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この記事サマリー
・「五十歩百歩」とは、少しの違いはあっても本質的には同じで大差がないことを表す言葉です。
・戦闘から100歩逃げた者を、50歩しか逃げなかった者が笑ったが、どちらも逃げたことに変わりはないと言った『孟子』梁恵王上の話に由来します。
・類義語、言い換え表現には「似たり寄ったり」、「どっこいどっこい」、「大同小異」、「どんぐりの背比べ」などが挙げられます。
職場での会話やニュースなどで、「それって五十歩百歩じゃない?」という言葉を耳にしたことはありませんか? 「同じようなもの」という意味の言葉ですが、由来などを理解し、正しく使えているのか自信がなくなることもありますよね。
本記事では、「五十歩百歩」という言葉の本来の意味・由来・正しい使い方などを紹介します。
「五十歩百歩」の意味とは?
「五十歩百歩(ごじっぽひゃっぽ)」とは、優劣や差があるように見えても、実際には大差がないとこという表現です。
辞書では次のように説明されています。
ごじっぽ‐ひゃっぽ〔‐ヒヤクポ〕【五十歩百歩】
《戦闘の際に50歩逃げた者が100歩逃げた者を臆病だと笑ったが、逃げたことには変わりはないという「孟子」梁恵王上の寓話から》少しの違いはあっても、本質的には同じであるということ。似たり寄ったり。「10分遅刻も15分遅刻も―だ」
引用:『デジタル大辞泉(小学館)』
例えば、「10分遅刻も15分遅刻も五十歩百歩だね」というと、どちらも「遅刻した」という点では変わらない、という意味になります。
「五十歩百歩」の由来とは?
「五十歩百歩」は、中国戦国時代の思想家・孟子(もうし)の言葉に由来します。
あるとき、梁の恵王が孟子に、「自分は善政を行なっているのに、なぜ隣国のように人民が増えないのか」と尋ねました。孟子は、王が好む「戦争」にたとえて答えます。
「戦場で五十歩逃げた兵士が、百歩逃げた兵士を臆病だと笑う。だが、どちらも「逃げた」ことに変わりはない」
この話を通じて孟子は、「どちらも大した差はない」ということを諭したのです。この故事が、『孟子‐梁恵王・上』に記されており、「五十歩百歩」という言葉の由来になりました。
参考:『故事俗信ことわざ大辞典』(小学館)

「五十歩百歩」の類語・言い換え表現は?
「五十歩百歩」の類語や言い換え表現には「似たり寄ったり」、「どっこいどっこい」、「大同小異」、「どんぐりの背比べ」が挙げられます。類語や言い換え表現を知っておくと、ビジネスシーンや日常会話などで、表現の幅がぐっと広がりますよ。
「似たり寄ったり」
「似たり寄ったり」とは、あまり違いがないことを表し、日常会話で使える表現です。
例:二人は似たり寄ったりの境遇に育った。
「どっこいどっこい」
「どっこいどっこい」は、双方の能力や勢いに優劣がないさまを表します。主に口語で使われるのが特徴です。
例:A社とB社は条件がどっこいどっこいだ。
「大同小異」
「大同小異」は、細かな違いはあっても大体は同じことを意味します。ビジネス文章などでも使うことのできる表現です。
例:両者の実力は大同小異だ。
「どんぐりの背比べ」
「どんぐりの背比べ」は、どれも同じで抜きんでたものがないことの例え。物の大小の比較から生まれた表現です。
例:テストの点数はどんぐりの背比べだった。

「五十歩百歩」の使い方を具体的な例文でチェック
ここでは「五十歩百歩」のビジネスシーンや日常会話での使い方を例文でチェックしていきましょう。
ビジネスでの使い方
会議や報告書、社内の議論で、双方の意見や行動の差が大きくない場合などに使えます。
例:「A社の対応もB社の対応も五十歩百歩で、どちらにも改善の余地がある」
日常会話での使い方
友人や家族との会話で、軽く差がないことを表現したい場合に使えます。
例:「5分遅刻も10分遅刻も遅刻したことには変わりない、五十歩百歩だよ」
「五十歩百歩」を英語で表現するには?
「五十歩百歩」を英語で伝えたい場合、「それほど大差がない」という以下の文章で表現することができます。
・There is little difference between the two.(2つの間にはほとんど差がない)
・It’s six of one and a half dozen of the other.(どちらも大して変わらない)
“It’s six of one and a half dozen of the other”は、「どちらも大差ない」「似たり寄ったり」という意味で、似たような状況や、どちらを選んでも結果がほとんど変わらない場合に使われる表現です。直訳すると「6と、1ダースの半分」となり、半ダースは「6」なので、表現が違うだけで同じことを指します。
参考:『プログレッシブ和英中辞典』(小学館)

「五十歩百歩」に関するFAQ
ここでは、「五十歩百歩」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「五十歩百歩」の由来は?
A3. 『孟子』の寓話に由来します。孟子は「戦場で五十歩逃げた兵士が、百歩逃げた兵士を臆病だと笑う。だが、どちらも「逃げた」ことに変わりはない」という話をしたといわれています。
Q2. 類語には何がありますか?
A2. 「似たり寄ったり」、「どっこいどっこい」、「大同小異」、「どんぐりの背比べ」などが挙げられます。
Q3. ポジティブなことにも使えますか?
A3. どちらも同じようなもので、論ずるに値しないときに使われることが多い表現です。
参考:『故事俗信ことわざ大辞典』(小学館)
最後に
「五十歩百歩」は、数字こそ違っても「逃げた」という点では同じだ、という話から生まれた言葉です。ビジネスシーンや日常会話において、「それほど大差がない」ということを伝える際に使うことができます。
意味や由来を知ることで、言葉を正しく使うことができ、円滑なコミュニケーションに役立ちますね。
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