どんなに小さなことにも、力を尽くす人の姿には、独特の魅力があるように思います。「獅子搏兎(ししはくと)」という四字熟語は、そうした姿勢を映し出す言葉です。
この記事では、「獅子搏兎」について深掘りしていきましょう。
「獅子搏兎」の基本的な意味を確認
まずは、「獅子搏兎」が持つ意味を見ていきましょう。
「獅子搏兎」の読み方と基本的な意味
「獅子搏兎」は「ししはくと」と読みます。
「獅子」はライオン、「搏兎」は兎(うさぎ)を捕まえることを指します。つまり、「獅子搏兎」とは、獅子は兎を捕らえるにも全力を傾けることを意味します。
「獅子は兎を搏(う)つに全力を用う」とも言いますよ。
参考:『故事俗信ことわざ大辞典』(小学館)

「獅子搏兎」の使い方を例文で確認
言葉の意味が分かっても、どのような場面で使えばいいのか迷うことってありますよね。ここでは、「獅子搏兎」の使い方を具体的な例文とともに見ていきましょう。
「彼は新人相手のプレゼンにも、獅子搏兎の姿勢で準備を重ねていた」
経験の浅い相手であっても手を抜かず、万全を期して準備をしている様子を表しています。力の差があるからこそ、丁寧に取り組む姿勢が伝わる使い方です。
「どんな小さな案件でも、彼女は獅子搏兎の気持ちで取り組んでいる」
仕事の大小にかかわらず、真摯に対応する人物像を示す例文です。規模の小さな仕事であっても軽視しない姿勢が込められています。

「重要ではないと見なされがちな業務にこそ、獅子搏兎の姿勢が求められる」
軽んじられがちな業務ほど丁寧に取り組むことで、信頼が生まれることを表す例文です。日々の積み重ねの大切さを伝える言い回しです。
「獅子搏兎」の英語表現は?
英語で、「獅子搏兎」のニュアンスを伝えたい場面が出てくるかもしれませんね。そのままの表現はありませんが、近い意味を持つ英語表現を紹介します。
full steam ahead
“full steam ahead”は、「全力を注いで」「全力投球で」といった意味を持つフレーズです。仕事やプロジェクトなどに対して、迷いなく力を注ぐときに使われることが多いでしょう。
例文:We’re going full steam ahead with the new campaign.
(私たちは新しいキャンペーンに全力で取り組んでいます。)
put all one’s energies into〜
“put all one’s energies into〜”は「〜に全精力を注ぐ」「全身全霊で打ち込む」という意味を持ちます。努力や集中力を惜しまない姿勢を伝えたいときに適しています。
例文:She put all her energies into preparing for the presentation.
(彼女はプレゼンの準備に全精力を注いでいました。)
参考:『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)

「獅子搏兎」が注目される背景とは? 『黒子のバスケ』との関係
古くからある言葉が、意外なかたちで再び注目されることがあります。「獅子搏兎」もそのひとつです。漫画『黒子のバスケ』(藤巻忠俊・著)をきっかけに、若い世代のあいだでこの四字熟語が広く知られるようになりました。以下で、紹介していきましょう。
『黒子のバスケ』に登場した「獅子搏兎」
「獅子搏兎」は、漫画『黒子のバスケ』の第213話のタイトルに使われています。全国中学バスケットボール大会の地区予選初日、帝光中学校の監督が部員に向けてこの言葉を口にします。どんな相手にも全力で挑むという意味が、試合の始まりに重なるように描かれています。
最後に
「獅子搏兎」という四字熟語からは、どんな場面でも手を抜かず、誠実に向き合う姿勢が見えてくるようです。たとえ些細なことだとしても、心を込めて取り組むことで、自分らしい歩み方が見えてくることもあるのではないでしょうか。
TOP画像/(c) Adobe Stock