「話を断った途端、彼の態度が豹変した」というように使われる、「豹変」という言葉。「なぜ、動物の“豹”が使われるのだろう?」と疑問に思ったことはありませんか。実は豹のトレードマークである、派手な体の模様が関係しているのです。そこで本記事では、「豹変」の意味や語源、類語などを解説します。
「豹変」の意味
「豹変」は、「ひょうへん」と読みます。どんな意味なのか辞書で確認してみると、
[名](スル)《「易経」の「君子豹変す、小人は面を革(あらた)む」による語。豹の斑文がくっきりしているように、君子ははっきりと過ちを改めるという意から》人の態度や性行ががらりと変わること。本来はよいほうへ変わるのに用いたが、現在では、よくないほうへ変わる意味でいうことが多い。「相手を見て態度を―させる」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
と記載されています。日常生活においては、何かのきっかけで相手の態度や性格ががらりと変わった際に、「〜をしたら友人の態度が豹変した」というように使われますね。ちなみに、四字熟語では「君子豹変(くんしひょうへん)」とも。意味は「豹変」と同じです。
語源
会話の中でも、時々耳にする「豹変」という言葉ですが、「なぜ、豹なの?」と疑問に思う方もいらっしゃるはず。これは、中国の儒教の経典の1つ『易経』に由来があるとされています。この中に、「君子豹変す、小人は面を革(あらた)む」という一文があり、「豹の斑文がくっきりしているように、君子ははっきりと過ちを改める」ということを言っています。
ネコ科の動物である豹は、黄色地にまだらの黒斑模様が特徴。秋になると毛が生え変わり、より模様がくっきりと美しくなるのだとか。このことから本来は、物事が良い方向へと変わるというポジティブな意味を持つ言葉でしたが、現代では悪い方向に変わるというネガティブな意味として使われることが多くなっています。
使い方を例文でチェック!
「豹変」は、主に人の態度が変わった場合に使われる言葉です。どのようなシチュエーションが「豹変」に当てはまるのか、一緒に見ていきましょう。
1:取引先の山田さんは、私が年下だと知った途端、態度が豹変してびっくりしました。
社会に出ると、年上だと思って接していた人が、会話をしているなかで、「あ、自分より年下だった!」と気づくこともあるはず。それでも、取引先の相手であれば丁寧に接するのがマナーですが、中には年下の人に横柄な態度をとる人も。今まで敬語だったのが、急にタメ口になったり、上から目線で指示をしてこられると戸惑ってしまいますよね。
2:コラボ企画の申し出を断ったら、急に取引先の態度が豹変した。
ビジネスシーンで相手の態度が急に変わった時にも、「豹変」が使われます。この例文では、「この企業とコラボしたら、我が社にも大きなメリットがある」と踏んで、丁寧に交渉したにもかかわらず、それが断られて態度が悪くなったということですね。
3:付き合った途端に、彼の態度が高圧的になって…。あまりの豹変ぶりに驚きました。
以前に比べて、相手の態度が大きく変わったことを「豹変ぶり」と表現します。付き合う前までは優しかった彼が、付き合った途端に態度が冷たくなった… というような経験は、まさに態度が「豹変した」ケースと言えますね。相手の態度を受けて、自分がどのように感じたかを伝える時に使ってみてください。
類語や言い換え表現は?
何かが大きく変化することを伝えたい場合には、「急変」や「手のひらを返す」「打って変わる」という表現も覚えておくと役立ちますよ。1つずつ意味をチェックしていきましょう。
1:急変
「急変(きゅうへん)」とはどのような状態でしょうか? 辞書を見ていくと、
[名](スル)
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
1 状態が急に変わること。「病状が―する」
2 急に起こった変事。「―に備える」
という意味になります。「豹変」は主に人の態度が変わる時に使われますが、「急変」は「天候が急変する」というように、より広い範囲で使うことができますよ。「病状が急変した」というように、どちらかというと悪い変化に対して使われることが多い言葉です。
(例文)
・病院を出てから、父の容体が急変しました。
・たくさんの爆弾が投げ込まれ、戦況が急変した。
2:手のひらを返す
「手のひらを返す」とはどんな意味でしょうか?
言葉や態度などが、それまでとがらりと変わる。手の裏を返す。「昨日と今日とでは―・して言うことが違う」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
何かをきっかけに言葉遣いや態度がガラッと変わった時に、「手のひらを返す」を使いますよね。例えば、これまで丁寧に接客をしていた店員が、ものを買わないと気づいた瞬間に態度が冷たくなるなど。手のひらから手の甲に返す様子が、これまでの態度を逆転させる姿と似ていることから生まれた、ユニークな慣用句です。
(例文)
・僕が営業マンだと分かったら、手のひらを返すように冷たくあしらわれてびっくりしたよ。
・私が社長の妻だと気づいた途端、手のひらを返すように相手の態度が変わりました。
3:打って変わる
「打って変わる」も、会話の中でたびたび用いられますよね。辞書を見ていくと、
[動ラ五(四)]前の状態・態度と全く変わる。がらりと変わる。「昨日とは―・って快晴になった」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
という意味になります。「昨日とは打って変わって快晴になる」というように良い方向に変わった時にも使われます。今までの状況からがらりと変わったことがよく伝わる表現ですね。
(例文)
・昨日の不機嫌な態度から打って変わって、今日の父は上機嫌だった。
・浮気の誤解が解けると打って変わって、彼女は僕に優しく接した。
英語表現は?
いきなり態度が大きく変わったことを英語で言いたい場合には、「attitude change(態度が変わる)」や「suddenly change(突然変わる)」などを使ってみるといいですよ。例文で具体的な使い方を見ていきましょう。
(例文)
・Once we got married, his attitude changed.(結婚した途端、彼の態度が豹変した)
・When I refused my boss’s order, he suddenly changed his attitude and surprised me.(上司の命令を断ったら、突然態度が変わって驚いた)
最後に
「豹変」という言葉の由来が、中国の古い書物にあるのは意外でしたね。自分の要望などが通らなかったときなどに、一気に態度が変わってしまうことはよくあることですが、相手との信頼関係が崩れてしまう要因にも。そのような場合でも、冷静に対応したいですね。まるで豹の毛皮のように、相手の態度ががらりと変わった時に使ってみてはいかがでしょうか?
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