「胆大心小」という言葉を見ると、矛盾した言葉が並んでいるように見えますよね。しかし、意味を読み解いていくと、人としての優れたバランス感覚や、信頼関係を築くヒントが隠れていることに気がつきます。
この記事では、「胆大心小」について、意味と使い方を中心に解説します。
「胆大心小」とは? 読み方と意味を知る
「胆大心小」は、「たんだいしんしょう」と読みます。まずは辞書で読み方と意味を確認しましょう。
たんだい‐しんしょう〔‐シンセウ〕【胆大心小】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
《「旧唐書」遜思邈伝の「胆は大ならんことを欲し、心は小ならんことを欲す」から》
大胆で、かつ細心であること。
度胸は大きく、注意は細かく払うべきこと。
「胆大心小」は、大きな決断力と、細やかな気配りをあわせ持つ姿勢を表す言葉です。大胆に動く勇気がありながらも、慎重さを忘れない。そのふたつが共存している人物像が浮かび上がってきます。

「胆大」と「心小」の意味をさらに詳しく
「胆大心小」は、『旧唐書』遜思邈伝に由来する言葉です。
「胆大」は、物事に臆せず取り組む姿勢をあらわします。「大胆さ」や「豪胆さ」を指し、決断の場面で迷わず動ける力ともいえるでしょう。
一方の「心小」は、物事に慎重に向き合い、細かな部分にも気を配る感覚を示しています。繊細で丁寧な心のあり方とも受け取れますね。
この二つが合わさると、「行動には強さがありながら、心にはやさしい配慮がある」そんなバランスの取れた姿が「胆大心小」には込められています。
参考:『日本国語大辞典』(小学館)
「胆大心小」の使い方と例文
ここからは、「胆大小心」の実際の使い方を見ていきましょう。身近な会話や文章の中でどう使われるかを知ると、ぐっと身近に感じられるようになりますよ。
「新規事業の立ち上げでは、胆大心小な判断が求められる」
この表現では、「大きな決断を下す一方で、細やかな配慮も忘れないこと」という意味で「胆大心小」が使われています。全体を見通す力と、見えにくいリスクを丁寧に拾い上げる慎重さ。その両方をあわせ持つ判断力こそが、信頼につながるのかもしれませんね。
「彼女は胆大心小な人で、思い切った提案でも細かくリスクを見定めている」
思い切りのよさと慎重さが共にあることを評価する文章です。提案内容は大胆でも、その裏には細やかな計算や検討がなされていることを示し、バランス感覚があることを伝えられます。

「胆大心小」の英語表現は?
日本語の「胆大心小」とまったく同じ英語表現はありませんが、感覚として近い言い回しはいくつかあります。ここでは、英語での言い換え表現を確認していきましょう。

“Fearlessly but prudently”
“Fearlessly but prudently” は、シンプルで使いやすい表現です。「fearlessly」 は「恐れずに、大胆に」、一方の「prudently」 は「慎重に」という意味があります。
一見すると矛盾するような二つの性質を、自然にひとつのフレーズにまとめている点が、「胆大心小」に通じる印象を与えます。「胆大小心」が持つ意味と同じような感覚を英語で伝えたいときに、使いやすい表現のひとつです。
参考:『プログレッシブ英和』(小学館)
“I take calculated risks but never gamble.”(私は計算のうえでリスクを取るが、無謀な賭けはしない。)
“take calculated risks”は、準備をしてリスクを取ることを意味します。「never gamble」は、計画なしの行動を避けることを表します。
一見、大胆な判断をしているようでも、その背後には冷静な検討がある。そうした姿勢は「胆大心小」と重なる部分がありますね。大胆さと慎重さが両立している、そんなバランス感覚を表現するときにぴったりのフレーズです。
参考:『小学館 オックスフォード 英語コロケーション辞典』(小学館)
最後に
「胆大心小」は、行動の力強さと心の繊細さを兼ね合わせた四字熟語です。そんな両面性を持つ判断力は、経験を重ねることで磨かれます。 「胆大心小」という言葉が、バランスの取れた行動力へと導いてくれるかもしれませんね。
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