目上の人から「お元気にされていますか?」と聞かれた時に、「はい、平穏無事に暮らしております」などと返事をしたことはありませんか? 普段当たり前のように使う言葉ですが、改めて「平穏無事とはどのような状態なのか?」と聞かれると、答えに困ってしまうかもしれません。
本記事では、「平穏無事」の意味や使い方、類語を解説しますので、参考にされてみてくださいね。
「平穏無事」の意味
「平穏無事」は、「へいおんぶじ」と読みます。どのような意味なのか辞書で見ていくと、
[名・形動]穏やかで、何も変わったこともなく安らかであること。また、そのさま。「一家の―を祈る」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
となります。「平穏」は、「変わったこともなく、穏やかなこと」。「無事」は、「普段と変わりないこと」です。事故などのトラブルや病気などの不幸な出来事もなく、平和であることを指す四字熟語です。字面からも、状況の穏やかさが伝わってきますよね。
使い方を例文でチェック!
どのような場面で「平穏無事」が使われるのか、例文を交えて紹介します。
1:今年も初詣では、家族が平穏無事であることを祈りました。
「家族全員が平穏無事でありますように」と、心の中でお祈りをする時などに使われます。家族が病気をすることがなく、ただ健康であるようにと望む人も多いはず。多くを望まず、謙虚であることが伝わってきますよね。
2:できることなら、平穏無事な生活を送りたいよ。
毎日が仕事や育児に追われ、せわしない日々を過ごしていると「ただ平穏無事な生活がしたい!」と思いませんか? 特に人間関係のトラブルを抱えている時ほど、そういうものとは距離をとって、心穏やかに暮らしたいと考えてしまうものかもしれません。
3:どうか今日の会議が平穏無事に終わりますように…。
いつも会議などで争いが絶えない場合、このように思うこともあるでしょう。何か企画を考えても、「そんな予算どこから出すの?」と上司から詰問されたり、反対意見が飛び交って話し合いがうまくまとまらない… という時ほど、何事もなくスムーズに会議が終わるように願ってしまいますよね。
類語や言い換え表現は?
何事もなく、穏やかな状態を表す言葉に、「無病息災」「天下泰平」「つつがない」などがあります。それぞれの意味を詳しく見ていきましょう。
1:無病息災
「無病息災」は、「むびょうそくさい」と読みます。意味は以下の通りです。
病気をしないで健康であること。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「無病」は文字通り「病気をしないこと」。「息災」は、「無事であること、健康であること」を指します。神社での初詣などで「無病息災」を祈願する人は多いですよね。ちなみに、「息災」は単体でも用いられます。「ご家族は元気ですか?」という代わりに、「ご家族は息災ですか?」と表現することができますよ。
(例文)
・「今年も家族全員が無病息災でありますように」とお祈りした。
・多くを望まず、無病息災であることが大切だ。
2:天下泰平
「天下泰平(てんかたいへい)」の意味は以下の通りです。
[名・形動]
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
1 世の中が平和でよく治まっていること。また、そのさま。「―な(の)世」
2 なんの心配事もなくのんきにしていること。また、そのさま。「―な(の)暮らしぶり」
「天下泰平」は、時代劇などでよく耳にする言葉ですね。「徳川家康は、戦国時代に終止符を打ち、天下泰平の世を作った」などというように、物語を語る上でよく登場します。何事もなく穏やかに暮らしている時にも使うことができますが、やや大げさに聞こえるかもしれませんね。
(例文)
・天下泰平な世が訪れて、庶民の暮らしが安定した。
・会社を定年退職した田中さんは、天下泰平な暮らしぶりだ。
3:つつがない
「つつがない」とは、どのような意味でしょうか?
[形][文]つつがな・し[ク]病気・災難などがなく日を送る。平穏無事である。「―・く暮らす」「―・く日程を終える」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
久しぶりに会った人から「お元気にされていますか?」と聞かれた時に、「おかげさまで、つつがなく暮らしております」と返事をする時に使います。病気のような災難もなく、穏やかに暮らしているということなので、「平穏無事」の言い換え表現として使いやすいですね。
(例文)
・道中つつがなく旅を終えることができた。
・子供が巣立ってからは、夫と共につつがなく暮らしております。
対義語は?
「平穏無事」の対義語としては、「多事多難(たじたなん)」が当てはまるでしょう。意味は以下の通りです。
[名・形動]事件が多くて、困難が絶えないこと。また、そのさま。「今年は―の一年であった」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「多事多難」は文字通り、困難がたくさんあること。事故や事件、病気など数々の災難が降りかかり、苦労が絶えない状況を指します。トラブルへの対処に追われて、せわしない様子がイメージできますね。何事もなくただ穏やかに毎日を送っている「平穏無事」とは真逆の状況と言えるでしょう。
(例文)
・ニュースを見ていると、多事多難の世の中だということがわかる。
・多事多難な時期を乗り越えて、今がある。
最後に
「平穏無事」とは、「穏やかで、何も変わったこともなく安らかであること」。「平穏無事な毎日」「平穏無事に暮らす」というように使うのが一般的です。身内に不幸があったり、病気をした時ほど、一見、地味で当たり前のような毎日が、実は幸せなことだったと気づくこともあるはず。平穏無事でいられることに感謝したいですね。
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