「風流韻事(ふうりゅういんじ)」という言葉に出会うと、少し背筋が伸びるような感覚を覚える人がいるかもしれません。なじみがないと感じる反面、その中には静かな趣や品のある佇まいが秘められているようにも思えるでしょう。
この記事では、「風流韻事」の意味や背景、使い方まで、言葉の奥にある世界をたどっていきます。
「風流韻事」の読み方と意味をわかりやすく解説
まずは、「風流韻事」の読み方と意味から確認していきましょう。
「風流韻事」の読み方と意味
「風流韻事」は、「ふうりゅういんじ」と読みます。辞書では次のように説明されています。
ふうりゅう‐いんじ〔フウリウヰンジ〕【風流韻事】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
自然に親しみ、詩歌を作って楽しむこと。風流な遊び。
「風流韻事」の意味は、自然を愛でたり、詩や歌を通じて趣を味わったりするような、心豊かな遊びを指します。静かで繊細な美意識を大切にする、日本的な感性が表れている表現といえるかもしれません。

「風流韻事」の成り立ち
「風流韻事」は、「風流」と「韻事」という2つの語が組み合わさってできています。それぞれの言葉の意味を知ることで、この表現が持つ背景が少し見えてくるかもしれませんよ。
「風流」とはどういう意味か?
「風流」は、辞書では以下のように説明されています。
ふう‐りゅう〔‐リウ〕【風流】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
[名・形動]
1 上品な趣があること。みやびやかなこと。また、そのさま。風雅。「―な庭」
2 世俗から離れて、詩歌・書画など趣味の道に遊ぶこと。「―を解する」
3 「ふりゅう(風流)2」に同じ。〈日葡〉
4 美しく飾ること。数奇(すき)をこらすこと。また、そのさま。
「御前に―の島形を居(すゑ)られたり」〈太平記・二四〉
5 「風流韻事」の略。
「―のはじめや奥の田植歌」〈奥の細道〉
6 先人ののこしたよい流儀。遺風。
「倭歌の―、代々にあらたまり」〈常盤屋の句合・跋〉
つまり「風流」とは、上品でみやびな美意識をもち、詩や芸術に親しむ姿勢を表す言葉です。
「韻事」とは何を指すのか?
「韻事」は、辞書で次のように説明されています。
いん‐じ〔ヰン‐〕【韻事】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
詩文を作るなどの風流な遊び。
「韻事」は詩文などを作って楽しむことをいいます。

「風流韻事」の使い方を例文で確認
意味がわかっても実際にどう使うかは難しいもの。ここでは「風流韻事」を文章の中でどう使えるか、具体的な例文とともに解説します。
「彼は風流韻事を極めた数寄者として知られていた」
「風流韻事」は、茶の湯や庭づくりなど、日本の伝統文化に親しみながら日々を過ごしている人物に対して使われるでしょう。表面的な趣味ではなく、生活のなかに自然と根ざしている様子が想起されます。
「四季を楽しみ書画に親しむ、まさに風流韻事の人である」
季節ごとの風物に目を向け、自らも書や絵に親しむ姿勢に対して、「風流韻事」が使われています。自己表現と自然観察の両方に価値を見出すような人柄が思い浮かびますね。
「風流韻事にふれることで、心が整う気がする」
この例文では、「風流韻事」がもたらす影響に焦点を当てています。忙しさに追われる日常の中で、静かに心を整える時間の価値がしみじみと伝わってきますね。

「風流韻事」は、英語ではどう表現する?
「風流韻事」を英語で表現するのは、なかなか難しいですが、近い表現を選ぶことでニュアンスを伝えることができます。ここでは、3つの言い回しを紹介しましょう。
elegant pastime
“elegant” は「優雅な」という意味で、落ち着きと品格を感じさせます。“pastime” は「娯楽」や「楽しみ」を指す語です。あわせて使うことで、上品に趣味を楽しむ印象が伝えられます。
tasteful pastime
“tasteful” は「趣がある」という意味を持ちます。 “tasteful pastime”も、日常の中にある美意識や感性をやわらかく伝える言い回しです。
refined pastime
“refined” は「洗練された」といった意味があります。文化的な活動や、知的な趣味にふさわしい語として使われることが多いでしょう。
参考:『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)
最後に
「風流韻事」という言葉は、特別な場面だけでなく、日々の暮らしの中にもそっと顔をのぞかせているのかもしれません。季節の移ろいに気づいたとき、静かに器を手に取るとき、誰かとことばを交わすその時間に、ささやかでも深い美が宿ることもあります。この言葉が、そんな日常の光に気づく手がかりとなることがあれば、嬉しく思います。
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