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この記事のサマリー
・「悶々(もんもん)とする」とは心が晴れないことを指す。
・「もやもや」は原因がはっきりしない不安や違和感を指し、「ムラムラ」は欲求や衝動の高まりを表す。
・類語には「鬱々」「煩悶」「思い煩う」などがある。
「最近、なんだか気持ちが晴れない」「あの一言が頭から離れない」―。そんな時につい口に出るなるのが「悶々とする」という言葉ではないでしょうか? けれど、この言葉の本来の意味を正確に説明できる人は意外と少ないかもしれません。
この記事では、意味、日常での使い方・言い換え表現・心理的背景までを丁寧に解説します。
「悶々とする」とは? 正しい意味と心理的なニュアンス
まずは、「悶々とする」の意味と使い方を整理していきましょう。
「悶々とする」の読み方と意味
「悶々」は「もんもん」と読みます。「心が晴れないこと」を指します。
辞書では次のように説明されていますよ。
もん‐もん【×悶×悶】
[ト・タル][文][形動タリ]悩み苦しむさま。「―として夜を明かす」
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
この語には「悶える(もだえる)」という漢字が使われており、心の中で苦しみを抱えながらも外に表せない「精神的なもだえ」を象徴しています。
古くは正岡子規や小山内薫の文学作品にも登場していますよ。
「もやもや」・「ムラムラ」との違い
「もやもや」は、原因がはっきりしない不安や違和感を指す言葉です。一方、「ムラムラ」は欲求や衝動の高まりを表し、瞬発的な感情に使われます。
それに対して「悶々」は、感情を外に出せないまま理性的に抑え込み、思考や心情が繰り返し渦を巻くような状態です。
例えば、「どうしても忘れられない言葉を思い出しては悶々としてしまう」という場面が典型的。心の中に滞留する「苦しさ」が、「悶々」の本質だといえます。

「悶々とする」シーン別の使い方と例文
人は誰でも「悶々とする」瞬間があります。恋愛、仕事、人間関係…。ここでは、具体的な場面別の使い方を例文とともに紹介します。
恋愛で「悶々とする」
「彼のあの言葉、どういう意味だったんだろう……悶々としちゃう」
好きな人の一言が頭から離れず、眠れない夜を過ごした経験はありませんか? 恋愛では、相手の気持ちが見えないときや、連絡が来ない時間が長引いたときなどに「悶々とする」状態になりがちです。
これはまさに、心配と期待の間で揺れながら答えを見つけられない「内なる葛藤」。感情を整理できずにいる心の揺れが、この言葉の核心です。
仕事・ビジネスシーンで「悶々とする」
「上司の一言が頭に残って離れない、家に帰っても悶々としてしまう」「会議での発言を後悔し、悶々としてばかりだ」。
ビジネスシーンでも、「悶々とする」ことは少なくありません。表情に出せないストレスや、自分の評価への不安を心の中で反芻してしまう。社会人に特有の「抑えた悩み」こそが、「悶々とする」という表現にぴったりです。
この言葉を使うことで、感情的ではなく、理知的に「気持ちが整理できていない状態」を伝えることができます。
日常生活で「悶々とした日々を過ごす」
将来への不安や人間関係のすれ違いなど、原因が一つに絞れない時にも「悶々とした日々を過ごす」といえます。
例えば、「転職を考えているけれど決断できず、悶々とした日々が続いている」というようなケースです。
自分でも答えが出せず、心の中で堂々巡りをしてしまう。そんな状況に使うと自然です。
「悶々とする」の言い換え・類語・対義語
同じような心理状態を表す言葉には、「鬱々」「煩悶」「思い煩う」などがあります。シーンによって微妙に意味が異なるため、言い換えるときは注意が必要です。一つずつ意味を確認してみましょう。
「鬱々とする」
「鬱々(うつうつ)」は、心が塞ぎ込み、気分が沈んだ状態を表します。「悶々」が「思い悩む」状態であるのに対し、「鬱々」はさらに感情が停滞している印象です。
そのため、日常会話では少し重たい響きを持ちます。
「煩悶」
「煩悶(はんもん)」は「煩=わずらう」という字のとおり、物事に悩まされる状態を指します。日常的に使われる言葉です。
思い煩う
「思い煩う(おもいわずらう)」もまた、あれこれと考えて悩む様を表します。主に文章で使われる言葉です。

心理面から見る「悶々とする」状態
「悶々とする」状態は、心理的には「感情が整理されないまま残っている」状況といえます。ここでは、心のメカニズムを少しだけ掘り下げてみましょう。
「悶々とする」=未処理の感情
悩みを言葉にできず抱え込むと、思考は同じ場所を何度も回り始めます。このループが続くと、頭も心も疲れてしまうのです。
「書き出す」「信頼できる人に話す」といった行動は、感情を外に出す第一歩。筆者も、夜中に悶々と考え込んでいた時、ノートに気持ちを書いたら少し楽になった経験がありますよ。
「言葉にする」ことが、心を軽くする手がかりになります。
解決のヒント:「悶々」を軽くする思考法
完全に忘れようとするより、「悶々としている自分を認める」ことが大切です。無理に感情を押さえ込まず、時間をかけて整理していくこと。小さな行動(散歩・深呼吸・ノートに書く)を取り入れるだけでも、思考のループから抜け出しやすくなります。
自分の内面に優しく向き合うことが、「悶々」を解く第一歩です。

「悶々とする」に関するFAQ
ここでは、「悶々とする」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「悶々とする」と「もやもやする」は同じ意味ですか?
A. 「もやもや」は原因がはっきりしない不安感、「悶々」は明確な悩みや苦しみを内に抱える状態を指します。
Q2. 「悶々とする」をビジネス文書で使ってもいいですか?
A. 使えますが、「考えあぐねている」「整理できていない」などに言い換えた方が誤解がないでしょう。
Q3. 「悶々とする」のNGな使い方はありますか?
A. 性的な欲求の比喩に誤用されることがありますが、辞書上はその意味はありません。
誤解を招く使い方は避けましょう。
Q4. 「悶々とする」に英語で近い表現はありますか?
A.“suffer mental anguish”や“be in distress”などが近いニュアンスです。
参考:『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)
最後に
「悶々とする」という言葉は、心が動いている証でもあります。悩みや不安にとらわれている時こそ、自分と向き合う時間を持てるチャンスではないでしょうか。
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