ニュース・登山関係・ビジネスなど、色々なシーンで登場する「分水嶺(ぶんすいれい)」という言葉。「成功と失敗の分水嶺」「歴史的分水嶺」「分水嶺のトレッキング」などといったような表現で目にすることがあるかもしれません。
しかし、そもそも「分水嶺」とは、何を意味するのでしょうか?
そこで、本記事では、「分水嶺」という言葉の基本的な意味・使い方・類義語などについても、わかりやすく解説します。
「分水嶺」の意味
まず、「分水嶺」という言葉の意味について。「分水嶺」には、「分水界となっている山稜」という意味があります。「分水界」とは、地上に降った雨が2つ以上の水系に分かれる境界のことです。日本では主に、山に降った雨水が太平洋に流れるか日本海に流れるかで、どこの山脈が分水界であるかが判断されます。
したがって、「分水嶺」とは、「降った雨水が2つ以上の水系に分かれる山脈」、ということになります。
また、「分水嶺」には、「物事の方向性が決まる分かれ目」という意味もあります。「歴史の分水嶺」「人生の分水嶺」といったように表現しますよ。
「分水嶺」を使った例文
次に、「分水嶺」の使い方を例文で見ていきます。
1:「長野県にある中央分水嶺には、トレイルコースが設けられており、トレッキングを楽しむことが可能である」
「中央分水嶺」とは、川の流れる方向を日本列島の太平洋側と日本海側に分ける分水界です。したがって、ここでの「分水嶺」は、雨水の水系を分ける地理的な意味になります。長野県や滋賀県は、中央分水嶺に沿ってトレイルコースが設定されているので、トレッキングに行くのもいいですね。
2:「今思えば、あの時海外に行くと決めたのが、自分にとっての人生の分水嶺ではなかったかと思う」
この文では、海外行きを決めたのが、その後の人生の分かれ道になったと言っています。したがって、ここにおける「分水嶺」は「物事の方向性が決まる分かれ目」という意味です。人生を振り返ると、いくつかの地点で「分水嶺」だったと思えるような出来事があるかもしれませんね。
3:「始皇帝による中国統一が、その後の中国のあり方を決める分水嶺となった」
この文では、始皇帝による統一がその後の中国の有り様に大きな影響を及ぼすきっかけとなった、と言っています。したがって、ここでの「分水嶺」は「物事の方向性が決まる分かれ目」という意味です。歴史では、戦いの勝敗・受容する文化の選択・気候変動が、その後の歴史の進展に大きく左右することが少なくありません。
「分水嶺」の類義語
「分水嶺」の類義語には、どのようなものがあるのかについても見ていきます。
1:「稜線」
「稜線」は「りょうせん」と読みます。意味は、「山の峰から峰へ連なる線、尾根」のこと。日本アルプスのように、山々が連なるところでは、稜線が多く見られます。稜線を境に、川の水源があるケースは多いです。
例文:
・「高い峰々が連なり、稜線が美しいラインを見せている」
・「峰から峰へ、稜線を縦走して景色を楽しむ」
・「このあたりの稜線は風化・崩壊が進んでおり、滑落の危険性があるので、注意が必要だ」
2:「分岐点」
読みは「ぶんきてん」。道路や線路などが、2つ以上の方向に分かれる地点のことを指します。または、物事がどのように進展するかの分かれ道、という意味も。
例文:
・「ここを分岐点にして、道が分かれている。迷わないように注意が必要だ」
・「人生は分岐点の連続である」
・「分岐点なので、道案内の看板を設置しておこう」
3:「分水界」
「ぶんすいかい」と読み、雨水が2つ以上の水系へ分かれる境界のことを指します。地理学用語です。
例文:
・「鎌ケ谷市は高いところに位置するため、降った雨が手賀沼・印旛沼・東京湾の3つの方向に分かれて流れる分水界らしい」
・「分水界は山の中にあることが多いが、街の中にあるケースもある」
・「分水界は稜線に沿うことが多いが、平地部やカルスト地域では比較的はっきりとしないらしい」
「分水嶺」の英語表現
次に、「分水嶺」の英語表現についても確認します。
1:「watershed」
地理的な意味として「分水嶺」という意味を持つ他、転換点や分岐点という意味もあります。
例文:
・「The mountains is the watershed of the country(山は国の分水嶺である)」
・「we must win in a watershed game(分岐点となる試合にて、勝たねばならない)」
・「watershed time(分岐点となる時)」
2:「divide」
地理的な意味の「分水嶺」以外に、分かれ目・格差・隔たりという意味もあります。
例文:
・「the Great Divide(北米大陸分水界)」
・「equal divide(均等分割)」
・「credit divide(信用格差)」
3:「branch point」
「分岐点」という意味です。数学や工学などの分野で、多く用いられます。
例文:
・「logarithmic branch point(対数分岐点)」
・「algebraic branch point(代数分岐点)」
4:「turning point」
「ターニングポイント」という表記で、日本語にもなっています。分岐点や変わり目という意味です。
例文:
・「The event marked a turning point in her life(その出来事は、彼女の人生における分水嶺だった)」
・「we are at a turning point(私たちは転換期にある)」
・「This may be a turning point in history(今が歴史の分水嶺かもしれない)」
最後に
「分水嶺」は、水系を分ける境界や物事の方向性を決める分かれ道という意味になります。日常生活では、「物事の方向性を決める分かれ道」という意味で使うシーンの方が多いかもしれません。この記事を参考に、「分水嶺」という言葉の理解を深め、うまく使いこなすための材料にしてみてください。
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