「手練手管」の意味や由来とは?
「手練手管」という言葉、聞いたことはありますか? あまり馴染みがない方も多いかもしれませんが、もともとは遊女と客の駆け引きで使われていた言葉なのだとか。
恋愛にまつわる会話で使われることが多い言葉ですが、実はビジネスシーンで使うことも。そこで、今回は「手練手管」の意味や由来、使い方について紹介します。
意味
「手練手管(てれんてくだ)」とは、「人をだまして操る技法や方法」のこと。「手練」と「手管」を組み合わせた四字熟語です。
「手練」は、単独で「手練(しゅれん)」ともよみ、熟練した手際や、慣れた手つきのことを表します。そして、「手管」は、人を操る駆け引きのことです。つまり、「手練手管」とは同じような意味を持つ言葉を組み合わせ、意味を強調した言葉だといえるでしょう。
由来
「手練手管」の由来は、江戸時代まで遡ります。当時の遊郭では、花魁などの遊女たちがお客をつなぎ止めるために、様々な駆け引きが行われていました。それらの手段のことが総じて「手練手管」と呼ばれていたのです。
現代では、男女の恋愛テクニックなどで「手練手管」が用いられる以外にも、人を自分の思い通りに操り、だます行為全般に用いられています。
使い方を例文でチェック!
人をだます・操るという意味を持つ「手練手管」は、基本的にはあまり良い意味では使用されません。ここでは、現代において「手練手管」が使われる、よくあるパターンを2つ紹介しましょう。
男女の駆け引きで使われる
・彼女は手練手管を使ってお店のトップにまで上り詰めた。
・彼女の手練手管に惑わされ、ついついブランドバッグを購入してしまった。
「手練手管」は、男女の駆け引きに対して使われます。異性にこびたり、甘い言葉で夢中にさせることで、相手を夢中にさせたり、高級品を買ってもらったり。
ビジネスや政治の駆け引きで使われる
・彼は手練手管の限りをつくして出世した。
・A社の手練手管に騙されて契約書にサインしてしまった。
・彼はあらゆる手練手管を使ってライバルを罠に嵌めようとした。
「手練手管」は、人を思い通りに動かし、だますことを目的とした手段です。そのため、利益や成果が重視されるビジネスの場面や、政治の世界などで使われます。巧みな話術や戦略で、故意に競争相手を欺く行為について使われます。
類語や言い換え表現とは?
「手練手管」のように、人を操りだますことを意味する言葉はいくつもあります。それぞれ言葉の意味や違いに着目して見ていきましょう。
権謀術数
「権謀術数(けんぼうじゅっすう)」とは、「人を欺くためのはかりごと」。相手をだますために様々な作戦を立てることを言います。あまり見慣れない言葉ですが、「権謀」とは「臨機応変なはかりごと」のこと。「術数」は「はかりごとやたくらみ」を指します。「権謀術数にたける」「権謀術数に富む人」などと表現されます。
反間苦肉
「反間苦肉(はんかんくにく)」とは、「敵の仲を裂くために、苦労して策を考えること」。例えば自分が敵のスパイに入ることで相手を欺き、敵同士を仲間割れさせるような計略のことを言います。「反間」は、「敵の内部に入り込み、混乱させること」。「苦肉」は、「敵を欺くために自分を苦しめること」。苦し紛れに考えた手立てのことを「苦肉の策」と言いますね。
虚虚実実
「虚虚実実(きょきょじつじつ)」とは、「相手の隙を狙い、互いにはかりごとをして戦うこと」です。「虚」は、「備えに隙があること」。「実」は、「備えが堅いこと」を意味します。一方的に自分が騙すのではなく、互いに相手を陥れようとしていることがポイントです。このような様子を「虚虚実実の駆け引き」と表現します。
悪巧み
悪い計画や計略のことを「悪巧み(わるだくみ)」と言います。どうしたら相手を罠にはめることができるだろうかと考えていたり、人をあざむく計画に思いを巡らせていることに使われます。ビジネスでの悪質な計略から子供の悪戯など広範囲に使える表現です。ちなみに、悪巧みがバレることを「悪巧みが露見する」と言います。
遊女たちが使っていた「手練手管」とは?
もともと「手練手管」は、江戸時代に遊女が客に使ったテクニックのこと。遊女たちはあらゆる手段を使って、多くの客の心をつなぎ止めていました。そんな遊女たちの「手練手管」には、現代の恋愛テクニックに通じるものも? 実際のところを見ていきましょう。
つねる
「つねる」という行為も遊女の恋愛テクニックの一つ。久しぶりにきたお客に「どうしてきてくれなかったの」といって拗ねることで、お客を夢中にさせるのです。頰や着物の裾をつねることで、可愛らしくお客の気が引けると心得ていたのかもしれませんね。
焦らす
遊女たちはすぐにお客と親しくなることはせず、なかなか会わずに焦らすという作戦をとっていました。一度目や二度目は遠くから見るだけ、三度目にしてようやく一緒にお酒を飲んだり、話をしたりできるのです。
人は簡単に手に入るものよりも、苦労して手に入れたものを大切にする傾向があります。その心理を巧みに利用したテクニックです。焦らすことでお客は、「もっと相手のことが知りたい」「手に入れたい」という思いが募ります。手に入りそうで入らない絶妙な距離感を保つことで、お客を虜にしてしまうのです。
巧みに嘘をつく
遊女がお客に気があるフリをするのは、あくまで仕事のため。本気で好きになることはありません。しかし、上手に嘘をつくことで相手に一途であると信じ込ませます。これも「手練手管」の手法です。遊女は相手に惚れていることを信じ込ませるために、起請誓紙と呼ばれる紙に、愛を誓った言葉を書き神社に奉納していたとか。その行為にお客は騙され、自分への思いを信じてしまうのです。
最後に
「手練手管」とは、人をだまして操る手段のこと。もともとは江戸時代の遊女が客をだます手段でしたが、現在ではビジネスシーンや政治の場面などでも用いられることがあります。「手練手管」には、あらゆる手をつくしてだますことを表すので、良い意味ではほぼ使われません。
見事に組み立てられたお金儲け話や、甘い話が多い世の中、くれぐれも「手練手管」に惑わされないよう、お気をつけくださいね。
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