目次Contents
この記事のサマリー
・「マスト」とは「絶対に必要であること」を指すカタカナ語です。
・類語や言い換え表現としては「必須」「欠かせない」「不可欠」などが挙げられます。
・多用すると押しつけるような印象を与えかねないため、使い方には注意が必要です。
ファッションに関する記事などで見られる「マストバイ」という表現から、「マスト条件です」といった業務メールまで、「マスト」という言葉は日常にあふれています。しかし、英語の“must”と同じ感覚で使ってしまい、「上司や取引先に失礼な印象を与えていないか?」と不安に思う人も少なくないようです。
そこで、この記事では「マスト」の意味と使い方を確認していきます。
「マスト」とはどういう意味?
まずは「マスト」の意味からチェックしていきましょう。
「マスト」の意味
「マスト」は、英語の助動詞“must(〜しなければならない)”に由来するカタカナ語です。辞書には、こう記されています。
マスト【must】
[名・形動]《英語で「…せねばならない」の意の助動詞から》俗に、絶対に必要であること。欠かせないこと。また、そのさま。「―アイテム」「―な一品」
引用:『デジタル大辞泉』(小学館)
例えば「マストアイテム」や「マストな一品」といった表現は、「絶対に必要なもの」や「必需品」を意味します。
英語 “must” との違い
一方、英語の“must”は助動詞として、「義務・禁止」だけでなく、「推量・必然性」など、非常に多様な意味を持ちます。
例えば、“You must be tired.” は「疲れているに違いない(お疲れでしょう)」という意味で、「推量」を示す表現です。
これと比べ、日本語の「マスト」は「推量」などの意味を含まず、「絶対に必要」「欠かせない」という、重要性を強調する限定的な意味として使われる点が大きな違いです。

「マスト」はビジネスでどう使う?
ビジネスシーンでの、「マスト」の具体的な使用例を見てみましょう。
必須条件として
採用条件の中で「英語力はマストです」と記載されていれば、「絶対に必要な(欠かせない)条件」としての意味になります。
最重要タスクとして
「マスト業務」「マスト対応」などのように、やらなければならない最重要タスクや、優先順位が最も高い事項を指すことがあります。
絶対の指示として
ToDoリストや、会議の場面で、「これはマストでお願いします」と使う場合は、必ず行わなければならないことを示します。

「マスト」の使い方|NG例と注意点も解説
「マスト」は「絶対に必要」という意味を持つため、何気なく使うと相手に強い印象を与えてしまうことがあります。特に注意したいのは、あらゆる場面に対して「マストです」と断定的に使いすぎることです。
強制的な印象を避ける
例えば、「会議にはマストで出席してください」と言われた場合、相手によっては「強制されている」と感じるかもしれません。
「可能であればご参加ください」や「ご出席いただけますと幸いです」といった伝え方で十分な場面では、「マスト」を用いるのは避けましょう。
多用は混乱を招く
筆者は過去に、ある会議で「マスト事項が多すぎて優先順位が見えない」と困惑した経験がありました。多用しすぎると、どれが本当に必要なのかが伝わりにくくなります。
理解の齟齬を生じさせないためには、以下の点に注意し、より明確な言葉に置き換えましょう。
理由を添える
「なぜそれがマストなのか」理由を添えることで、円滑なコミュニケーションにつながります。
より明確な語を使う
「必須」「重要」「優先」など、意味が明確に伝わる語に置き換えることで、混乱の防止につながります。
「マスト」の言い換え表現・類語は?
カタカナ語は人によって捉え方が異なるため、使い方には注意が必要です。ここでは「マスト」の言い換え表現や類語を紹介します。
「必須」
「必須」は「必ず用いるべきこと。欠かせないこと」という意味を持つ言葉で、必要条件や要件を示したいときに適しています。
例えば、「TOEICスコア700点以上はマストです」を「TOEICスコア700点以上は必須です」と言い換えれば、わかりやすく、より的確に伝わるでしょう。
「欠かせない」
「欠かせない」は「なしで、すますことができない」という意味があり、「マスト」の言い換え表現として幅広い対象に使える語です。
例:「彼女はプロジェクトに欠かせない存在です」
「不可欠」
「不可欠」は、「欠くことができない」という意味で、人材、道具、スキルから、抽象的な概念や要素にまで幅広く使える言葉です。
例:「問題を解決するうえで不可欠な要素」
参考:『デジタル大辞泉』、『日本国語大辞典』、『使い方の分かる類語例解辞典』(すべて小学館)

英語で「マスト」はどう言う? 正しい使い分けとビジネス表現
「マスト」は英語の助動詞 “must” に由来しますが、日本語とは使い方が異なります。ここでは英語の “must” の使い方を見ていきましょう。
“must” の使い方と意味
“must” は、義務や強い必要性を示す助動詞です。
一方で、名詞として使うときは「なくてはならないもの」といった意味になり、日本語の「必読書」や、「マストアイテム」などに対応します。
例文: “This book is a must for every entrepreneur.”
(この本はすべての起業家にとって必読です。)
参考:『ランダムハウス英和大辞典』(小学館)
「マスト」に関するFAQ
ここでは、「マスト」に関するよくある疑問と回答をまとめました。参考にしてください。
Q1. 「マスト」の意味は何ですか?
A. 「絶対に必要であること」を意味します。
英語の助動詞“must(〜しなければならない)”に由来するカタカナ語です。
Q2. 「マスト」の言い換え表現は何ですか?
A. 「必須」「欠かせない」「不可欠」などが挙げられます。
Q3. 「マスト」は英語の“must”とまったく同じ意味ですか?
A. いいえ。
日本語の「マスト」は、英語の“must”の一部の意味(義務・必要性)を取り入れたカタカナ語です。文法的には異なります。
最後に
「マスト」について紹介しました。英語由来のカタカナ語は増えていますが、意味や使い方をあいまいにしか知らないという人は意外と多いもの。誤った解釈をすることや誤用を防ぐためにも、気になった時にきちんと調べてみるのもいいですね。
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