後生の意味とは?
「後生だから許して…」ってセリフ、映画や小説で一度は見聞きしたことがあるのでは?
前後の文脈や話の流れから、なんとなくわかったつもりになっている、「後生」という言葉。正確には、どのような意味を持っているのでしょうか?
「後生」と書いて「ごしょう」と読みます。
後生とは仏教用語で、大きく2つの意味を持っています。1つ目の意味は、「死後に生まれ変わること」。つまり、「来世」のことですね。特に、「死後極楽に生まれること」を限定して使われることもありますよ。
2つ目の意味は、「お願い」と哀願する時に使われます。冒頭でもご紹介した「後生だから許して…」というセリフなどのように、「後生」のイメージとしてはこちらが強いのではないでしょうか?
ちなみに、「後生」を「こうせい」と読む場合は、異なる意味を持ちます。「あとから生まれてくる人」、「あとから学ぶ人、後輩」という意味になりますよ。あわせて覚えておきたいですね。
後生の由来とは?
先述したように、「後生」は「死後の生」を意味する仏教用語です。死後の極楽往生を願う、言葉本来の意味から転じて、近世以降は「おりいって頼む時などに哀願する」という意味で用いられるようになりました。
ちなみに、現在の生を今生(こんじょう)、生まれる前の生を「前生(ぜんしょう)」、「前世(ぜんせ)」と言います。
後生の使い方を例文でチェック
1:「後生だから、これ以上私を苦しめないでほしい…」
「後生だから」は「お願いだから」という意味です。ただのお願いというよりも、相手の同情心に訴え、切に願いを頼む意味が強調されます。他にも、「後生だから、今回のことは見逃してほしい」などというように使うことができますよ。
2:「母は、私が子どもの頃にプレゼントした手紙を今も後生大事に保管している」
ここで使われている「後生大事」とは、四字熟語で「物事を大切にすること」を意味しています。例文では物を大切にしている様子を表していますが、「彼女は、母親の教えを後生大事に守っている」というように物以外にも使うことができますよ。
「後生大事」には、この他にも「来世の安楽を一途に願うこと」という意味もあります。
3:「後生一生のお願いだから、俺と結婚してほしい」
「後生一生」とは、「現世・来世を通じてただ1回だけのこと」を表します。一生に一度のお願いをしたい時などに使われますよ。プロポーズの場合は、本当に後生一生なのかどうか、しっかりと見極めてから返事をしたいですね。
後生の類語は?
「後生」が意味する「死後に生まれ変わること」の類語と、「哀願すること」の類語をそれぞれご紹介していきます。
来世
「来世」とは、死後、生まれ変わって住む世のことです。「来世」とは、未来世の略語なんですよ。ご存知でしたか? 「死後に生まれ変わること」を意味する「後生」の類語となります。「来世も、夫婦になろう」などというように使うことができますね。
一生のお願い
生きている間に一度しかないような重要な願い事をする時に、使われます。とはいえ、「一生のお願い」をもう何度も使っている方もいらっしゃるかもしれないですね。「後生だから」とお願いするよりも、今はこちらの言葉の方が広く使われているのではないでしょうか。
特に子どもは、「一生のお願い」をよく使うかもしれませんね。「甥っ子は私に会うたびに、“一生のお願いだから、おもちゃを買って”と言ってくる…」などというように使います。
そこをなんとか
どうにか懇願したいという時に、使用します。「そこをなんとかお願いします」を略した言葉です。「時間がないのはわかっていますが、そこをなんとかご対応をお願いします」というように使います。
後生の対義語は?
続いて、「後生」が持つ2つの意味とは、反対の意味を持つ言葉をご紹介しましょう。
前世
前世とは、この世に生まれてくる前の世のこと。過去世とも言います。来世を指す「後生」とは、反対の意味となりますね。「前世でどんな善行を積んだら、彼女のような美人に生まれてこられるんだろう…」というように使います。
独立
「独立」の意味は、「他から援助を受けないで、自分だけの力でやっていくこと」。他者を頼りにする「後生」とは対義語に当たります。「彼は大企業を辞めて、独立した」などというように、使うことができますね。
自立
「自立」の意味は、「他の助けなしに自分1人の力だけで物事を行うこと」。上記で紹介した「独立」の類語に当たり、「後生」の対義語となります。「彼女は、小さい頃から自立していた」などというように使うことができますよ。
最後に
「後生」について解説してきましたが、いかがでしたでしょうか? 「後生だから…」と聞くとどこか時代がかった感じもしますが、仏教用語が由来だというのは、意外だったかもしれませんね。
例文にも出てきた「後生一生のお願い」は、一生に一度だからこそ、相手も真剣に受け止め、考えてくれるもの。濫用はせずに、「ここぞ!」というお願いをする時に使ってみてくださいね。
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