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2022.12.13

出向とは? 出向のメリットや給与の扱いも解説【社会保険労務士監修】

出向は、働いている会社とは別の会社で、一時的に働くことを指す言葉。大きく分けて、在籍型と移籍型という二種類があります。新型コロナの影響で注目が高まった制度ですので、聞いたことがあるという方も多いかもしれませんね。この記事では、出向の概要、メリットや給与の扱いについて解説します。

「出向」という言葉を、どこかで見聞きしたことはありますか? 会社で、「来年から関連会社に出向する」などの話を聞いたことがあるという方も、いらっしゃるかもしれませんね。

では、出向とは、具体的にどのようなものなのでしょうか? また、出向のメリットや、給与がどうなるかも気になる点ですよね。

この記事では、出向の概要、メリットや給与の扱いなどを解説します。今後のキャリアにも関わる内容ですので、おさえておきたいキーワードですね。

出向とは

出向とは、どのようなものなのでしょうか?

出向は、働いている会社とは別の会社で、一時的に働くことを指す言葉です。転職とは異なり、あくまで一時的なものですので、元の会社に戻る前提での働き方と言えるでしょう。

出向の際は、会社間で「出向契約」というものを結びます。例えば、A社に勤務している社員が、B社へ出向するという場合、A社とB社の間で「出向契約書」を交わすというイメージですね。

一般的に、子会社や関連会社への出向というケースが多いため、大企業特有の制度という印象をお持ちの方も多いのはでないでしょうか? ですが、実は出向は、大企業だけのものではなく、企業規模を問いません。

さらに、出向先は関連会社である必要がないことも、ご存知でしょうか?

極端な話をすると、全く異なる業界の会社への出向もあり得る、ということですね。実際に、新型コロナウイルスの流行によって、事業の縮小を余儀なくされた航空会社が、人手の足りない病院との間で、出向契約を結んだ事例もあるようです。

また、出向には、大きく分けて「在籍型出向」と、「移籍型出向」という二つの種類がありますので、それぞれの特徴を、一緒に見ていきましょう。

1:在籍型出向

在籍型出向は、出向元の企業との労働契約を維持したまま、他社で仕事をすること。出向元に籍が残ることが特徴ですね。なお、出向元企業と、出向先企業の両方で労働契約を結ぶのが一般的です。

派遣と似ていると感じる方も、いらっしゃるかもしれませんね。ですが、派遣の場合、派遣先企業と派遣労働者の間で労働契約は結びません。派遣元の会社と労働者の間だけで労働契約を結ぶという点が、派遣労働の特徴です。

他社へ行って仕事をするところが、派遣と出向は似ていますよね。しかし、契約の形態では、このような違いがあります。

デスクで握手する手
(c)Shutterstock.com

2:移籍型出向

移籍型出向は、出向元企業との労働契約を一度解消し、出向先で新しく労働契約を結ぶという形態です。出向元企業を退職し、出向先に入社するというイメージですね。こう聞くと、「それって転職では?」と思うのではないでしょうか?

転職との違いは、出向元と出向先の間に「出向契約」が結ばれること。

例えば、出向元A社から、出向先B社へ移籍型出向を行う際、労働者はA社を一度退職することになりますよね。この時、A社とB社の間で「この人は1年間、B社へ出向します」というような契約を結びます。

また、出向の契約期間を過ぎた場合、労働者はA社に籍が戻ることが一般的。この点で、転職とは異なると言えるでしょう。

出向後の給与はどうなる?

出向後の給与がどうなるのかも、気になるところですよね。特に、給与が上がるならまだしも、下がるのではないかと心配される方も、多いのではないでしょうか?

出向の給与額や、支払い方法は様々です。出向先と出向元の契約次第と言えるでしょう。

出向元が全額給与を支払うこともあれば、逆に出向先が支払うというケースもあります。また、双方で折半するケースも。前述の移籍型か在籍型かでも違いがあるため、一概には言えません。

なお、厚生労働省の「在籍型出向基本がわかるハンドブック」によれば、在籍型出向の給与の支払い方として、以下の二つが解説されています。

・出向先が、出向労働者へ直接給与を支払う
・出向先が、出向元へ「給与負担金」を支払い、出向元企業が出向労働者へ給与を支払う

また、出向先の給与額が出向元より低い場合、差額を出向元が補填するというケースも多いようです。もちろん、契約の内容にもよりますが、出向によって大幅に給与が下がるということは、少ないと言えるでしょう。

お金を持つ手のまわりに集まる人々
(c)Shutterstock.com

出向のメリットは?

出向には、どんなメリットがあるのでしょうか? ここでは、出向で得られるメリットとして、代表的なものをピックアップして解説します。

1:雇用の維持

出向には、雇用を維持しやすくするというメリットがあります。

例えば、新型コロナウイルスの影響で、休業せざるを得ない状況の会社で考えてみましょう。通常、こんな状況が続けば、人件費の負担が、会社に重くのしかかりますよね。会社によっては、リストラを余儀なくされることも。

ですが、人手が足りていない企業へ、従業員を出向させることで、こういった局面を乗り切ることが可能になります。働く人からしても、仕事を失ってしまうことを防げますよね。

人手が足りない会社からしても、自社で採用活動をするよりも、他社から出向で来てもらった方が助かるということもあるようです。

また、一度解雇した従業員を呼び戻すのは、かなり難しいですよね。その点、出向なら、出向期間が終われば、出向元に従業員が戻ってきます。休業期間が終わった後などに、スムーズに事業を再開しやすいというメリットもあるのです。

2:スキルアップや人脈形成

出向によって、他社で経験が積めるということも、メリットと言えるのではないでしょうか。出向先で多様な経験を積むことで、新しいスキルが身につけられたという声もあるようです。

また、人脈が広がるという点でメリットを感じる人も。一つの会社だけで働いていると、人間関係の幅が狭くなってしまいがちではないでしょうか。異業種交流会など、プライベートで人脈を増やすと言っても、限られた時間の中では、限界がありますよね。結局、名刺交換で終わってしまったなんてことも、あるかもしれません。

出向の場合、他社の人たちと一定期間一緒に働きますので、人脈は広がりやすいですよね。また、会社からしても、幅広い人脈とノウハウを持った人材は貴重です。こういった点も、出向のメリットと言えるでしょう。

人々のつながり
(c)Shutterstock.com

最後に

この記事では、出向の概要やメリット、給与の扱いについて解説しました。これまでなんとなく、大企業特有の制度というイメージをお持ちだった方も、多いかもしれません。ですが、最近では、企業規模を問わず注目されている制度ですので、おさえておくと安心ですね。

TOP画像/(c)Shutterstock.com

塚原美彩

開業社会保険労務士 塚原美彩(つかはら・みさ)

2016年社会保険労務士資格を取得。趣味は日本酒酒蔵巡り。現在は独立開業し、企業の人事労務コンサル、ポジティブ心理学をベースとした研修講師として活動中。
所属:京都メディアライン

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