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ちょっと難しそうな言葉でも、実は日常のあちこちで耳にする言葉ってありますよね。「有形無形」という表現も、その一つかもしれません。意味を詳しく把握していないと、いざ使おうとしたときに自信を持って使えなかったりするものです。
そこで、この記事では、「有形無形」という言葉の意味や使い方を、できるだけわかりやすく解説していきます。
「有形無形」とは? 意味と背景をやさしく解説
まずは、「有形無形」の読み方と意味から見ていきましょう。
「有形無形」の読み方と意味は?
「有形無形」は、「ゆうけいむけい」と読みます。辞書で定義を確認しましょう。
ゆうけい‐むけい〔イウケイ‐〕【有形無形】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
形のあるものと、形のないもの。「―の援助を受ける」
「有形無形」とは、「形のあるものと形のないもの」を意味します。例えば、目に見えるプレゼントは「有形」、気持ちや応援といったものは「無形」ですね。
有形とは? 無形とは?
「有形」は、目に見える、手で触れられる、重さがあるような、形を持っているものを指します。例えば家具や本、衣類などが「有形」にあたります。
一方、「無形」とは、目に見えないけれど、存在していると感じられるものです。例えば、愛情や信頼、アイデアなどが無形のものとして挙げられます。

何が違う?「有形」と「無形」の具体例
ここでは、いくつかの具体例を取り上げて、「有形」と「無形」の違いを感じてみましょう。
「有形財産」と「無形財産」とは?
「財産」と聞くと、お金や土地を思い浮かべるかもしれません。お金や土地はすべて「有形財産」です。
ゆうけい‐ざいさん〔イウケイ‐〕【有形財産】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
動産・不動産・商品・貨幣など、形のある財産。⇔無形財産。
それに対して、著作権や技術のノウハウなど、目に見えないけれど価値があるものは「無形財産」として扱われます。
むけい‐ざいさん【無形財産】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
物的な形を備えていない財産。著作権・特許権など。⇔有形財産。
有形商材と無形商材の違い
企業の営業活動においても、「有形商材」と「無形商材」という分け方が使われています。有形商材は商品や製品などの“モノ”であり、無形商材はサービスやコンサルティングのように“カタチのないもの”です。この区別は、販売の仕方や顧客とのやり取りにも関わってくるため、実務の場面ではよく意識されています。
文化財の文脈での使い分け
文化財の世界でも、「有形」と「無形」という言葉が重要な役割を持っています。例えば、お城や仏像などは「有形文化財」、芸能や工芸技術のように継承される技は「無形文化財」として区別されています。保持者を俗に「人間国宝」といいますよ。

「有形無形」の類語や言い換え表現は?
少し堅苦しく感じられる「有形無形」という言葉も、別の言い方に変えるとわかりやすくなりますよ。
目に見えるものと、見えないもの
「プレゼントには、有形のものも無形のものもあるよね」というよりも、「プレゼントには、目に見えるものも、見えないものもあるよね」と言うほうが、わかりやすいでしょう。
物心両面(ぶっしんりょうめん)
「物心両面」という言葉は、物質的なことと精神的なこととの両方の面を意味します。例えば、「物心両面でサポートする」というような使われ方をすることが多いでしょう。
例文で見る「有形無形」の使い方
言葉の意味を深く理解するには、実際にどのような場面で使われるのかを知ることも大切です。ここでは、「有形無形」が使われる具体的な文脈を、例文とともに見ていきましょう。
「彼からは有形無形の支援を受けている」
この表現には、金銭的な援助や手助けといった「形ある支え」だけでなく、励ましや見守る姿勢といった「形のない支え」も含まれています。物質的なものと精神的なものの、両方に支えられているというニュアンスが伝わってきますね。
「有形無形の財産を子に残す」
この言い回しからは、目に見える資産だけでなく、生き方や価値観、人とのつながりといった目に見えない大切なものも含めて、次の世代に伝えたいという思いが感じられます。財産という言葉に込める意味の幅が広がる使い方です。

英語ではどう表現する?
「有形無形」は一見すると日本語独自の感覚にも思えますが、英語にもそれに近い考え方があります。どのような言葉で表現されているのかを見てみましょう。
material and moral
“material”は「物質的なもの」を指し、目に見える形ある存在を意味します。一方で、“moral”は「精神的なもの」や「心の在り方」に関わる概念を表します。このふたつの言葉を並べて、“material and moral”とすると、「有形無形の」といったニュアンスを表現できます。
例文:He offered material and moral support during the difficult time.
(困難な時期に、彼は物質的にも精神的にも支えてくれた。)
最後に
「有形無形」という言葉には、目に見えるものだけでなく、気持ちや経験などの見えない価値にも目を向ける視点が含まれています。
日々のやりとりや支え合いの中で、形あるものとないものがどちらも大切だと気づく場面があるかもしれません。この言葉を知っていることで、相手の思いや背景に少しだけ優しくなれることもあるのではないでしょうか。
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