「三日天下」という言葉を聞いたことはありますか? 歴史が好きな人は、ある戦国武将に由来のある言葉だということを知っている方もいるかもしれませんね。本記事では、明智光秀にまつわる由来や、正しい使い方などを解説します。
「三日天下」の意味と由来
三日って、3日間のこと? いえいえ、さにあらず。まずは、三日天下の意味と由来について紹介しましょう。
「三日天下」の意味は?
「三日天下」は「みっかてんか」と読みます。意味は「きわめて短い間、権力を握ること」。「三日」というのは、実際に3日間ということではなく、短い日数を表す言い方です。三日坊主、ともよく言いますよね。
そしてこの場合の「天下」は、一国の支配権を握ることを表します。つまり、ごく短期間のみの天下、短期間のみトップに君臨する、ということです。
「三日天下」の由来は明智光秀
「三日天下」は、明智光秀が本能寺の変を起こし織田信長を倒してから、わずかな期間で羽柴秀吉に滅ぼされたことに由来しています。
本能寺の変が起こったのは天正10年(1582)6月2日。同月13日に明智光秀は討たれたといわれ、実際、光秀が天下人だったのは11日間~12日間でした。このように「きわめて短い期間しか地位や権力を保てないこと」を、「三日天下」と言うようになりました。
使い方を例文でチェック!
自虐や嘲笑、あるいはそうならないようにと注意を促す意味で使われることが多い「三日天下」。具体的な例文を通して正しい使い方をマスターしましょう。
1:「チャンピオンになった次の試合で王座を奪われ、結局、三日天下でした」
短い期間しかチャンピオンでいられなかったことを、「三日天下だった」と表現。自虐とともに、悔しい気持ちが伝わってきますね。
また、「営業成績トップになったのも束の間。ライバルに抜かれて三日天下だった」など、ビジネスシーンで使われることもあります。
2:「せっかく昇進したのだから、足元をすくわれて三日天下にならないよう気をつけて」
隙をつかれて失敗させられ、すぐに地位を手放すことにならないように、と注意を促している例文です。
3:「うるさい母と姉がいない我が家で三日天下の気分を味わっています」
ユーモアを感じさせる例文。母と姉がいない我が家で、ほんの束の間、伸び伸び寛いでいる様子が伝わります。
4:「明智光秀が三日天下で終わらなければ歴史は変わっていたのだろうか」
歴史にifはないといいながら、よく論じられるテーマです。
5:「三日天下に終わろうともやるべきことをやろうと思う」
長期に渡って権力を握るより、今、なすべきことをなすのだという決意表明です。
6:「今度の政権は、おそらく三日天下だろう」
今度の政権は短命だろうと、近い将来を予想しています。
類語や言い換え表現は?
栄光や地位、権力が短期間で終わる、という意味の言葉にはほかにどのようなものがあるのでしょうか。
1:百日天下(ひゃくにちてんか)
短期間の政権のことを例えて表す言葉。ナポレオン1世が、1815年にエルバ島を脱出してパリに入り帝政を復活させてから、ワーテルローの戦いで敗北し退位するまでが約100日間だったという史実に由来しています。
2:三日大名(みっかだいみょう)
「短い間だけ地位を得る」という、三日天下とほぼ同じ意味です。「三日大名に終わらないよう心してかからなければ」「三日大名にならないためにも同志を集める必要がある」など、ビジネスシーンなどで何か事を成すときのも心構えとしても使えます。
3:栄枯盛衰(えいこせいすい)
「人生や世の中は栄えたり衰えたりする」という意味。栄えていたものが短期間でその勢いを失くした場合、三日天下と言い換えることができます。
4:一栄一落(いちえいいちらく)
あまり聞き慣れない四字熟語ですが、「栄えたかと思うとすぐに衰える」という意味です。春になると草木に花が咲き、秋には葉が落ちることから。
対義語は?
「三日天下」に直結する対義語はなかなか見当たりませんが、政治の世界に関していえば、「長期政権」がそれにあたるでしょう。短期政権(短命政権)は文字通りの三日天下ですので、それとは反対の意味になりますね。
英語表現は?
英語で「三日天下」は、「short-lived reign」と表現するのが一般的。「short-lived」 は「短命の、一時的な」。「reign」は「支配、君主、統治」などの意味があります。まさしく、短期間の支配、すなわち三日天下ということ。
・That was a short-lived reign.「三日天下でしたね」
・His power was short-lived.「彼の権勢は三日天下に終わった」
・short-lived government 「短命政権」
ほかに「brief championship」「brief」には非常に短い、短期間という意味があり、直訳すると「短期間のチャンピオン」。試合に勝利してチャンピオンになったけれど、結果として三日天下で終わった状況を表します。
最後に
「三日天下」とは、せっかく得た地位や権力を短期間で失うことを表す言葉でした。主に三日天下に終わったことを嘆いたり、嘲笑したりする場合に使われますが、そうならないように、という戒めの言葉としても有効です。上り調子のときほど、さらに学んだり準備をしたり、周囲とのコミュニケーションを図るというように、三日天下に終わらない努力をしたいものですね。
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