「ありますでしょうか」は間違った使い方?
ビジネスシーンなどで、相手に何かを訪ねる際に「ありますでしょうか」という言い方をしていませんか? 実はこの表現は二重敬語にあたるため、適切ではないのです。
なぜ「ありますでしょうか」が正しい表現ではないのか、二重敬語がなぜ誤りとされるのかを把握すると、誤用を防げるかもしれません。敬語を使わなければならないシーンで適切に話すためにも、理由を把握しておきたいですね。
まずは、二重敬語についてチェックしましょう。
二重敬語とは
敬語は、話し手や書き手が、相手や話題の人物に対して、敬意を示す表現のこと。尊敬語、謙譲語、丁寧語の3つに分けられます。
「二重敬語」とは、同じ種類の敬語を重ねて使うこと。具体的には、一文の中で「尊敬語+尊敬語」や「丁寧語+丁寧語」のように使っていることを言います。二重敬語になるのは正しくないと判断されることが多いため、使うのは避ける方がいいでしょう。
「ありますでしょうか」という表現は、「ある」の丁寧な表現である「あります」と、「だろうか」の丁寧な表現である「でしょうか」が重なっているため、二重敬語だと判断されるでしょう。
二重敬語が誤りとされる理由
敬語を重ねて使う二重敬語が誤りとされるのは、過剰な丁寧さになるからと言われています。丁寧な表現を重ねて使うことは一見問題ないように思うかもしれませんが、中には過剰な敬語は失礼だと感じる人もいるでしょう。
自分は礼を尽くしているつもりでも、相手を不快な気持ちにさせてしまっては意味がありません。普段使っている言葉が二重敬語にあたらないか、一度確認してみるのもいいでしょう。
「ありますでしょうか」を正しく言い換えたい
「ありますでしょうか」を正しく言い換えたい場合、どのような表現を使えばいいか見ていきましょう。いくつかピックアップして紹介します。
「ありますか」
「ある」の丁寧な表現である「あります」に、質問や疑念の意を表す「か」がついた表現です。二重敬語にはなっていませんので、「ありますでしょうか」の言い換えとして使うといいですね。
《例文》
・この商品の在庫はありますか?
なお、「ありますか」は丁寧な表現としては軽めに感じることも。相手やシチュエーションによっては、フランク過ぎると取られるかもしれません。目上の人やかしこまった場では、注意するようにしてください。
「あるでしょうか」
「ある」に「だろう」の丁寧な表現である「でしょう」と、質問の意を表す「か」をつけた表現。二重敬語にはなりません。「ありますか」に比べ、丁寧でやわらかい印象を与える表現と言えます。
《例文》
・来週の土曜日、午後の枠に空きはあるでしょうか?
「ございますか」
「あるか」の意の丁寧語。この表現も二重敬語にはあたりません。より丁寧な印象を与える表現のため、ビジネスシーンはもちろん、目上の人やかしこまった場にも適していると言えるでしょう。
《例文》
・プレゼンテーション後に「ご不明点はございますか?」と尋ねられ、いくつか質問をした
「おありですか」
動詞の「ある」に、尊敬の意を表す「お」を添え、相手に対する尊敬の意を表した表現です。「です」は「である」「だ」の丁寧な表現。二重敬語と思われがちですが、尊敬語と丁寧語になるため、二重敬語にはあたりません。
《例文》
・来週の日曜日は何か予定がおありですか?
他の二重敬語もチェック
知らず知らずのうちに使っている二重敬語は、意外とたくさんあるかもしれません。次の表現も二重敬語と判断される可能性が高いので、注意したいですね。
「おっしゃられる」
「言う」の尊敬語である「おっしゃる」と、軽い尊敬の意を表す「れる」が重なっているため、二重敬語に該当します。浸透しつつある言葉ですが、目上の人やかしこまった場では使うのを避ける方がいいかもしれません。
「おっしゃる」は尊敬の表現になるため、そのまま使って差し支えありません。また、「仰せられる(おおせられる)」を使うのもいいでしょう。なお、「仰せられる」は「命ずる」の尊敬語でもありますので、目上の人から何かを命じられた際にも使うことができます。
《例文》
・部長がおっしゃることは理解できたが、具体的な方策は思い浮かばない
・社長が仰せられたのは、リスクを考えつつも大胆に仕掛けるということだ
「ございますでしょうか」
「ある」の丁寧語である「ございます」と、「だろうか」の丁寧語である「でしょうか」の組み合わせになるため、二重敬語にあたります。
「ございますでしょうか」を言い換えたい場合は、「ありますでしょうか」の言い換え表現を用いるといいですね。
「伺わせていただきます」
「訪問する」の謙譲語である「伺う」と、「もらう」の謙譲語である「いただく」を使っているため、二重敬語になります。
言い換えたい場合は「伺います」でOK。「ます」は丁寧語のため、二重表現にはなりません。
《例文》
・来月も同じ日に伺いますがよろしいですか?
なお「拝見させていただきます」や「頂戴させていただきます」も二重敬語にあたります。「~させていただきます」を使う場合は、前に来る言葉に注意してください。
定着している二重敬語もある
二重敬語は誤りとされますが、定着している二重敬語もあります。次に紹介する表現は一般化しているため、誤用とは判断されません。
「お召し上がりになる」
「お〜なる」と「召し上がる」は、どちらも尊敬語。実は二重敬語にあたりますが、この表現は広く使われているため、誤用ではないとされています。
《例文》
・お召し上がりになるのはこちらの席でよろしいですか?
「お伺いする」
「お〜なる」と「伺う」はどちらも謙譲語とされますが、この表現も一般化していますよね。そのため、誤用にはなりません。
《例文》
・来週の午後にお伺いしてもよろしいですか?
最後に
「ありますでしょうか」や二重敬語について紹介しました。二重敬語は、丁寧な話し方をしようとすればするほど、使ってしまいがち。特にビジネスシーンやかしこまった場では、相手に失礼のないようにしたいと思うあまり、二重敬語になっているかもしれません。適切な話し方をするためにも、自分がよく使う表現について調べてみるのもいいでしょう。
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