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「後生大事」とは何かをとても大切にすること
「後生大事」の「後生」には、「死んで後の世に生まれ変わる」という意味があります。
本来、「後生大事」は生まれ変わった世での安楽な暮らしを願い、一心不乱に修行に励む大切さを説いた言葉でした。それが転じ、現在は物をとても大切にすることを表す四字熟語として用いられています。
また「後生大事」には、物を大切にする様子をからかうニュアンスが含まれています。
物を大切にする様子を、シンプルに褒める言葉ではないことを押さえておきましょう。
ごしょう‐だいじ〔ゴシヤウ‐〕
出典：小学館 デジタル大辞泉
１ 後生の安楽をいちずに願うこと。
２ 物事を大切にすること。「師の教えを—に守る」「空箱を—にしまっておく」
「後生大事」は仏教に由来する言葉
「後生大事」は、もともとは仏教からきた言葉です。来世を意味する「後生」が大事なのだから、そのために今、修行することが重要なのだと説いています。
仏教由来の「後生」という言葉は、現代の日常会話でもしばしば用いられます。人に頼みごとをするときの「後生だから～」という言い回しも、そのひとつです。
「頼みを聞いてくれたら、来世でいいことがありますよ」という意味で、「後生だから」は以下のように活用できます。
・後生だから、今回だけは見逃してください
・後生だから、どうぞ助けてやってください
ご‐しょう〔‐シヤウ〕
出典：小学館 デジタル大辞泉
１ 仏語。
（ア）死後に生まれ変わること。また、死後の世。来世。あの世。→今生（こんじょう） →前生（ぜんしょう）
（イ）死後極楽に生まれること。来世の安楽。極楽往生。「—を願う」
２ 他に哀願するときに用いる語。お願い。「—だから助けてください」
「後生大事」の使い方や例文
「後生大事」という四字熟語は、日常生活やビジネスシーンで活用できます。
気を付けたいのは、何かを非常に大切にすることを揶揄するニュアンスが含まれる場合もあること。シンプルに物を大切にする様子を褒めたつもりが、人によっては、からかわれたように受け取られてしまうかもしれません。
実際には、相手との関係性やシーンを見極めながら使用してください。
・実家の片付けをしていたら、子供のころの落書きがたくさん出てきて…。「こんなものまで後生大事にとっているなんて」と母に言ったけれど、実際には、なかなか捨てられないらしい
・周囲からは「古い雑誌ばかり、後生大事に保存してどうするの」と言われるが、自分にとっては仕事の大切な資料なのだ
・過去の栄光ばかり後生大事にしていても仕方がないよ。再び何かを手にするには、チャレンジ精神も必要だ
「後生大事」と意味の似た四字熟語
「後生大事」には、以下のような意味の似た四字熟語があります。
・巾箱之寵（きんそうのちょう）
・可惜身命（あたらしんみょう）
・掌中之珠（しょうちゅうのたま）
・唯一無二（ゆいいつむに）
・門外不出（もんがいふしゅつ）
シーンによっては、これらへの言い換えを検討してみるのもよいでしょう。正しく使い分けられるよう、それぞれの意味や使い方を確認していきます。
「巾箱之寵（きんそうのちょう）」
「巾箱之寵」とは、大切で手放すことができない物のたとえです。
「巾箱」は書物などを入れて身の回りに置いておく、布張りの小さな箱を指します。「寵」は、何かをかわいがったり気にしたりする様子を表す言葉です。
「後生大事」が物を大切にする様子を表すのに対し、「巾箱之寵」は、大切にする物自体を指しています。
日常会話では、自分や他者が非常に大切にしている物を意味する四字熟語として、以下のように使用してください。
・大好きな作家のサイン会へ行き、愛読書に名前を入れてもらった。今後は巾箱之寵として、バッグに入れて持ち歩きたいと思う
「可惜身命（あたらしんみょう）」
「可惜身命」が大切にするのは、人の体や命です。「可惜」には「このまま終わるのは惜しい」という意味があります。「身命」とは、体や命のことです。
「後生大事」も何かを非常に大切にする言葉ですが、「可惜身命」の場合は、その対象がより限定されます。
また「可惜身命」には対義語があり、仏道のために身も命も惜しまないことは「不惜身命（ふしゃくしんみょう）」と言い表します。
・会社の健康診断で日頃の暴飲暴食を指摘されてしまった。可惜身命、そろそろ自分の体も大切にしなくては
「掌中之珠（しょうちゅうのたま）」
自分が一番大事な宝物は「掌中之珠」と言い表せます。「掌中」は手のひらの中、「珠」は美しい宝石のことです。
宝石類でなくても、自分にとって大切なものであれば「掌中之珠」と表現できます。現代社会では、愛する家族や大切な存在に対して用いるケースが多い傾向にあります。
・母が言うには、父にとって私はいつまでたっても掌中之珠らしい
「唯一無二（ゆいいつむに）」
「唯一無二」とは、この世にただひとつしかないことです。
「唯一」と「無二」それぞれが、ほかに同類が存在しないことを意味します。同じニュアンスの言葉を重ね、意味を強調した四字熟語です。
「唯一無二の存在」や「唯一無二の品」などとすることで、ほかには代えが効かない、非常に貴重な物であることを示せます。
・彼女は小学校時代から交流がある、私にとって唯一無二の友人です
・今月入社した彼は、チーム内で唯一無二のスキルをもつ人材として一目置かれている
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「門外不出（もんがいふしゅつ）」
「門外不出」は、大切な品を厳重にしまい、他者に見せたり貸したりしないことです。
「後生大事」も物を非常に大切にすることですが、「門外不出」は大切であるがゆえに、一定の場所にしまい込んでおくという違いがあるといえます。
品物に価値や値打ちがあり、容易には他人へ見せられないことを表す四字熟語です。また、以下のように他者からの教えなどにも用いられます。
・社長の自宅の蔵には、門外不出といわれる家宝が眠っているらしい
・あのラーメン店のスープの作り方は、代々門外不出とされている
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「後生大事」とその他の言葉を正しく使い分けよう
何かを非常に大切にすることは、「後生大事」と言い表します。大切にする様子を揶揄するニュアンスが含まれるため、使用時は注意が必要です。
また、「後生大事」には「巾箱之寵」や「可惜身命」など、意味の似た四字熟語が多く挙げられます。
それぞれの意味を理解し、相手との関係性や状況に応じて、適切に使い分けましょう。
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