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「気韻生動」とは? 意味や読み方
「気韻生動(きいんせいどう)」は、気高さや品格が感じられる芸術作品を形容する際に用いられる四字熟語です。
「気韻」とは気品ある様子のことで、おもに書画の趣を表します。「生動」は、今にも動き出しそうな文字や絵画のことです。
この言葉の由来は、中国の六朝時代に活躍した人物画の名手、謝赫(しゃかく)が提唱した「画の六法(がのりくほう)」にあります。謝赫は、絵画の制作や鑑賞に必要な6つの規範の1つ目に「気韻生動」を記しました。
現代では書画をはじめ、絵画などの幅広い芸術作品に対して「気韻生動」という言葉が使われています。
きいん‐せいどう〔キヰン‐〕【気韻生動】
出典:小学館 デジタル大辞泉
中国画の理想で、生気が満ちあふれていること。5世紀末の南斉の画論家謝赫が、「画の六法」の第一にあげる。→六法
「気韻生動」の使い方や例文
「気韻生動」は芸術作品の趣を表す言葉のため、日常生活で使用する機会は少ないかもしれません。
ビジネスシーンで見聞きした際に正しく理解できるよう、具体的な使用例を確認しておきましょう。
・話題の書家の展覧会へ足を運んだが、気韻生動な作品ばかりで、見る者の心をつかんで離さなかった
・気韻生動といえる作品を生み出すには、まだまだ修行が必要だ
・気韻生動は芸術作品の趣を表す言葉だが、自分もそのような気品を備えた人間でありたいと思う
「気韻生動」のような芸術に関する四字熟語
以下の四字熟語は「気韻生動」と同様、芸術に関係しています。
・鏡花水月(きょうかすいげつ)
・虚実皮膜(きょじつひまく)
・神韻縹渺(しんいんひょうびょう)
・神工鬼斧(しんこうきふ)
気韻生動とは別の視点で作品を評価したいときは、これらの言葉を活用するのも手です。自分の考えを的確に表現できるよう、それぞれの意味を確認していきましょう。

「鏡花水月(きょうかすいげつ)」
「鏡花水月」は、口では説明できないほど奥深い趣を指す四字熟語です。
鏡に映る美しい花や、水に映る美しい月は、目に見えても実際に手にすることはできません。その様子が転じ、はかないものや、手に取ることができないものという意味ももつ言葉です。
「気韻生動」は絵画や書画などの趣を表しますが、「鏡花水月」は、おもに詩歌や小説に対して使用する傾向にあります。
また、物事をあからさまに説明することなく、その様子を読者にありありと思い浮かばせる手法は「鏡花水月法」と呼びます。
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「虚実皮膜(きょじつひにく)」
「虚実」とは、嘘と真実のことです。「皮膜」は皮膚や粘膜のことで「虚実皮膜」とすることで、芸術が真実と虚構のわずかな境界に成り立つさまを表しています。
この芸術論を唱えたのは、江戸時代の近松門左衛門(ちかまつもんざえもん)だとか。近松門左衛門は、多くの浄瑠璃や歌舞伎の脚本を生み出した人物です。
近松の「虚実皮膜」の考えは、江戸中期の儒学者・穂積以貫 (ほづみいかん)の聞き書きによる「難波土産(なにわみやげ)」に記されています。
「神韻縹渺(しんいんひょうびょう)」
言葉で表現し難いほど優れた趣は、「神韻縹渺」と言い表します。
「神韻」とは、人では成し得ないほどすばらしい趣のことです。「縹渺」は、「縹緲」または「縹眇」とも書き、かすかに見えるさまを意味します。
「気韻生動」は気品ある趣を称える言葉ですが、「神韻縹渺」は神の領域かと思えるほどのすばらしさを称えるというニュアンスがあるといえるかもしれません。
「神工鬼斧(しんこうきふ)」
「神韻縹渺」と同じ「神」の字を使う「神工鬼斧」には、神業や名人芸などの意味があります。
まるで鬼神(きじん)が斧をふるって作ったかと思えるほど、精巧な作品に適した表現です。
言葉の順番を入れ替え、「鬼斧神工(きふしんこう)」の形でも使用できます。芸術作品のすばらしさのなかでも、とくに精巧さを評価したいときに活用できるでしょう。
「気韻生動」のような優れたさまを表す四字熟語
「気韻生動」は、芸術作品にまつわる四字熟語です。ジャンルを問わず優れたさまを表したいときは、以下の四字熟語を使い分けてみましょう。
・一騎当千(いっきとうせん)
・出藍之誉(しゅつらんのほまれ)
・十全十美(じゅうぜんじゅうび)
シーンに応じて正しく活用できるよう、それぞれの意味を紹介します。

「一騎当千(いっきとうせん)」
「一騎当千」は、人並みはずれたスキルや経験に対して用いる言葉です。1人の兵で、1,000人もの敵を相手にできるほど優れたさまを表します。
「いっきとうせん」のほか、「いっきとうぜん」も正しい読み方です。ビジネスシーンでは、経歴や手腕など、ずば抜けてすばらしい人を指す言葉として活用します。
「出藍之誉(しゅつらんのほまれ)」
「出藍之誉」は、弟子の才能が師匠を上回っていることを表します。
「藍」とは、染料を採取する植物のこと。藍からとる青色の染料が、実物の葉の色より濃くなることに由来しています。
「出藍之誉」は、師匠が弟子を褒める際に用いる表現です。ビジネスでは、上司が部下を褒めるシーンに適しているといえます。
なお、この表現は四字熟語ではなく、「青(あお)は藍(あい)より出(い)でて、藍より青し」の形でも使用できます。
「十全十美(じゅうぜんじゅうび)」
「十全十美」とは、まったく欠点がない完璧な状態のことです。完全を表す「十全」と欠点がない「十美」、2つの語句を重ねることで非の打ち所がないさまを表します。
ビジネスシーンでは「十全十美な準備がとられた」、「十全十美の仕上がりだ」のように活用してください。
「気韻生動」の意味を正しく理解しよう
「気韻生動」は、芸術作品のすばらしさを表す言葉です。同じく、芸術にまつわる四字熟語には「鏡花水月」や「虚実皮膜」などが挙げられます。
物事の優れた点を伝えたいときは、「一騎当千」や「出藍之誉」などを活用してみてください。
それぞれの意味を正しく理解し、コミュニケーションの幅を広げていきましょう。
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