向にあります。
人間関係への配慮が求められる場面で使われることが多く、特にフォーマルな場面や文章などでは、使い分けを意識したい言葉といえるでしょう。
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「送る」の使い方と例文
「送る」はビジネスからプライベートまで、幅広いシーンで活用できる言葉です。
物理的な移動だけでなく、「日々を送る」「穏やかな時間を送る」のように、生活や時間の経過も表現できます。
気を付けたいのは、亡くなった人との別れの場面でも使われる点です。例文にあるように、葬儀の場面では「見送る」を使用します。そこに悲しみという「気持ち」が含まれていたとしても、亡くなった人を「見贈る」と表現することはありません。
「贈る」を使うのは、あくまでも感謝や祝福の気持ちを伝える場面であることを押さえておきましょう。
・本日中に資料をメールでお送りいたします
・商品を指定の住所へ送る手配をしました
・海外支社へ必要な人材を送る予定です
・駅まで取引先の担当者を見送った
・担任として、今年も無事、すべての卒業生を見送ることができた
・葬儀当日、悲しみのうちに旧友を見送った
・忙しい日々を送りながらも、充実した毎日を過ごしている

「贈る」の使い方と例文
「贈る」を使うと、感謝や祝福などの気持ちを表現できます。おもに、特別な場面やフォーマルなシーンに適した言葉です。
相手への思いやりや敬意を伝えたい場合も「贈る」が向いています。以下のように、「言葉」や「賞」のような形のないものにも使用可能です。
・お酒好きな祖父へ、誕生日のお祝いに名前入りのグラスを贈った
・日頃の感謝を込めて、両親に記念品を贈った
・結婚祝いに贈られた花を、ドライフラワーにした
・退職する上司に、メンバー全員で感謝の品を贈る予定だ
・創立記念として社員に記念品を贈る予定です
・長年の功績を称え、特別賞を贈ることが決定した
・卒業式の日、恩師から贈られた言葉を今でも忘れず大切にしている
「送る」と「贈る」を正しく使い分けよう
「送る」と「贈る」は似ているようで、意味やニュアンスが大きく異なる言葉です。
「送る」は物や人を移動させる行為を指し、「贈る」は気持ちを込めて何かを差し出すことを意味します。
ビジネスやフォーマルな場面では、言葉の選び方が印象を左右することもあります。相手に失礼のない、円滑なコミュニケーションをとるためには適切な使い分けが必要です。
「送る」と「贈る」の違いを理解し、日頃から正しい使い分けを意識しましょう。
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