オワハラとは?
「オワハラ」という言葉を聞いたことがありますか?
就職活動や転職活動の際、実際にオワハラをされたという方も、いらっしゃるかもしれませんね。また、「何かのハラスメントだと思うけれど、具体的にどんなもの?」と疑問に思われる方もいらっしゃるのではないでしょうか。
この記事ではオワハラの概要や、オワハラをされた時の対処法を解説します。自分の身を守るために、おさえておきたいテーマですね。
「オワハラ」とは、企業が就活生に対して、就職活動を無理やり終わらせようと強要するハラスメントのことです。例えば、ある学生に内定を出した企業の例で考えてみましょう。企業がその学生に対し、ほかの会社を辞退させる、無理やり内定承諾書を書かせるというようなケースは、典型的なオワハラです。
さらに悪質なケースでは、面接中に「今ここで他社の選考を辞退しなさい」と言って、電話をかけさせるという強引なものも。
また、内定承諾書をその場で書かせた後に「もし入社しなければ、損害賠償を請求する」などと脅すケースもあるようです。こういったあまりにも強引なケースは、脅迫罪や強要罪にあたることも。
このような問題に対し、令和3年4月30日には厚生労働省が、「若者雇用促進法に基づく事業主等指針」を改正しました。厚生労働省は、他社の内定辞退を強要することや、他の会社への就職活動をやめるように強制する行為は、不適切なものだとして、企業へ注意喚起しています。
しかし残念ながら、オワハラはまだまだ無くなっているとは言えません。それは一体なぜなのでしょうか?
ここからは、違法になることがあるにも関わらず、なぜオワハラが無くなっていないかについても、解説します。
オワハラはなぜ無くならない?
オワハラは問題視されているにも関わらず、まだまだ無くなっていないのが実態のようです。
新卒採用の場合、優秀な人材を確保したい中小企業などが、大企業の選考が始まる前に人材を囲い込もうとして、オワハラになってしまうケースも。
また、中途採用の場合にもオワハラはあるようですね。大きな要因の一つは、近年多くの企業が、人材確保に悩んでいることが挙げられます。
業界によっては、人手不足が年々深刻になってきていると、耳にする機会があるのではないでしょうか? こうした中、人手を急いで確保したいという焦りがある会社もあるのでしょう。特に優秀な人であれば、なんとか入社してほしいと思うもの。その結果、オワハラにつながってしまうことがあるようです。
オワハラへの対処法は?
ここからは、オワハラをされた時に、どのように対応すればいいかについても見ていきましょう。
1:返答の言葉を用意しておく
採用担当者は、就活をしている側に比べて、経験が豊富なことがほとんど。そのため、オワハラに全く準備無しで対応しようとすると、かなり不利と言わざるを得ません。
また、心の準備が無いとパニックになってしまい、冷静な判断ができなくなってしまうこともあるでしょう。「あの時、もう少し冷静になっていればよかったのに」と、後悔してしまうことは避けたいですよね。
そのためには、会社がオワハラをしてきた時の返答を、ある程度準備しておくのがおすすめです。例えば、典型的なオワハラは、その場で他社の辞退をするように迫るというパターン。こういった場合に備えて、「恐れ入りますが、しっかりと納得した上で決めたいと思っておりますので、現時点では辞退は致しかねます」というように、お断りの台詞を準備しておきましょう。
「言うことを聞かないと、内定を取り消されてしまうのでは」と思う方も、いらっしゃるかもしれませんね。実際に、「迷いがあるやつはいらない!」と言って内定を取り消すなど、高圧的に対応してくる事例もあるようです。
しかし、そのような会社に入社した後は、一体どうなるでしょうか? 入社後も、パワハラなどに発展することは容易に想像できますよね。ご自身のキャリアのためにも、長期的な視点で考えてみるのが良いのではないでしょうか?
2:労働局へ相談する
あまりにも強引なケースは、行政機関への相談も考えてみましょう。
各都道府県の労働局には、就職活動中のハラスメントの相談に対応してくれる部署があります。また、学生の場合は、所属の学校のキャリアセンターなどに相談するのも手でしょう。
特に「辞退したら損害賠償を請求する」などと脅してくる場合は、かなり不安になってしまうのではないでしょうか? また、「内定承諾書を書いたのだから、解約はできない」などと言って、追い込むケースもあるようです。
ですが、こうした脅しに屈する必要はありません。企業が脅しなどの手段を使って、労働者の意思に反して働くことを強制することは、労働基準法でも禁じられています。一人で抱え込まずに、信頼のおける機関へ相談してみてくださいね。
3:辞退も検討する
最終手段としては、内定辞退も考慮してみましょう。前述の通り、オワハラをする会社は、入社したあとも、パワハラや過重労働などの問題が発生する可能性があります。短期的に見ると、「せっかく内定をもらえたのだから」と考えてしまいがちですが、長い目で見ると、働きやすい環境とは考えにくいでしょう。
ただし、直前に音信不通になるなどのやり方で辞退をすれば、入社の準備をしていた会社に損害を与えてしまいかねません。入社する気がない場合は、あらかじめ会社へ連絡を入れましょう。
なお、民法では、期間の定めがない雇用契約は、解約を申し入れてから2週間経つと終了するとされています。2週間前でないと絶対に解約できないということではありませんが、会社への影響も考慮すると期間に余裕をもっておくのが望ましいでしょう。
思い込みにも注意
ここまでは、オワハラの概要や例を見てきました。ですが、中には「オワハラされた」と過剰反応してしまっていることもあるようです。例えば、他社の選考状況や、会社の志望度を聞かれただけでは、オワハラとは言い切れません。会社はそんな気が全くないのに「これってオワハラですよね?」などと、大騒ぎしてしまう人もいるようです。
こうなってしまうと、「この人を入社させたら、後々大変そうだな」という印象になってしまうのも、無理はありませんよね。結果的に、せっかく上手くいっていた就活を、自分で棒に振ってしまうこともあり得ます。過度に被害者意識を持ってしまうことには、注意したいところですね。
最後に
この記事では、オワハラの概要や背景、オワハラにあった時の対処法を解説しました。職業選択は自由に行うことができるものです。オワハラに負けて、望まない就職をしてしまうと、今後のキャリアや人生にも影響は大きいでしょう。自分や大切な人のために、おさえておくと安心ですね。
TOP画像/(c)Shutterstock.com
塚原社会保険労務士事務所代表 塚原美彩(つかはら・みさ)
行政機関にて健康保険や厚生年金、労働基準法に関する業務を経験。2016年社会保険労務士資格を取得後、企業の人事労務コンサル、ポジティブ心理学をベースとした研修講師として活動中。趣味は日本酒酒蔵巡り。ライター所属:京都メディアライン