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プロジェクトの中心で指揮を執る人にぴったりの言葉、「牛耳を執る」。少し古風な印象もありますが、実はリーダーシップを表す言葉として今も使われています。語源は中国、古代の盟約儀式に由来していますよ。
この記事では、「牛耳を執る」の意味や由来、使い方などを紹介します。読み進めるうちに、日常や仕事で使える場面が浮かぶかもしれません。
「牛耳を執る」ってどんな言葉?
「牛耳を執る」は、チームや組織を率いるときにぴったりの表現です。まずは、基本的な意味から確認してみましょう。
「牛耳を執る」の読み方と意味
「牛耳を執る」は「ぎゅうじをとる」と読みます。以下は、辞書からの引用です。
牛耳(ぎゅうじ)を執(と)・る
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
《中国の春秋戦国時代、諸侯が盟約するとき、盟主になるべき人が牛の耳をとって裂いて出した血をすすって誓い合ったという「春秋左氏伝」の故事から》同盟の盟主になる。また、団体の中心となって自分の思いどおりに事を運ぶ。牛耳る。
「牛耳を執る」は、団体や組織の中心になって、自分の思いどおりに進めることを意味します。また、もともとは同盟関係における盟主になるという意味も含まれています。

「牛耳を執る」の語源
「牛耳を執る」の語源は、中国の古典『春秋左氏伝(しゅんじゅうさしでん)』に記された故事にあります。
『春秋左氏伝』では、諸侯が盟約を結ぶ際に、盟主となる人物が牛の耳を裂き、その血を用いて誓いを交わす儀式が描かれています。耳を裂く、という重要な役目を担うことで、その人物が実質的な盟主であることが示されていました。
この背景から、「牛耳を執る」という表現は、単なる形式上の代表ではなく、実質的な主導権を持つ立場を指す言葉として使うようになったそうです。
「執る」の漢字に注目
「執る」は、「取る」よりも、行動をともなう意味を含んだ言葉です。例えば、「執筆」や「執政」のように、実際に行動することを強調する使い方をします。
「牛耳を執る」という表現にも、このニュアンスが生きています。地位があるだけでなく、自ら動いて主導する姿勢や、責任を持って采配をふるう態度が含まれているといえます。
どんな場面で使う?「牛耳を執る」の使い方
「牛耳を執る」は、仕事や日常で、主導権を持ち、周囲に影響力を及ぼしている人物を表現する際に使える言葉です。実際にどんな使い方をするのか、例文を見ながら確認していきましょう。
「政治の裏側で、長年ある人物が牛耳を執ってきたと言われている」
この例文では、表には出ない場面で、一部の人物が長いあいだ実質的な主導権を持っていた、という状況に「牛耳を執る」を使っています。
「新しい部長が着任してから、すっかり彼が部署の牛耳を執っている」
新しいリーダーが実権を握り、部署の運営や方針を自分の考えで動かしている様子を表しています。

「牛耳を執る」と「牛耳る」は違う? 違いを知っておこう
「牛耳る」という言い方も、見聞きしたことがあるかもしれませんね。「牛耳を執る」との違いを知っておくと、状況に応じた表現がしやすくなります。それぞれの言葉について、使い分けを確認しましょう。
「牛耳る」は「牛耳を執る」が転じた語
「牛耳る」は、「牛耳を執る」が転じた言い方です。意味は同じですが、よりくだけた響きがあります。より身近な表現だといえるでしょう。
日常会話では「牛耳る」を使うことが多いので、「牛耳を執る」より聞きなじみがあるかもしれません。
参考:『日本大百科全書』(小学館)
「牛耳を執る」の言い換え表現は?|類語を紹介
「牛耳を執る」はやや硬めの言い回しであるため、場面によっては別の表現に置き換えることもあります。ここでは、使い分けに役立つ表現を紹介します。

「仕切る(しきる)」
「仕切る」は、ある物事の進行や全体の運営を掌握し、指示を出して処理することを意味します。例えば、会の段取りや現場の采配を任されるような場面で「彼が全部仕切っている」といった使い方をします。
実務的な意味合いが強く、日常でもよく使う表現です。
「采配(さいはい)を振る
「采配を振る」は、自ら先頭に立って物事の指揮や運営にあたることを意味します。組織やプロジェクトなどで全体の方向を定め、人に指示を出すような場面で使います。
参考:『日本国語大辞典』(小学館)
最後に
古代中国の故事に由来する背景を知ることで、言葉が持つ重みや、ふさわしい場面も見えてきます。状況に応じた表現を意識することで、伝わりやすい言葉づかいができそうですね。
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