「気は心」とは?
「気」は「気持ち」の「気」、「心」はその人の人格や感情などを表す言葉です。両者の漢字が持つニュアンスは、何となく似ていると思いませんか? 本記事では、そんな「気は心」という表現について見ていきましょう。
「気は心ですから、受け取っていただけませんか」などと聞いたことがある人も少なくないのではないでしょうか? 「受け取っていただけませんか」だけでも意味は通じますよね。そこに「気は心」と付け足すことで、どのようなニュアンスが加わるのか説明します。
「気は心」の意味
「気は心」とは「真心を込めているということ」を指す表現です。とくに、贈り物をする場面で、量や金額の大小に限らず誠意を示したい場合に使われます。
つまり、先に挙げた「気は心ですから、受け取っていただけませんか」という言い回しは、「私の誠意ですから、この気持ちを受け取ると思って」というニュアンスが含まれているのです。
「気は心」は文芸作品に登場する言葉
「気は心」という表現は、文芸作品でしばしば用いられてきました。例えば、1750年から1776年に編纂とされる『武玉川』の「出代りや三粒降ても気は心」という俳諧。
「気は心」のみだと解釈しにくい表現ですが、「気が心でない」や「気が気でない」と同義に用いられる用例もありますよ。「気は心」という表現には、「そのまま何もしなければ気になってしかたがない」という心理が含まれています。
参考:『故事俗信ことわざ大辞典』(小学館)
「気は心」の使い方を例文で紹介
では、「気は心」は実際にどのように使われるのでしょうか。例文で具体的に見ていきましょう。
1:「気は心と言いますし、〇〇さんにはいつもお世話になっておりますのでほんの少しではありますが、お値下げいたしますね」
「気は心」は昔から使われてきた慣用句です。慣用句やことわざなど、古くから使い古されてきた表現には「~と言いますし」とセットで使われる傾向にあります。
近年、フリマアプリなどが普及し、個人間でものの売り買いをする機会もあるのではないでしょうか。そんなときにも使える表現です。
2:「あの人の態度には、ほとほと呆れてしまった。気は心と言うが、まさにあの対応にはそれが感じられなかった」
誠意や尊敬が感じられない場合にも「気は心」を使うことがあります。言動には、その人の本心があらわれることもしばしば。周りに誠意が伝わる言動を心がけましょう。
3:「恋人へのプレゼントに悩んでいるなら、手紙にしたらどうかな? 高価なものよりも、気持ちがこもっているプレゼントは喜ばれると思うよ。気は心だよ」
プレゼントは日頃の感謝やお祝いの気持ちを伝えるもの。たとえ高価なものでなくても、相手を思って選んだその気持ちが大切なのではないでしょうか。「気は心」という言葉は、そんな人の温かさを伝える表現でもあります。
「気は心」の類語表現とは?
「気は心」と似たニュアンスを持つ言葉についても紹介します。
1:志は木の葉に包め
「志は木の葉で包め」とは、「贈り物が木の葉で包めるほどのわずかであったとしても、真心がこもっているのならそれは立派な贈り物である」という意味のことわざです。「こころざしはこ(き)のはにつつめ」と読みます。
2:塵を結んでも志
「少しの贈り物でも誠意のあらわれである」ということを「塵を結んでも志」と言います。「塵を結んでも印」とも言いますよ。「ちりをむすんでもこころざし」または「ちりをむすんでもしるし」と読みます。塵のようにささやかなものであっても、大切なのは贈り主の気持ちだ、というニュアンスです。
3:志は松の葉
意味は、「志は木の葉に包め」や「塵を結んでも志」と同じです。松の葉を椎の葉に置き換えることもあります。松の葉も椎の葉もささいなものですが、そこに贈り主の真心がこもっていれば立派な贈り物であるということのたとえです。
4:志は髪の筋
「志は髪の筋」はややニュアンスが異なります。「わずかな贈り物でも、そこに込められた誠意や真心は汲み取らなければならない」「ありがたく感じられる」という意味の言葉です。
「気は心」の対義語とは?
「気は心」と似た表現を紹介しましたが、反対の意味を持つ言葉にはどのようなものがあるのでしょうか。
1:ないがしろ
「無視する事」「軽んじるさま」のことを「ないがしろ」と言います。漢字では「蔑ろ」です。「彼女をないがしろにする」というように使います。
2:スルー
英語では「through」と言い、テニス用語として用いられたり「通り抜け」「素通り」「そのまま通過すること」「受け流すこと」という意味で使われたりする言葉です。そこから派生して、日本語としての「スルー」には「無視する」というニュアンスが含まれます。
言動を無視するだけでなく、相手の誠意や尊敬などの気持ちを軽んじる場合にも使われる言葉です。
3:おざなり
「おざなり」とは「うわべだけで誠意がないさま」のこと。その場しのぎの誠意に欠けた言動のことをさします。
4:なおざり
「おざなり」と似た表現に「なおざり」があります。「いい加減にするさま」「本気ではなく、おろそかにするさま」「ほどほどであっさりしていること」というニュアンスです。おろそかにするという点で、「気は心」の中核をなす誠意の気持ちと対極をなす表現と言えるのではないでしょうか。
最後に
本記事では、「気は心」の意味や使い方を紹介しました。ばっちり押さえられたでしょうか。他にも、類似する表現や反対の意味を持つ表現についても解説しています。ぜひ日常会話に取り入れてみてくださいね。
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