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「慎む」と「謹む」は何が違う?
冠婚葬祭やビジネスシーンでよく見かける「慎む」と「謹む」。この2つをどのように使い分けるのか、実はよく知らないという人もいるでしょう。メールや書面を作成する際、どちらの言葉を使えばいいかわからず、迷うことはありませんか?
「慎む」と「謹む」は、「つつしむ」という読み方は同じでも、意味や使い方は異なります。まずはそれぞれの意味を大まかに解説しますね。
「慎む」と「謹む」の大まかな意味とは?
「慎む」と「謹む」はどのような意味を持つのか、辞書で見てみましょう。
▷【慎む】
1:あやまちや軽はずみなことがないように気をつける。慎重に事をなす。
2:度をすごさないようにする。控えめにする。節制する。
▷【謹む】
うやうやしくかしこまる。
いずれも《デジタル大辞泉》©SHOGAKUKAN Inc.より引用
上記から「慎む」は失敗しないために言動に注意すること、「謹む」は相手を尊重することなのが読み取れます。読み方は同じですが、意味はかなり違うことがわかりますね。
また、「慎む」には、「物忌みする。斎戒する」という意味もあります。これは、神事などのため、ある期間、飲食・言行などを慎み、沐浴をするなどして、心身のけがれを除くこと。『源氏物語』などの平安文学によく登場する言葉として知られています。
「慎む」について、さらに解説
「慎む」について、もう少し詳しく見ていきましょう。「慎む」の使い方についても解説します。
「慎む」とは、言動を自重すること
「慎む」には、2つの意味があります。一つ目は、失敗しないように言動に注意すること。もう一つは、限度を超えないよう、生活や態度を控えめにするという意味です。
自分だけでなく、他者に対しても使いますが、その場合は相手に注意を促す意味合いが強くなります。
「慎む」はどう使う?
「慎む」はどのように使うのか、例文から見ていきましょう。「慎む」が持つ2つの意味別に、使い方を解説します。
<慎む:言動に注意する>
・観劇するときは、私語を慎むように注意した
・今朝、先生に言動を注意されたので、しばらくは行動を慎むことにした
・些細な言葉で相手を怒らせることがあるので、言葉を慎むことを意識する
<慎む:生活や態度を控えめにする>
・健康診断の結果が良くなく、飲酒を慎むことを医師に勧められた
・食べ過ぎることを慎むようにすれば、健康的に痩せることができる
・顔色が優れないため、徹夜を慎み、生活習慣を整えるよう指導した
「慎む」には、「やり過ぎない」「抑える」のようなニュアンスがあるのがわかりますね。また、「慎む」は、言動に関連する意味合いがほとんどです。
「謹む」について、さらに解説
「謹む」についてもチェックしましょう。「謹む」の意味は1つです。
「謹む」とは、相手に敬意を示すこと
かしこまり、相手への敬意を示すことを指す「謹む」は、相手に向けて使う言葉です。「謹む」は、「謹んで」のように使われることが多く、年賀状や冠婚葬祭、お礼状などのフォーマルな書面にもよく用いられます。
「謹む」の使い方
「謹む」の例文もチェックしましょう。
<謹む>
・お申し出を謹んでお受けいたします
・新年のお慶びを謹んで申し上げます
・お父様の件につきまして、謹んでお悔やみ申し上げます
・この度の不祥事を謹んでお詫び申し上げます
上記から、いずれも相手に向けて「謹んで」を使っていることがわかりますね。また、相手に敬意を払う表現であることから、ビジネスシーンでは、契約時のやり取りや、お詫びやお礼が必要な場面でよく使います。
「慎む」と「謹む」の両方で構成される「謹慎」について
「慎む」と「謹む」は異なる意味を持ちますが、この2つの漢字で構成される言葉に「謹慎」があります。「謹慎」が何を意味する言葉なのか、今一度チェックしていきましょう。
▷きん‐しん【謹慎】
1:言動をひかえめにすること。また、そのさま。
2:一定期間、出勤や登校などを差し止める処罰。
3:江戸時代、上級の武士に適用された名目上の刑で、門戸を閉じて昼間の出入りを禁じたもの。慎(つつしみ)。
《デジタル大辞典》©SHOGAKUKAN Inc.より引用
上記から、「謹慎」は「慎む」に似た意味を持つことがわかります。「慎む」との違いは、「慎む」は自重の意味合いが強いのに対し、「謹慎」はすでに何かしらの行動を起こし、それが良くなかったため償うという意味合いです。
「謹んでお詫び申し上げます」を言い換えるには?
言葉選びを間違えたくないシーンの一つに「お詫びをする時」がありますよね。ビジネスシーンでもその機会はよくあると思います。
「謹んでお詫び申し上げます」は、とてもよく使われる言葉ですが、状況によっては、この言葉が適さないことも。お詫びの際に困ることがないよう、言い換えの表現についても知っておくことをおすすめします。
ここからは、「謹んでお詫び申し上げます」の言い換え表現を紹介します。適切に言葉を選ぶことで、より明確に誠意を伝えられるかもしれません。ぜひ参考にしてくださいね。
お詫びをする際に知っておきたい表現
■「大変申し訳ございませんでした」
お詫びのシーンでもっともよく使われる表現と言ってもいいでしょう。相手に対して、申し訳なく思っていることを丁寧に表現しています。「謹んでお詫び申し上げます」の言い換えにも適していますね。
■「深くお詫び申し上げます」
「謹んでお詫び申し上げます」は、少し硬い表現と受け取る人もいます。謝罪をきちんとしたいけれど、柔らかめに伝えたい場合は、この表現が適するかもしれません。「深くお詫び申し上げます」は、謝罪の意を強調した表現ですので、ストレートにお詫びの気持ちを相手に伝えられるでしょう。
■「重ねてお詫び申し上げます」
一度のお詫びでは足りないという場合、「重ねてお詫び申し上げます」を使うといいですね。すでにお詫びを申し上げているけれど、その上に重ねてお詫びを伝えるという意味になります。初めにお詫びを伝え、結びに再度お詫びを伝えたい時に、この言葉を使うのが一般的です。
■「陳謝いたします」
「陳謝」とは、事情を述べてお詫びするという意味。丁重な表現として有名ですね。この言葉を使う場合は、「ご不便をおかけしたことにつきまして陳謝いたします」のように、お詫びの理由を付け加えます。
最後に
「慎んで」と「謹んで」は、同じ読み方ですが、意味はかなり異なります。自重するという意味合いになる「慎んで」と、相手を尊重する意味合いがある「謹んで」は、使い方を誤ると意味が伝わらないということも。「慎んでお詫び申し上げます」と使われがちですが、この場合は「謹んでお詫び申し上げます」が正しいので、注意してくださいね。
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