「八面玲瓏(はちめんれいろう)」という言葉を耳にしたことはありますか? 難しい言葉に感じますが、その響きには不思議な美しさがあります。
この記事では、「八面玲瓏」の意味や由来、使い方などについて、わかりやすく紹介していきます。
「八面玲瓏」とは?|意味や成り立ちを解説
日常ではあまり見かけない言葉ですが、「八面玲瓏」は人を形容する際にも使われる表現です。意味や成り立ちを知ることで、見えてくるものがあるかもしれませんよ。
「八面玲瓏」の読み方と意味
「八面玲瓏」は「はちめんれいろう」と読みます。辞書では次のように説明されていますよ。
はちめん‐れいろう【八面×玲×瓏】
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
一[名・形動]心が清らかで、何のわだかまりもないこと。また、そのさま。「―な(の)人柄」
二[形動タリ]どの方面から見ても曇りなく明るいさま。
「―と明らかに」〈謡・野守〉
「八面玲瓏」とは、どこから見ても美しく鮮明であること。そして、心中にいささかのわだかまりもないことを表します。
外側からも、内側からも澄んでいる。そのような透明感を伝える言葉です。

「八面玲瓏」の成り立ちは?
「八面玲瓏」という四字熟語は、「八面」と「玲瓏」という2つの語から成り立っています。「八面」は、あらゆる方向を指す言葉です。「玲瓏」は、透き通り輝くさまを意味します。
このふたつが合わさることで、「どこから見ても曇りがなく、澄んでいて整っている」様子を表すようになったと考えられます。見た目の美しさだけでなく、内面の清らかさにも通じる、奥行きのある言葉だといえるでしょう。
どんな人が「八面玲瓏」と言われる?
「八面玲瓏」という言葉は、人の在り方やふるまいに対して使われることもあります。では、どのような人に向けて使われるのでしょうか? その特徴を見ていきましょう。
八面玲瓏な人とはどんな人物?
「八面玲瓏」と評される人は、どこから見ても調和がとれていて、欠けたところを感じさせない印象を持たれることが多いでしょう。物腰が穏やかで一貫性がありながらも、周囲への配慮を忘れず、状況に応じて自然にふるまえる柔らかさも備えています。
芯を持ちつつも、その場その場で最適な空気をまとう、そんな印象の人に重ねられる言葉かもしれません。
職場や人間関係での「八面玲瓏」なふるまいとは?
例えば職場では、誰に対しても言葉づかいが丁寧で、場の空気を読みながら会話に入れるような人が、「八面玲瓏」と称されるでしょう。自分の意見を押しつけることなく、相手の立場にそっと寄り添うような対応は、安心感を与えてくれますね。

「八面玲瓏」の使い方を例文でチェック
では、「八面玲瓏」はどのように使ったらいいのでしょうか? 具体的な例文とともに使い方を確認していきましょう。
「彼女の立ち居振る舞いは八面玲瓏としていて、どこにいても自然と人の視線を集めていた」
この例文では、「八面玲瓏」が持つ“どの方向から見ても曇りがない”という意味を、人の雰囲気や印象に重ねています。社交の場などで、落ち着きと清潔感のある立ち居振る舞いが印象的な人に使われる言い回しです。
「上司は八面玲瓏な人で、誰に対しても態度が変わらず信頼を集めている」
この例文では、「八面玲瓏」が“どの方面から見ても曇りなく明るいさま”という意味で使われています。対人関係における公平性や、誠実な人柄をあらわす用例です。
「彼の八面玲瓏とした回答には、曖昧さがなく不思議と説得力があった」
この例文では、発言や考え方の“透明感”や“明晰さ”を指して「八面玲瓏」を使っています。表現の明確さや、論理の通った話しぶりに対して用いると、言葉に品格が生まれます。
「八面玲瓏」の類語・言い換え表現は?
「八面玲瓏」という言葉に近い表現を知っておくと、場面に応じた言い換えがしやすくなります。似ているようで意味やニュアンスに違いがあるため、それぞれの言葉が持つ背景にも目を向けてみましょう。

一視同仁(いっしどうじん)
「一視同仁」とは、中国・唐代の思想家・韓愈(かんゆ)による文章に由来し、「誰に対しても分け隔てなく接する」という意味を持ちます。態度や心の在り方が公平であることを表現するときに使われる言葉です。
八方美人
「八方美人」という表現は、本来「どこから見ても美しい人」という意味を持ちますが、現代では多くの場合、やや否定的なニュアンスを伴います。
誰に対してもそつなく振る舞いながら、信念が感じられにくいといった印象を与える場面で使われることが多いでしょう。
外面的な整いに重点を置く点では「八面玲瓏」と似ていても、内面の透明さや誠実さという点で異なるニュアンスがあるようです。
最後に
「八面玲瓏」という言葉からは、曇りのない本当の美しさを感じさせます。日々のなかで、誰かのそうした姿に触れたとき、あるいは自分のふるまいを見つめ直したいとき、この言葉をそっと思い出してみるのもいいかもしれませんね。
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