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「忠実」という言葉は、日常的によく耳にする表現のひとつです。ただ、その使い方や印象は場面によって微妙に変わります。丁寧で真面目な印象がある一方で、どこか堅く感じる人もいるかもしれません。
そこで、この記事では、「忠実」の意味や使い方、英語や言い換え表現、法律用語としての一面まで順を追って紹介していきます。
「忠実」とは? 意味を確認
まずは「忠実」という言葉の意味について確認していきましょう。
忠実の意味
「忠実」は、「ちゅうじつ」と読みます。意味を辞書で確認しましょう。
ちゅう‐じつ【忠実】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
[名・形動]
1 まごころをこめてよくつとめること。また、そのさま。「職務に―な人」「―な臣下」「―に任務を遂行する」
2 内容をごまかしたり省略したりせずそのままに示すこと。また、そのさま。「原文に―な翻訳」「史実に―に再現する」
[派生]ちゅうじつさ[名]
「忠実」には、主に2つの意味があります。ひとつは、誰かに対して誠実に向き合い、まごころを持って任務や役割を果たすという意味です。例えば「職務に忠実な人」というように、責任を丁寧に果たす姿勢を表します。
もうひとつは、情報や内容を正確に保つという意味です。「原作に忠実な再現」などのように、事実をゆがめず、そのままに伝えることを指します。
人への態度にも、事実や記録にも使えるため、場面によって柔軟に使い分けられる言葉だといえるでしょう。

「忠実」の使い方を具体的な例文とともに紹介
「忠実」という言葉は、人の姿勢をあらわす場面だけでなく、再現や模倣に関わる文脈でも使われます。使い方の幅が広いからこそ、例文を通じて意味の違いやニュアンスの変化を感じてみると、自分の言葉としても使いやすくなりますよ。
「基本に忠実な対応だった」
この例文では、決められた手順やルールをきちんと守る姿勢を伝えるときに使われます。業務の中で、慎重に物事を進めている様子を表現したいときにも向いていますね。
「原作に忠実な映画だった」
この例文では、ストーリーや世界観が原作そのままに再現されていることを示します。脚色が控えめで、原作への敬意が込められていると受け取られる場合に使われますよ。映画やドラマ、舞台など、元となる作品があるジャンルでよく見られる言い回しです。
「欲望に忠実すぎる選択だったかも…」
こうした表現は、ちょっとした開き直りや自嘲を込めて使われることがあります。理性よりも本音を優先した結果を、やわらかく表現したいときに使われたりしますね。
「忠実」の英語表現
「忠実」という言葉を英語にするときは、何に対して忠実であるかによって使う単語が変わります。人に対する忠誠を表したいのか、約束や義務への誠実さを伝えたいのか、その違いを意識すると英語でも的確に表現できます。

loyal
人に対して使う場合には、“loyal”がよく使われます。例えば会社や上司、家族などに変わらず仕える姿勢を表したいときに使われます。忠誠心や義理堅さがニュアンスとして含まれることもありますよ。
faithful
約束や義務の遂行などに忠実だと伝えたい場面では、“faithful”が使われます。約束を守る人、一途な関係を保つ人などに使われることが多く、誠実さを印象づける表現です。
「忠実」の言い換え表現
「忠実」という言葉が少し硬く聞こえる場面では、別の言い回しに置き換えることを考えましょう。選ぶ言葉によって、印象や距離感が変わることもあるため、文脈に合わせて言い換えてみるのもひとつの工夫ですね。
誠実
真心を持って、相手や物事に向き合う姿勢を表す言葉です。利害を超えた誠意や、人としてのまっすぐな態度を伝えたいときに使われます。
従順
おだやかに人の指示に従う様子を表す言葉です。反発せず素直に動く印象がありますが、自分の意思が見えないようなニュアンスも含むため、使い方には少し注意が必要です。
正確
物事を事実どおりに表すときに使われます。数字や再現性など、客観性が求められる場面での「忠実さ」を伝えるときに適していますよ。伝達や記録の信頼性を強調したいときにも使いやすい言葉です。
「忠実義務」とは? ビジネスでも知っておきたい法律用語
「忠実」という言葉は、日常的な会話だけでなく、法律用語としても重要な意味を持ちます。特に会社経営に関わる立場にある人にとっては、責任ある行動を求められる中で無視できない概念だといえるでしょう。

「忠実義務」とは
忠実義務とは、役職にある人がその職務を誠実に遂行すべきとする考え方です。会社法第355条では、株式会社の取締役が会社のために職務を忠実に行うことが定められています。
これは、会社に対して真摯に向き合う姿勢を求めるものであり、業務の判断や対応において私的な利益を優先させないよう意識することが求められます。
「忠実義務違反」とは
もし取締役が忠実義務に反する行動をとった場合、損害賠償などの責任が問われることがあります。例えば、自分の知人と不利な条件で取引を行ったり、会社の利益を損なう判断を私的な理由で下したりするケースが含まれますよ。
企業の健全な運営や信頼性に関わるため、コンプライアンスの観点からも注目されている考え方です。
参考:『法律用語辞典 第5版』(有斐閣)
最後に
「忠実」という言葉は、どこか真面目で堅い印象がありますが、使い方によってはユーモラスにも伝えることができます。状況に応じて言い換えたり、別の視点から捉え直したりすることで、表現の幅を広げられそうですね。
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