目次Contents
この記事のサマリー
・「慎む」は主に自分への自制、「謹む」は相手への敬意を表します。
・改まった挨拶やお詫びでは「謹む」が適切です。
・類語には、「謹慎」や「自粛」、「差し控える」、「畏まる」などがあります。
メールや文書で「つつしんで申し上げます」と伝えたいとき、「慎む」と「謹む」のどちらを使えばいいか、気になったことはありませんか?
どちらも「控えめな態度」を連想させる言葉ですが、使い方には違いがあります。
この記事では、2つの語の違いをわかりやすく整理します。敬語の使い分けに自信が持てるよう、例文や注意点も一緒に確認していきましょう。
「慎む」と「謹む」の違いとは? それぞれの意味を整理
まずは、辞書の定義をもとに「慎む」の基本的な意味を整理しましょう。
読み方と意味を確認
「慎む」と「謹む」は、どちらも「つつしむ」と読みます。どちらも「度をすぎないように、控えめにする」という意味がありますよ。同じ読み方ですが、意味や使いどころが異なる点があります。
辞書では次のように説明されています。
つつし・む【慎む/謹む】
[動マ五(四)]
1 あやまちや軽はずみなことがないように気をつける。慎重に事をなす。「行動を―・む」「言葉を―・みなさい」
2 度をすごさないようにする。控えめにする。節制する。「酒を―・む」「暴飲暴食を―・む」
3 (「謹む」と書く)うやうやしくかしこまる。「―・んで御礼申し上げます」→謹んで
「君達(きんだち)さへ余り―・み給て、今は目も見せ給はねば」〈狭衣・四〉
4 物忌みする。斎戒する。
「ながき物忌みにうちつづき、著座といふわざしては―・みければ」〈かげろふ・下〉
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
「謹む」を使うケース
基本的にどちらの漢字を使っても問題ないですが、「うやうやしくかしこまる」ときは、「謹む」と書きます。「謹む」には、相手への尊敬を口数や勝手な行動を少なくすることで表す意味があります。挨拶やお詫び、弔意を表す文でよく用いられますよ。
(例)
「謹んでお悔やみ申し上げます」
「謹んで新年のご挨拶を申し上げます」
「謹んでお受けいたします」
「慎む」を使うケースは?
「慎む」は、過ちを犯さないよう気をつけ、出過ぎないようにする意味があります。特に世間一般に対して、漠然と自分自身を誤らないようにするケースで使われます。
参考:『使い方の分かる 類語例解辞典』(小学館)

例文で使い方を確認
ここでは、「慎む」と「謹む」の違いがわかりやすく見えるよう、例文を5つ紹介します。
最近は体調を崩しやすいため、外出はできるだけ慎んでいる。
この場合の「慎む」は、自分の行動を控えめにするという意味です。健康や状況を考えて「度を過ぎないようにする」ニュアンスで使われています。
医師からの指示もあり、しばらくお酒を慎むことにした。
「暴飲暴食を控える」「節制する」といった文脈では「慎む」が適切です。生活態度や習慣を見直す意味で使われています。
謹んで新年のご挨拶を申し上げます。
「謹んで〜申し上げます」は、定型的なフレーズとしてよく使われます。相手に対してへりくだり、礼を尽くす姿勢を表すため、この場合は「謹む」を使いましょう。
このたびの不手際につきまして、謹んでお詫び申し上げます。
謝罪の場面では、改まった態度・敬意を示す必要があるため、「謹む」が適切です。
公の場では、誤解を招かないよう発言を慎む必要がある。
この「慎む」は、軽率な言動を避けるという意味。相手に頭を下げるニュアンスではなく、「自制」「注意」を表しています。
類語との違い
「慎む」「謹む」と似た意味を持つ言葉には、「謹慎」や「自粛」、「差し控える」、「畏まる」などがあります。それぞれ詳しく見ていききましょう。

「謹慎(きんしん)」
「謹慎」は、「言動を控えめにすること」を意味します。このほか、一定期間、出勤や登校などを差し止める処罰としての意味もあります。多くの場合、反省や処分としての意味で使うことが多いでしょう。
例:「不適切な発言により、当面のあいだ謹慎処分となった」
「自粛(じしゅく)」
「自粛」は、自分の判断で行いや態度を慎むことを意味します。
例:「台風接近のため、イベントは自粛します」
「差し控える」
「差し控える」は何かをすることを遠慮したり、状況に応じてやめておいたりするときに使います。
例:「この件に関するコメントは差し控えさせていただきます」
「畏まる(かしこまる)」
「畏まる」は、尊敬の気持ちを言葉や態度に表す意味になります。
例:「畏まって挨拶する」
英語ではどう表現する?
「慎む」「謹む」というニュアンスを英語で伝えたいときには、文脈に合った丁寧な言い回しを選ぶことがポイントです。
“refrain”(控える、慎む)
“refrain”は、何かを「控える」「慎む」という意味の動詞で、注意喚起の文脈で使うことが多い語です。
例文:
“Please refrain from speaking during the performance.”
(上演中の会話はお慎みください。)
“He refrained from commenting on the matter.”
(彼はその件についての発言を控えました。)
参考:『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)
“humbly”(謹んで)
“humbly”は、「謙虚に」という意味を持つ副詞です。「謹む」の意に対応する英語表現のひとつです。
例文
“I humbly offer my condolences. ”
(謹んでお悔やみ申し上げます。)
参考:『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)

「慎む」と「謹む」に関するFAQ
ここでは、「慎む」と「謹む」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「謹む」は通常のメールで使っても大丈夫ですか?
A. 問題ありません。
Q2. ビジネスメールで「慎んでお願い申し上げます」と書いてもいいですか?
A. 「うやうやしくかしこまる」ときは、「謹んで」を使います。ですから、「謹んでお願い申し上げます」とした方がいいでしょう。
Q3. 「慎む」にはどんな意味がありますか?
A. 「慎む」は、過ちを犯さないよう気をつけ、出過ぎないようにする意味があります。特に世間一般に対して、漠然と自分自身を誤らないようにするケースで使われますよ。
最後に
「慎む」と「謹む」は、どちらも行動を控える気持ちを表す言葉ですが、使いどころやニュアンスには違いがあります。「慎む」は自分の感情や行動を制御する場面で、「謹む」は相手への敬意や改まった心持ちを伝える場面で使うのが基本です。
メールや挨拶文など、言葉選びが印象を左右する場面では、こうした違いを意識することで、より丁寧で自然な文章が書けるようになります。「どちらが正しいか」ではなく、「どの気持ちを届けたいか」を軸に言葉を選ぶことが、思いやりのある表現につながっていくでしょう。
TOP画像/(c)Shutterstock.com



