「虚仮威し」という言葉を見たときに、ほとんどの人が「これ、なんて読むの?」と思うのではないでしょうか? 漢字の並びからは想像しにくい読み方と、少し皮肉めいた意味を持った言葉です。詳しく見ていきましょう。
「虚仮威し」とは? 読み方と意味について解説
日常ではあまり目にしない「虚仮威し」ですが、その意味を知ると人の振る舞いへの理解が深まることがあります。まずは、基本となる読み方と意味を見ていきましょう。

「虚仮威し」の読み方と意味
「虚仮威し」は「こけおどし」と読みます。辞書で意味を確認しましょう。
こけ‐おどし【虚仮▽威し】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
[名・形動]愚か者を感心させる程度のあさはかな手段。また、見せかけはりっぱだが、中身のないこと。また、そのさま。「―の文句を並べる」
「虚仮威し」とは、実際には力が伴っていないのに、見かけだけで中身のないことを指す表現です。例えば、過度に派手な外見や、必要以上に強気に見せかける態度などが当てはまります。
「虚仮威し」の成り立ちは?|「虚仮」とはどんな言葉?
「虚仮威し」という言葉は、接頭語の「虚仮」と、動詞「おどす(威)」の連用形の名詞化「威し」から成り立っています。
ここでは、接頭語としての「虚仮」の意味を辞書で確認しましょう。
こ‐け【虚仮】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
[接頭]名詞などに付く。
1 見せかけだけで中身のない意を表す。「―おどし」「―おどかし」
2 むやみやたらにすることや、そのような状態であることをけなしていうのに用いる。「―いそぎ」「―惜しみ」
「虚仮」は、「見かけ倒し」という意味を持っています。主にけなす際に用いられますよ。
例文で見る「虚仮威し」の使い方
意味を知るだけでは、言葉はなかなか自分のものにはなりません。ここでは「虚仮威し」がどのように文の中で使われるか、例文を通じて見ていきましょう。
「彼のあの態度は、まさに虚仮威しだった」
この文は、堂々とした様子や強気な言動が、実は中身をともなっていなかったということを表しています。言葉の選び方にやや距離を置いた観察眼が感じられますね。
「虚仮威しでごまかしても、すぐ見抜かれるよ」
こちらは、表面的な見せかけで相手を圧倒しようとしても、それが通じないことを伝えています。相手に見透かされているときの注意喚起として使われていますよ。

「虚仮」を含む他の表現も知っておこう
「虚仮威し」に登場する「虚仮」という言葉には、古くから使われてきた独特の響きと意味があります。この言葉が使われる他の表現にも目を向けてみると、日本語の奥行きがぐっと広がって感じられるかもしれません。ここでは、知っておきたい3つの言い回しを紹介します。
虚仮も一心(こけもいっしん)
愚かに見える人でも、ひとつのことにまっすぐ取り組めば、思いがけない力を発揮することがあるという考え方です。人を見かけだけで判断しない、そんな気持ちがこもった表現だといえるかもしれません。
虚仮にする
誰かを軽く扱ったり、見下したりする態度を表す言葉です。よく使われる言葉に言い換えるなら、「ばかにする」に近いかもしれません。相手の真剣さや誠実さを軽んじてしまうような態度を含みます。
虚仮の後思案(こけのあとじあん)
必要なときに知恵が出ず、終わってからようやく「こうすればよかった」と気づくような場面を表します。どこか愛嬌のある失敗にも見えますが、タイミングの大切さを思い出させてくれる言葉です。
「虚仮威し」の英語表現は?
「虚仮威し」は日本語ならではの表現のようにも思えますが、英語にもそれに近いニュアンスを持つ言い回しがあります。文化は異なっても、外見と中身のギャップを見抜こうとする感覚は、意外と共通しているのかもしれません。

bluff
“bluff”は、強がりやはったりの意味を持つ単語です。実際にはそこまでの力がないのに、大きく見せかけるような態度を指すときに使われます。
例文:He said he’d call the police, but I think it was just a bluff.
(彼は警察を呼ぶと言ったけれど、はったりだったように思える。)
paper tiger
“paper tiger”は、見た目は強そうに見えるけれど、実際には脅威にならない存在を表します。日本語の「張子の虎」と同じような意味合いを持ち、「虚仮威し」に通じる表現です。
例文:They pretend to be powerful, but in reality, they’re just a paper tiger.
(彼らは強く見せかけているけれど、実際には虚仮威しにすぎない)
最後に
「虚仮威し」は、相手を見かけや勢いだけで納得させようとする場面で使われることが多い言葉です。ただし、使い方によっては皮肉や批判を含む場合もあります。
言葉を知っていることで相手を判断する視点も増えますが、その分、慎重さも求められるのかもしれません。静かに本質を見つめる姿勢が、言葉の背景をより豊かにしてくれるように感じます。
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