「働かないおじさん」という言葉を、どこかで聞いたことはありますか? 思い当たる人が身近にいるという方も、いらっしゃるかもしれませんね。
こういった人に対し、同僚だけでなく、会社も頭を抱えていることが、少なくありません。
この記事では、「働かないおじさん問題」の概要や働かないおじさんの特徴、そして働かないおじさんに対する対処法を解説します。職場にこのような人がいて困っている時、参考にしてみてくださいね。
働かないおじさん問題とは
「働かないおじさん」は、なぜ問題視されているのでしょうか?
もちろん、どの年代・性別でも、働く意欲が低い人はいるものですよね。また、「おじさん=働かない」という偏見は、適切ではないでしょう。
ではなぜ、「働かないおじさん」という言葉が、特に注目されているのでしょうか?
その第一の理由は、「人件費の高さ」と言われています。日本では、ある程度年齢に応じて、賃金額が上がっていく仕組みになっていることが多いですよね。また、平均的に見ると、男性の方が所得が高いということも、問題の一因になっている可能性があります。
「なぜあの人が、自分より良い賃金をもらっているの?」と、納得がいかない人が多いのかもしれません。景気の低迷や、社会が急速に変化していく中、「働かないのに賃金が高い人」を、企業も抱えきれなくなってきています。
また、人手が不足しがちな業界では、働かないおじさんのような存在によって、一部のメンバーに過度に負荷がかかってしまうことも。結果的に、体調やメンタルバランスを崩してしまう人もいるようです。さらに、若手もモチベーションが下がってしまうなど、複数の問題に発展することもあるでしょう。
このような「働かないおじさん問題」の背景には、日本の法律上、そう簡単に解雇ができないという要因もあると言われています。日本では、よほどのことがなければ、解雇は認められません。解雇された社員が、裁判で争い、解雇が無効になる事例も少なくないのです。
もちろん、簡単に解雇されてしまう世の中が、理想的とは言えませんよね。ですが、解雇が難しいということは、働かない人が会社に残りやすいという弊害もあると言えるでしょう。
働かないおじさんの特徴
働かないおじさんの特徴は、どのようなものがあるのでしょうか? もちろん個人差はありますが、ここでは、代表的なものを解説します。
1:仕事をしているふりをする
働かないおじさんには、仕事をしているふりをするというケースが多いようです。
忙しく見せることで、なるべく仕事を振られないようにすることも。俗に言う、「やっているアピール」をする傾向があると言えるでしょう。
2:自分さえよければいいと思っている
やることがあまりないにも関わらず、自分から動こうとしないというのも、働かないおじさんによくある特徴です。
働かないおじさんの中には、周りがどんなに忙しそうにしていても、全く動く気がない人も。自分さえよければいいという、自己中心的な発想をする人が多いようです。
3:「逃げ切る」という発想をしている
「定年まで逃げ切る」という発想をすることも、働かないおじさんの特徴です。
年代的に、定年まで残りわずかという場合、「仕事をしなくても、定年を迎えて退職金をもらえるだろう」という考えを持っていることも。こういった計算高い側面も、働かないおじさんの代表的な特徴と言えそうです。
働かないおじさんへの対処法は?
働かないおじさんには、どのように対処したら良いのでしょうか?
多くの業界で、人手不足と言われている昨今。一人の業務量や、負荷が昔より増えている職場も多いでしょう。そんな中、働かない人が一人でもいると、周りへの負担がさらに増えてしまいますよね。
「トリセツや対処法があるなら、教えてほしい」という方も、いらっしゃるのではないでしょうか?
ここからは、働かないおじさんへの対処法を解説します。
1:やらざるを得ない環境を作る
働かないおじさん問題への対処法として、まずできることは、「やらざるを得ない環境作り」です。
個人的に「やってください」と言っても、スルーされてしまう可能性が高いですよね。上司や同僚、人事部などと相談の上、複数人で環境作りを進めていきましょう。
特に、「やっているふり」では済まされないような状態を、みんなで目指していくことがポイント。そのためには、まず業務の分担表を作成することがお勧めです。分担表に、担当者名を記入することで、担当業務を明確にしていきましょう。
ただし、それだけでは足りないこともありますよね。合わせて、定期的にミーティングなどで、進捗や、実施状況を確認することも、考えてみるといいでしょう。
また、これでもなお仕事をしてくれない場合、業務報告書を毎日提出してもらうようにしたところ、改善したというケースもあるようです。ただ、これは上司や他の職員への負担も大きいため、最終手段として考えてみてくださいね。
2:あえて相談や質問をする
働かないおじさんに対し、あえて何か相談や質問、雑談などをしてみることで、良い変化がある可能性もあります。
少し意外に思われる方もいるかもしれませんね。ですが、働かないおじさんの中には、以前はやる気に満ち溢れていたという人も、一定数いるのです。それが、何かをきっかけとして、モチベーションを失ってしまったという人も。
「長年会社に尽くしてきたのに、報われない。これ以上がんばっても、仕方がない」という思いを抱えていることも、考えられるでしょう。また、結果的に周囲から孤立して、悪循環に陥ってしまっていることもあります。
もちろん、これは同僚に迷惑をかけていい理由にはなりませんよね。ですが、こういった一種の悲しみ、無力感というものは、長年働いていると、感じてしまうタイミングがあるかもしれません。
そういった痛みに少しだけ心を寄せて接すると、良い変化が起きる可能性があります。実際に、同僚から相談や質問、雑談などを、積極的に投げかけられたことで、だんだんと活力を取り戻せたという人も、いるようですよ。
最後に
この記事では、「働かないおじさん問題」の概要、働かないおじさんの特徴や、対処法を解説しました。職場にこんな人がいて悩んでいるという方は、参考にしてみてくださいね。
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塚原社会保険労務士事務所代表 塚原美彩(つかはら・みさ)
行政機関にて健康保険や厚生年金、労働基準法に関する業務を経験。2016年社会保険労務士資格を取得後、企業の人事労務コンサル、ポジティブ心理学をベースとした研修講師として活動中。趣味は日本酒酒蔵巡り。
ライター所属:京都メディアライン