皆さんは「猫の額」ということわざを知っていますか? 「あまり聞いたことがない」「そもそも猫に額なんてあるの?」などと疑問に思う方も多いでしょう。「猫の額」は、人間の額に比べてとても小さいことから、面積が狭い場所のたとえとして使われるようですよ。本記事では、「猫の額」の意味や使い方、類語を解説します。
「猫の額」の意味
「猫の額(ねこのひたい)」の意味を、辞書で確認していきましょう。
《猫の額が狭いところから》場所の狭いことのたとえ。ねこびたい。「―ほどの庭」
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「額」とは「おでこ」のこと。人間で言うと、髪の生え際から眉毛のあたりまでの部分を指します。猫には額の目安になるような眉毛がないので、いまいちどこからどこまでが額と呼べるのかわかりにくいですよね。ただ、人間に比べて、猫の額はとても面積の小さいことから、狭い場所のことを「猫の額ほどの〜」などとたとえられるようになったのかもしれません。
使い方を例文でチェック!
日常生活の中のどのような場面で「猫の額」が使われるのでしょうか? よくある例を3つ紹介します。
1: 私の家のキッチンは、まるで猫の額ほどの広さしかない。
「猫の額」は、土地の広さや敷地面積、間取りの広さなどに使われることが一般的です。あまりの狭さに驚きを込めて、「まるで猫の額ほどの広さだ」と言われることが多いでしょう。ほんのわずかな面積しかないというニュアンスがあるため、他人の家に対して使う場合は注意してくださいね。
2:母は、猫の額ほどの庭でガーデニングを楽しんでいた。
都会であるほど、庭の面積が狭いケースも多いものです。庭遊びやガーデニングを楽しみたい人にとってはデメリットではありますが、工夫して楽しんでいるも多いかもしれませんね。
3:弟は、猫の額ほどの部屋で一生懸命勉強していた。
「猫の額」を使うことで、とても狭い部屋だということがわかりますね。ただでさえ狭い部屋に、勉強机や本棚、勉強道具などを置くのですから、余計に空間がせせこましく感じられるでしょう。一方で狭い空間だからこそ、かえって集中できるという一面もあるかもしれませんね。
類語や言い換え表現は?
他にも、場所の面積が狭いことを指す言葉に、「猫額」「狭小」「せせこましい」があります。それぞれどのような場面で使われる言葉なのか一緒に見ていきましょう。
1:猫額
まるで「猫の額」を縮めたような、「猫額(びょうがく)」という言葉もあります。意味は以下の通りです。
ねこのひたい。また、そのように狭いこと。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「猫額」も、「猫の額」と同じく、「猫の額ほどに狭いこと」という意味です。また、猫の額ほどの大きさと言いたいときに、「猫額大(びょうがくだい)」と表現することも。「ここは、まるで猫額大の耕地だ」と言ったりします。
(例文)
・猫額の地を奪い合う。
・息子夫婦が買った場所は、猫額大の敷地だ。
2:狭小
「狭小(きょうしょう)」の意味は以下の通りです。
[名・形動]狭くて小さいこと。また、そのさま。「―な国土」「度量の―な人」⇔広大。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「狭小」は、文字通り「狭くて小さいこと」。土地や領土の範囲がとても狭い場合に使われる言葉です。例えば不動産用語では、狭くて小さな土地に建てられた家を「狭小住宅」と呼びます。土地が狭いだけに、隣の家との距離が近すぎたり、駐車スペースがないというケースも多いようですね。
(例文)
・息子が都内に買ったのは、狭小住宅だった。
・兄は、狭小な書斎で毎日仕事に取り組んでいます。
3:せせこましい
「せせこましい」の意味は、以下の通りです。
[形][文]せせこま・し[シク]
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
1 狭くて窮屈な感じがするさま。狭くるしい。「―・い家並み」
2 考え方や性質などがこせこせして、心にゆとりがないさま。「―・い料簡」
建物などの面積が狭く、窮屈な感じがすることを「せせこましい」と表現します。ただ、面積が狭いだけでなく、それによって不快に感じる場合に使われる言葉です。また、「せせこましい考え」のように、気持ちにゆとりがない場合にも用いられます。
(例文)
・母は、「せせこましい家ですが、どうぞお入りください」と客人を案内した。
・物で溢れかえった息子の部屋を見て、父は「せせこましい部屋だな」と顔をしかめた。
「猫」を使ったことわざ
「猫の額」以外にも、「猫」が登場することわざはいくつかあります。ここでは、代表的な「猫に小判」と「窮鼠猫を噛む」を紹介しますね。
1:猫に小判
「猫に小判」の意味は以下の通りです。
貴重なものを与えても、本人にはその値うちがわからないことのたとえ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
猫に小判を与えても、価値がわからないので全く意味がないことから、「ものの値打ちがわからなくて無駄なこと」のたとえとして用いられます。「この掛け軸は、彼にあげても猫に小判だ」というように、美術品や金品の価値がわからない人に対して使われることがほとんどです。
(例文)
・誕生日にブランド物のシャツをプレゼントしたが、ファッションに疎い彼は興味を示さず猫に小判だった。
・祖父にスマホを渡したけれど、使う方法を理解できず猫に小判だった。
2:窮鼠猫を噛む
「窮鼠猫を噛む」は、「きゅうそねこをかむ」と読みます。意味は以下の通りです。
《「塩鉄論」刑法から》追いつめられた鼠が猫にかみつくように、弱い者も追いつめられると強い者に反撃することがある。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
「窮鼠」とは、「追いつめられたネズミのこと」。弱い者や身分の低い者でも、絶体絶命の立場に追いやられると、強い者に反撃するという意味です。「猫の額」よりも馴染みのあることわざではないでしょうか?
(例文)
・窮鼠猫を噛むというように、息子はいじめっ子たちに反撃した。
・部下は勇気を持って上司に言い返した。まさに窮鼠猫を噛むとはこのことだ。
最後に
「猫の額」は、とっても狭い場所を表すことわざだということがわかりましたね。「猫の額ほどの狭さの店だが、コーヒーはうまい」というように褒め言葉として使うこともありますが、人によっては気を悪くする可能性もあるので、相手の持ち物に対して使う場合は配慮が必要です。動物の出てくるユニークなことわざの1つとして、覚えてみてはいかがでしょうか?
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