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「伺います」とは?
「伺います」は、敬語のひとつです。敬語表現は、日本人でも中々使いこなすのが難しいですよね。まずは、「伺います」の意味を詳しく解説します。
読み方と意味
「伺います」の読み方は「うかがいます」。「伺います」は、「聞く」「尋ねる」「訪れる」の謙譲語「伺う」に、丁寧語である「ます」をつけた表現です。辞典に載っている意味もチェックしておきましょう。
うかが・う〔うかがふ〕【伺う】
[動ワ五(ハ四)]《「窺う」と同語源。目上の人のようすをうかがいみる意から、その動作の相手を敬う謙譲語となる》
1. 「聞く」の謙譲語。拝聴する。お聞きする。「おうわさはかねがね—・っております」
2. 「尋ねる」「問う」の謙譲語。「この件について御意見をお—・いします」
3. 「訪れる」「訪問する」の謙譲語。「明朝、こちらから—・います」
4.神仏の託宣を願う。「御神託を—・う」
5.《「御機嫌をうかがう」の意から》寄席などで、客に話をする。また、一般に、大ぜいの人に説明をする。「一席—・う」
小学館 『デジタル大辞泉』より引用
そもそも謙譲語とは、相手に対して敬意を表すために自分自身がへりくだって用いるものです。そのため「伺います」は、上司など目上の人または取引先の人に対して使われることが多く、ビジネスシーンでよく耳にします。
「伺います」の誤用表現とは?
敬語を使う際に、「伺います」「お伺いします」「お伺いいたします」「お伺いさせていただきます」のどれが正しいのか迷ったことはないでしょうか。実は、厳密に言うと「伺います」のみが正しい敬語表現です。では「お伺いします」「お伺いいたします」「お伺いさせていただきます」が、なぜ誤用なのかを詳しく解説していきます。
お伺いします
「お伺いします」は一般的によく使われている表現ですが、間違った敬語といえます。「お〜します」という謙譲表現に「伺う」という謙譲語をあわせているため、二重敬語になってしまうのです。「お伺いします」は、ビジネスシーンなどでも広く使われており、意味は通じます。
しかし「お伺いします」が誤用表現であると知っている人からは、「教養がない人」と思われてしまうおそれがあります。そのため、使用しないほうが無難でしょう。
お伺いいたします
「お伺いいたします」も、正しい敬語表現ではありません。この表現に含まれる「いたす」とは「する」の謙譲語。つまり「いたす」という謙譲語と「伺う」という謙譲語が2つあるため、こちらも二重敬語にあたります。できるだけ丁寧な表現をしようとする気持ちは大切ですが、「お伺いいたします」のように、過剰な敬語となりがちなので注意しましょう。
お伺いさせていただきます
「お伺いさせていただきます」も、二重敬語にあたる表現です。「させていただく」とは、「させてもらう」の謙譲表現。「相手に許可をもらい、遠慮しつつ動作を行う」という意味を持ちます。「伺う」と一緒に使った場合、先の2つの誤用表現と同じく行き過ぎた敬語になってしまいます。
「伺います」と「参ります」の違いとは?
「伺います」と似ている表現に、「参ります」がありますね。本項では、この2つの言葉の違いを解説します。
「参ります」は「伺います」と同様に、「行く」「来る」の謙譲語です。違いとしては、ずばり〝敬う対象が誰なのか〟という点。「伺います」は、目上の人に敬意を示すために使うものです。たとえば、相手の会社に行くときは先方に敬意を示すため、「御社に伺います」と表現します。
反対に「参ります」は、主に聞き手に配慮した敬語表現です。つまり、行き先に敬意を表す必要がない場合に使えます。一例を挙げてみましょう。出張で他県の会社に行くときは「出張で○○県に参ります」と表現できますね。一方「出張で○○県に伺います」と表現すると、この例においては他県を敬意の対象としている訳ではないため誤りです。
使い方を例文でチェック!
「伺います」は、「聞く」「尋ねる」「訪れる」の謙譲語であると解説しました。本項では「聞く」「尋ねる」「訪れる」それぞれの例文を紹介しましょう。「伺います」はビジネスシーンで使われることが多いので、いざというときスムーズに使えるよう正しい使い方を確認しておきましょう。
「数々の功績を残されたというお噂は伺っております」
この「伺う」は「聞く」の謙譲語です。つまり、この例文は「あなたのこれまでの素晴らしい功績は、すでに聞いています」という意味になります。めざましい手柄や業績を残している人は、その業界で有名になっていることも多いですよね。そうした噂をすでに聞いていますよ、と伝えたい場合に使える表現です。
「新規プロジェクトの方針について伺ってもよろしいでしょうか」
この例文では「尋ねる」を謙譲表現にした「伺う」を使っています。相手に疑問形で尋ねる場合には「よろしいでしょうか」といった言葉を使うと、より丁寧な印象になりますよ。
「明日、資料を持って御社に伺います」
この例文の「伺う」は、「訪れる」の謙譲語。すでに解説しましたが、「お伺いします」や「お伺いいたします」「お伺いさせていただきます」は二重敬語にあたり、誤用表現です。これらの言葉と比べるとややシンプルですが、「伺います」が正しい表現ですので、自信を持って使ってくださいね。
類語や言い換え表現とは?
では、「伺います」の類語を見ていきましょう。「聞く」「尋ねる」「訪れる」それぞれをほかの言葉で言い換えたい場合には、「お聞きする」「お尋ねする」「参る」が適しています。
お聞きする
「お聞きする」は、敬意を示す「お」を「聞く」につけた謙譲語です。「伺う」と同じく、自分をへりくだって使う敬語表現ですので、同じ使い方ができるでしょう。ただし「伺う」に比べると、「お聞きする」はややカジュアルな印象を持たれる場合も。使うのは、社内の先輩など比較的身近な目上の人にとどめておくほうがいいかもしれません。
例文:先日の商談は大成功だったとお聞きしました。
お尋ねする
「お尋ねする」も「尋ねる」に敬意を表す「お」をつけた謙譲表現です。ただしこちらも「お聞きする」同様に、カジュアルなイメージを持たれることがあります。取引先など、社外の人に使う際は「伺う」を使ったほうがよいでしょう。
例文:先日提出した資料に関して、先輩の意見をお尋ねしてもよろしいでしょうか。
参る
「参る」は「行く」「来る」の謙譲語です。すでに説明した通り「参る」は、行き先に敬意を払う必要がない場合に使える点が「伺う」との違い。下記の例文の場合、行き先である相手企業に対して敬意を示す必要があるため「伺う」「参る」のどちらでも使用できます。
例文:こちらから御社に参ります。
英語表現とは?
「伺います」と英語で言いたい場合、「聞く」「尋ねる」「訪れる」の意味を持つ英語をそのまま使えば意味が通じます。「聞く」は「hear」、「尋ねる」は「ask」、「訪れる」は「visit」を使うといいでしょう。それぞれ例文も紹介します。
・I’ve heard a lot about you.(お噂はかねがね伺っております)
・I have one more question to ask you.(もう一点、伺いたいことがあります)
・I will visit you at your office at 13:00 tomorrow.(明日、13時にあなたのオフィスに伺います)
しっかり覚えて使いこなそう
「聞く」「尋ねる」「訪れる」の謙譲語である「伺います」。間違って「お伺いいたします」「お伺いさせていただきます」を使ったことがある、という方も多かったのではないでしょうか。日本人でも苦戦しがちな敬語表現ですが、本記事を読んで正しい使い方をマスターしましょう。
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