言葉巧みに話す人に対して、「舌先三寸」という表現が使われることがあります。どこか不安を覚える言葉ですが、どういった場面で使う言葉なのでしょうか? 本記事では、「舌先三寸」の意味や使い方、似た表現との違いについて解説します。
「舌先三寸」の意味とは? 「口先三寸」との違いも解説!
まず最初に、「舌先三寸」とは、どのような意味なのかを見ていきます。
「舌先三寸」の意味
「舌先三寸」は、「したさきさんずん」と読みます。辞書で意味を確認しましょう。
したさき‐さんずん【舌先三寸】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
口先だけでうまく相手をあしらうこと。また、その言葉。
「舌先三寸」は、巧みな話術で人を動かそうとするさまを表します。その意味の中には、表面的な言葉だけで相手を動かそうとする浅はかさが入っているでしょう。
加えて、おべんちゃらで、人を騙すような否定的な意味合いも持ちます。誠意のない言葉を使って、金品を詐取しようとする詐欺の手口を表現することもありますよ。

「口先三寸」との違いは?
「口先三寸」は、「舌先三寸」とよく似た表現ですが、じつは一般的な辞書に載っている表現ではありません。
しかし、文化庁が発表した平成23年度「国語に関する世論調査」では、「本心でない上辺(うわべ)だけの巧みな言葉」を表現するとき、「舌先三寸」を使う人が23.3%に対して、本来の言い方ではない「口先三寸」を使う人が56.7%という結果が出ました。
本来の言い方は、「舌先三寸」であることを覚えておきたいですね。
参考:『デジタル大辞泉』(小学館)
舌先三寸の類語や関連表現は?
言葉巧みに話すことを表す言葉には、「口八丁」が挙げられますよ。また、似た言葉として「舌三寸に胸三寸」が挙げられます。それぞれ詳しく見ていきましょう。
口八丁
「口八丁」の意味を辞書で確認します。
くち‐はっちょう〔‐ハツチヤウ〕【口八丁】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
[名・形動]口が達者なこと。また、その人や、そのさま。口巧者(くちごうしゃ)
「口八丁」は、「舌先三寸」と同じく話し方が上手いことを指します。「舌先三寸」は、言葉に誠意が感じられないことを表すニュアンスが強いのに対し、「口八丁」は、しゃべるのが達者なことを表します。

舌三寸に胸三寸(したさんずんにむねさんずん)
「舌三寸」と「舌先三寸」は、よく似た言葉ですが、「胸三寸」という言葉と組み合わせて使う場合は、全く意味が異なります。
「舌三寸」と「胸三寸」は、「ちょっとした物言い」に「ちょっとした考え」を指します。それが成否を決めることもあるため、「舌三寸に胸三寸」とは、口と心は慎まなければならないことを意味するのです。
参考:『故事俗信ことわざ大辞典』(小学館)
「舌先三寸」の例文
「舌先三寸」は、実際の会話や文章でどのように使われるのでしょうか? 例文を通して、具体的な用法を見ていきます。
「彼の舌先三寸には気をつけたほうがいいよ」
上記の例文では、彼の話は上手いものの、言っていることをそのまま信じるべきではないという注意喚起をしています。実際の行動や真意を見極めることが大切だという表現です。

「舌先三寸で契約を取るのではなく、実績を示すべきだ」
特にビジネスの場面では、契約や取引を成立させるために巧みな話術を用いることがあります。しかし、それだけでは十分ではありません。相手が本当に納得し、信頼を寄せるためには、過去の実績や具体的な成果が不可欠だと示しています。
最後に
「舌先三寸」という言葉には、話し方の巧みさを表すと同時に、実のない言葉だけで相手を動かそうとするニュアンスも含まれます。類似の表現として、「口八丁」がありますが、それぞれ微妙な違いがありますよ。甘い言葉に惑わされないためにも、いにしえ人が教えてくれる言葉の意味を知っておくことが大切ですね。
TOP画像/(c) Adobe Stock