テレビのグルメ番組やお宝発見番組などで、「門外不出」という言葉を耳にしたことはありませんか? なんとなく意味はわかるものの、説明するのは難しい… という方も多いかもしれませんね。一体、「門外不出」とはどんなものを指すのでしょうか? そこで本記事では、「門外不出」の意味や使い方、類語となる四字熟語を解説します。
「門外不出」とは?
「門外不出」は、「もんがいふしゅつ」と読みます。意味を辞書で確認してみましょう。
貴重な芸術品などで、めったに他人に見せたり貸したりせず秘蔵すること。また、その物。「―の古文書」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
貴重な品物を、他人に公開せず秘蔵することを「門外不出」と言います。貴重な美術品などの高価なものや、歴史的に価値の大きいものに対して使われることが多いですね。公にさらすことをせず、自分のところで大事にしまっておくものといったイメージがあります。
言葉の意味を紐解いていくと、「門外」は、文字通り「門の外」。「不出」は、「外へ出さないこと」という意味があります。つまり、自分の家や管理している建物などの外へは出さないことを、「門外不出」と言うのです。
使い方を例文でチェック!
どのような場面で「門外不出」は使われるのでしょうか? よくあるパターンを3つ紹介します。
1:ある印象派の油絵は、門外不出の名画として知られている。
「門外不出」が使われるものとして一般的なのが、絵画や彫刻などの美術品です。美術品といえば、美術館などに行けば比較的容易に有名な作品も見られるものだと思いがちです。しかし、作品を展示するということは、盗難や破損の可能性も秘めているもの。そのようなリスクを避けるためにも、美術館の倉庫などで厳重に保管し、決して外へは出さないということもあり得るでしょう。
2:私の家に代々受け継がれている古文書や骨董品は、門外不出として蔵に全部しまってある。
骨董品や古文書などの歴史的資料などにも、「門外不出」が使われます。家系図の書かれた巻物や古い甲冑、人形などの骨董品が所狭しと蔵の中に置かれている様子がイメージできますね。一族の歴史や思い出にまつわるものであるため、親族以外の者に見せるのは躊躇われることも多いのかもしれませんね。
3:老舗醤油店秘伝の味の製法は、門外不出と言われている。
お店が長年大切に守ってきた味にも、「門外不出」が使われることも。例えば、職人が樽で大事に仕込んできた醤油や味噌、鰻屋のタレの味付けなどはお店秘伝の味と言えるでしょう。
現代では、作り方や工場内部を公開することで、お客さんを呼び込むお店がある一方で、昔からのやり方を頑なに守り続け、外部に情報をあまり出さないお店もあります。長年研究を重ねた味の製法を外部に漏らすのは御法度だという考えで、「門外不出」にしているお店もあるでしょう。
同じような意味を持つ四字熟語
「門外不出」と同じような意味合いを持つ四字熟語を、2つ見ていきましょう。
1:他言無用
ある話を他人に漏らしてはいけないということを、「他言無用(たごんむよう)」と言います。「他言」は、「他人に話すこと」。「無用」は、「してはいけないということ」で、「禁止」と同じような意味合いがあります。会社の機密情報や個人情報など、外部に知られてほしくない場合に、「この件は、他言無用でお願いします」などと表現します。
「門外不出」は主にもの、「他言無用」は情報に対して使われる点に違いはありますが、どちらも外部に持ち出さないということでは共通しているでしょう。
(例文)
・プレゼンが終わるまでは、この件は他言無用でお願いします。
・この資料に書かれている内容は、くれぐれも他言無用で。
2:一子相伝
「一子相伝(いっしそうでん)」の意味は、以下の通りです。
学問・技芸などの奥義・秘法を自分の子の中の一人だけに伝えること。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
自分の子1人だけに奥義を伝えることを、「一子相伝」と言います。「相伝」には、「代々伝えること」といった意味があります。歌舞伎や能などの技芸や学問などに用いられることが一般的です。教わったことは他の人には秘密にして、外部には漏らさないので、「門外不出」と似たような意味合いがありますね。
(例文)
・3代目は、一子相伝の技を受け継いでいる。
・その踊りの作法は一子相伝であるため、私は知りません。
その他、「所蔵」「秘蔵」などの類義語も
「門外不出」のように、自分のところにしまって保有することを意味する言葉に「所蔵」「秘蔵」「家蔵」があります。1つずつ意味をチェックしていきましょう。
1:所蔵
「所蔵(しょぞう)」の意味は、以下の通りです。
[名](スル)自分の所有物としてしまってあること。また、そのもの。「某美術館に―する名品」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
自分のものとして保存しておくことを「所蔵」と言います。資料館などで、ある人物の持ち物として「A氏所蔵の本」「〇〇美術館所蔵の絵画」などと記載されているのを目にする機会もあるでしょう。
ただし、「所蔵」はあくまでもどの機関が所有しているかを指す言葉。「門外不出」のように、誰にも見せたり触らせたりしないという意味は持っていません。
(例文)
・山田氏所蔵の本を見せていただくことになった。
・プラド美術館所蔵の名画に感嘆してしまった。
2:秘蔵
「秘蔵(ひぞう)」の意味は、以下の通りです。
[名](スル)《古くは「ひそう」》
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
1 人にはあまり見せずに大切にしまっておくこと。また、そのもの。「書画骨董を―する」
2 自分のもとから離さず、大切にかわいがり育てること。また、その人。「―の娘」
3 その道の奥義として外部には出さない事柄。
一般的によく用いられるのは1番の意味ですね。大事にしている骨董品などを「〇〇さん秘蔵の品」などと言ったりします。貴重で大切にしているものだからこそ、不用意に外に出したり、たくさんの人に見せたりしないということですね。
(例文)
・祖父は、秘蔵の刀を見せてくれた。
・その骨董品は秘蔵のものなので、簡単には見せてくれない。
3:家蔵
「家蔵(かぞう)」は、どのような意味でしょうか?
[名](スル)家のものとして所有していること。また、その物。「―の絵を出品する」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「家蔵」とは、「自分の家に所有しているもの」のこと。代々受け継がれてきた家具や書物など、一族にゆかりのある品物であることが特徴です。あくまでも、家のものとして所有していることを指す言葉なので、決して人には見せないなどの意味はありません。
(例文)
・佐藤家の家蔵の宝物を見せてもらった。
・家蔵の絵を出品することにした。
最後に
「門外不出」とは、「貴重な芸術品などで、めったに他人に見せたり貸したりせず秘蔵すること」。美術館で所蔵されている絵画や、飲食店の秘伝の味などに使われます。歴史的に価値があったり、一族の思い出の品だからこそ簡単に外部には見せたくないなどが、「門外不出」になる理由として考えられます。
同じような意味を持つ「秘蔵」や「家蔵」なども合わせて覚えてみてはいかがでしょうか?
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