人との関係でちょっとしたトラブルが起きたとき、あとに引きずるか、それとも手放せるかは大きな分かれ道です。そんなとき、思い出されるのが「水に流す」という言葉かもしれません。何事にも、しこりを残さず、前向きに関係を築いていきたいものですよね。
この記事では、「水に流す」の意味や使い方、類語、英語での表現について紹介します。
「水に流す」ってどんな言葉?
過去のトラブルにとらわれない言葉「水に流す」について、意味を理解し、適切に使えるようにしていきましょう。
「水に流す」の読み方と意味
「水に流す」は「みずにながす」と読みます。辞書には、以下のように記されています。
水(みず)に流(なが)・す
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
過去のいざこざなどを、すべてなかったことにする。「これまでのわだかまりを―・す」
「水に流す」は、過去のもめごとやすれ違いを、なかったことにするという意味です。争いや誤解があっても、それ以上とがめず、関係を前向きに築き直そうとする姿勢を表すときに使います。

「水に流す」の由来は?
「水に流す」という言葉は、文字通り「水で洗い流す」ことに由来しています。ここから、過去の出来事やわだかまりを無かったこととして受け流し、責め立てたり、根に持ったりしないという意味で使われるようになりました。
参考:『故事俗信ことわざ大辞典』(小学館)
「水に流す」はどんなときに使う? 例文で確認
言葉が持つイメージを理解したら、ぜひ自分の言葉としても使ってみたいですよね。まずは、例文で使い方をチェックしましょう。
「これまでのことは水に流そう」
大きなプロジェクトが一段落したあと、「あの時はピリピリしていたけど、水に流して次に進もう」と伝えることで、関係修復への気持ちを表現できます。
日常の生活のなかにも、使う場面がありそうですね。

「昔のトラブルは水に流して再出発」
過去に対立や誤解があっても、新しい関係を築こうとするときに「水を流す」が使えます。「わだかまりを残さず、切り替えて進みたい」という意思を、相手に伝えるときにとても役立ちますよ。
「水に流す」の類語|言い換え表現をチェック
「水に流す」と似た意味を持つ言葉はいくつかありますが、少しずつ雰囲気に違いがあります。それぞれ使い分けができると、表現がより的確になりますよ。
ここでは、言い換えできる言葉を紹介します。場面に合わせた言葉選びの参考にしてください。
「無かった事にする(なかったことにする)」
「無かった事にする」は、「水に流す」と同じ意味ですが、より日常的で軽い言い回しです。気持ちの整理や和解といった意味の他、手続きや判断を一度白紙に戻すときに使いやすい表現です。
「この契約は無かった事にさせてください」といった言い方が一例です。
「リセットする」
「リセット」は、最初からやり直すことや、状況を切り替えるために、一旦すべてを断ち切ることを意味します。
「水に流す」とは、まったく同じ意味ではありませんが、一度区切りをつけて、仕切り直すという感覚では近い表現といえるでしょう。
「気持ちをリセットする」という使い方は、多くの人に馴染みがありますよね。

「水に流す」を英語でどう表す?
英語にも「水に流す」と似たフレーズがありますよ。どこの国でも、過去を手放して前に進みたい気持ちは共通なのかもしれませんね。
ここでは、そんな気持ちに寄り添う英語表現を紹介します。
‟let bygones be bygones “
‟let bygones be bygones “ は、「過去のことは過去のことにしよう」という意味で使う定型句です。争いを再燃させず、前向きに関係を築こうとする気持ちが込められています。
日本語の「水に流す」と似たニュアンスを持ち、和解や関係修復を意図するときによく使います。
【例文】
“Let’s just let bygones be bygones and move forward with the project.”
(昔のことは水に流して、このプロジェクトを前に進めよう。)
“forgive and forget the past”
“forgive and forget the past” は直訳すると「過去のことは許して忘れる」です。英語圏で日常的に使う表現で、人間関係のもつれや誤解があったあと、それ以上とがめず、前に進もうとするときに使います。
「水に流す」と非常に近い感覚をもつ言い回しといえるでしょう。
【例文】
“It’s time to forgive and forget the past and move on.”
(もう許して忘れて、前に進もう。)
参考:『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)
最後に
すれ違いや誤解があっても、相手との関係を大切にしようとする気持ちは、いつでも前向きな一歩になります。「水に流す」という言葉には、過去にとらわれず、新たな関係を築こうとする気持ちが込められていますよ。いつも、心の中に置いておきたい言葉ですね。
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