「伺う」の意味とは?
皆さんは、どんな時に「伺う」という言葉を使いますか? 「伺う」は、大きく括ると「上司など目上の人の様子を見る」という意味を持つ敬語です。
「伺う」は「聞く」、「問う」、「訪れる」の謙譲語
早速、「伺う」について詳しく見ていきましょう。「伺う」は、三つの意味を持つ謙譲語になります。謙譲語とは、「自分がへりくだることで、相手への敬意を高める」語のことです。その「伺う」の意味について一つひとつ確認します。
まず一つ目に、「聞く」です。「お聞きする」という意味合いで使われます。二つ目は、「問う」です。質問をする際に相手を敬う言い方として「伺う」を使うことができます。三つ目は、「訪れる」です。「訪れる」には「人やある場所を訪ねる」という意味がありますが、「伺う」は特に人を訪ねる際に使われます。
このように、「伺う」は、場合によって意味が異なってくるため、気をつけなければなりません。
「伺う」の正しい使い方とは?
続いて、「伺う」の使い方について、例文を用いながら紹介します。「聞く」、「問う」、「訪れる」それぞれの例文を紹介するので、参考にしてください。
1:「新商品の問題点について、詳しく伺ってよろしいでしょうか?」
「聞く」としての「伺う」を使う場合は、相手の「話を聞く」、もしくは「話を聞かせて欲しい」場合に使われます。
この場合、敬う相手は「伺う」相手になるので使う際は注意が必要です。例えば、社長に対して「上司より要件を伺っています」という使い方は、話し相手である社長に敬意が向けられていないため、間違った使い方になります。
2:「この後のスケジュールを伺えますか?」
この使い方は「問う」や「尋ねる」のニュアンスが強い使い方になります。相手に何かを問う場合は、このように使うことが可能です。「スケジュールを尋ねても良いですか?」というよりもかしこまった印象になりますよね。
3:「明日の15時に御社にお伺いいたします」
この場合の「伺う」は、「訪れる」の謙譲語として用いられています。「お伺いいたします」の「お」は尊敬を表す接頭語なので二重敬語になってしまいますが、一般的に使われているため使用しても問題はありません。
本来は「伺います」が正しいのですが、「お」をつけたほうが丁寧な印象になりますので、場面によって使い分けてください。
「伺う」と「窺う」の違いとは?
「伺う」は、「うかがう」と読みますが、同じ読みで「窺う」という漢字もあります。「伺う」と「窺う」はどう違うのでしょうか。一緒に迫っていきましょう。
「伺う」は、先ほど述べた通り、「目上の人の様子を見る」というところから、相手を敬う語となりました。
一方、「窺う」にもそのニュアンスはありますが、対象は目上の人だけではありません。それよりも「ひそかに探る・調査する」というニュアンスが強いのが特徴です。そのため、「窺う」は謙譲語ではなく、一つの動詞として考えるようにしてください。
例えば、「私は、友達の顔色を常に窺って行動をしている」というように使うことができます。口頭であれば問題ありませんが、文章中で使う際は、漢字を間違えないように気をつけましょう。難しい漢字の方はNOT尊敬語です!
「伺う」の言い換え表現を紹介
「伺う」の他にも、同じような文脈で使える言い換え表現があるので紹介します。ぜひ参考にしてください。
1:拝聴する
「拝聴」は、「はいちょう」と読みます。聞くことをへりくだって言う言い方です。「相手の話を慎んで聞く」という意味があります。
個人同士のやり取りというよりも、講演会や発表会など多くの人に向けて発信されたものについて聞く場面で使われることが多いです。例えば、「著名な作家の講演会を拝聴し、非常に参考になった」というように使うことができます。
2:承る
「承る」の読み方は「うけたまわる」です。「承る」も「聞く」の類語として考えることができます。例えば、取引先からの問い合わせを聞く場合、「伺う」でも良いですが、「取引先からの問い合わせを承る」と言い換えることも可能です。
3:お聞きする
「聞く」という意味を持つ言い換え表現の中で、最もシンプルなのが「お聞きする」です。「拝聴する」や「承る」よりナチュラルなため、どんな場面でも使いやすい表現になります。
4:お尋ねする
「問う」の意味を持つ言い換え表現として「お尋ねする」という言葉があります。「御社の広報担当の方にお尋ねします」と言い換えても問題ありません。
5:お邪魔させていただく
「伺う」は、「訪ねる」という意味も持っていましたね。したがって、「お邪魔させていただく」や、「訪問させていただく」などの言い換えが可能です。しかし、ビジネスシーンにおいては「お邪魔させていただく」という表現がフランクに感じられますので、「伺う」を用いたほうが、丁寧な印象になります。
「伺う」を使う際の注意点とは?
「伺う」は、様々な場面で活用できる言葉ですが、その分使う際には注意が必要です。特に気を付けたい部分を解説します!
二重敬語にならないようにする
「伺う」を使う際には、特に二重敬語に注意しましょう。「お伺いいたします」や「お伺いさせていただきます」など、誤った使い方をしていませんか? 「伺う」がそもそも、「聞く」、「問う」、「訪ねる」の謙譲語なので、「いたします」や「させていただきます」という謙譲語は不要です。
したがって、「お伺いします」が正しい日本語になります。間違えやすいので注意しましょう!
敬語の向きを間違えないようにする
誰に対して使われる敬語なのかを間違えないようにしましょう。ポイントは、「自分を主語にする」ということ。自分が相手に対して「伺う」という視点を忘れないようにしてください。ここが混乱すると誤った使い方になってしまいます。
最後に
「伺う」には複数の意味があるので、どの意味で使っているのかを理解しなければなりません。特に文章中であれば、分かりにくくなります。そんな時は、紹介した言い換え表現を用いて分かりやすく書き換えるようにしてくださいね。
また、「伺う」は二重敬語を使ってしまいがちになる語です。用いる際は、意識して使うよう心がけてください。しかし、マスターできれば汎用性が高く、また丁寧な印象を相手に与えることができます。この機会にばっちりマスターしましょう!
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