蹲踞とは?
蹲踞は「そんきょ」と読み、「うずくまる」や「しゃがむ」という意味の言葉です。「蹲」と「踞」には、いずれも「うずくまる」という意味があり、同じような意味の漢字を組み合わせています。
蹲踞は、おもに相撲や剣道で行う座り方を指して使われます。
ここでは、蹲踞の意味や読み方についてみていきましょう。
日本の伝統的な座り方
しゃがむ姿勢を指す蹲踞は、日本に古くからある伝統的な座り方です。武士や僧侶によって用いられ、現代でも相撲や剣道で蹲踞の姿勢が取り入れられている傾向にあります。
ただ座るだけではなく、身体のバランスを整え、心を落ち着かせるという目的もあるようです。武士の場合は戦いの前に精神を落ち着かせるため、僧侶は座禅を組む際の準備として用いられていたとされています。
複数の読み方がある
蹲踞には「そんきょ」以外に「そんこ」「つくばい」といった読み方があり、読み方によって意味が異なります。「そんきょ」や「そんこ」と読む場合、膝を深く曲げて腰を落とす、しゃがんだ座り方を表します。
「つくばい」と読む場合は、日本庭園の添景物のことです。「蹲」と表記することもあります。茶室前の露地に設置された手水鉢(ちょうずばち)のことで、茶室に入る前に手を清める目的があります。
つくばいは鉢が低く、手と口を清める際には前かがみになりがちです。うずくまるようにも見えることから、「うずくまる」という意味の「蹲踞」という名前がつけられました。
そん‐きょ
出典:小学館 デジタル大辞泉
[名](スル)
1 うずくまること。しゃがむこと。そんこ。
「其の近傍なる公園中に、—する者も、少からず」〈竜渓・経国美談〉
2 貴人が通行するとき、両ひざを折ってうずくまり、頭を垂れて行う礼。また、後世、貴人の面前を過ぎるとき、ひざと手を座につけて会釈すること。
3 相撲や剣道で、つま先立ちで深く腰を下ろし、十分ひざを開き、上体を正した礼の姿勢。
シーンごとの蹲踞の違い
蹲踞は「そんきょ」でも「つくばい」でも、日本の伝統文化に根ざした意味合いがある言葉です。
ここでは、シーンごとに異なる蹲踞の意味を解説します。

茶道における蹲踞
茶道における蹲踞(つくばい)の目的は、茶室に入る前に来客が手や口を清めることです。ただ清めるだけでなく、心を落ち着かせるという茶道の作法に通じた役割もあるとされています。
また、蹲踞は茶道における結界の役割を果たしているという見方もあるようです。茶道ではもてなす側の亭主と客との間にある暗黙のルールを視覚化するため、結界としてさまざまな仕掛けを設けており、蹲踞もそのひとつなのだとか。蹲踞を設置することで、その先にある茶室が特別な空間であることを表しています。
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弓道・剣道における蹲踞
弓道や剣道では、稽古の開始と終了時に蹲踞を行います。これは、道場への敬意を示すとともに、稽古前の精神を落ち着け、集中力を高める役割を果たすものです。
蹲踞は体を低くすることで、相手に対して敬礼をするという意味も。剣道では試合の前後でも蹲踞を行うため、特別な場(試合)における儀式と考えることもできるでしょう。
相撲における蹲踞
相撲における蹲踞は、四股踏みの前に行われる基本姿勢です。土俵に上がった力士は直立の姿勢から上体を立てたまま、膝を折って腰を深く降ろします。つま先立ちで両膝を開き、両手を膝の上に置いて背筋を伸ばす姿勢により、身体をほぐして精神を集中させる役割があるといわれています。
四股踏みとは、力士が土俵上で片足を高く上げて強く地を踏む動作です。蹲踞から四股踏みまでのプロセスは、準備運動と同時に集中力を高めるための重要な儀式に位置づけられています。
ダイエットにも期待できる? 蹲踞のポーズ
蹲踞の姿勢は、健康に効果的ともいわれています。やり方を覚え、日常生活に取り入れてみるのもよいでしょう。
ここでは、蹲踞のポーズのやり方や期待できる効果を解説します。

ポーズのやり方
蹲踞のポーズはさまざまな方法がありますが、一例を紹介します。
- かかとを下ろした状態でつま先を90度開き、まっすぐに立つ
- つま先立ちになり、腰をまっすぐに下ろす
ゆっくりしゃがんでから背筋を伸ばしてもOK - お尻をかかとにつける
- 膝を左右に大きく開く
- 背筋をまっすぐに伸ばし、バランスを保つ
- 目線を一点に集中させ、両手を天井に上げて5秒キープする
手を上げるのが難しい場合は、5までのポーズでもOK。慣れてきたら、6まで進んでください。
目線を動かすとバランスが崩れやすくなるため、目線を一点に定めて集中することが大切です。
期待できる効果
蹲踞のポーズを維持するためには、バランス力と柔軟性が必要です。ポーズをとることで、股関節や骨盤、体幹の筋肉が鍛えられると考えられています。
蹲踞のポーズで期待できると考えられていることの一例は、次のとおりです。
- お腹を引き締める
- 足首やふくらはぎを引き締める
- 体幹を強化する
- 骨盤のゆがみを整える
蹲踞のポーズでしゃがむとき、自然とお腹に力が入るため、ぽっこりお腹を引き締める効果に期待できるとされています。また、しゃがんだ姿勢を維持することで、足首やふくらはぎの引き締め、体幹の強化にもつながるでしょう。
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膝を大きく開くポーズで太ももの内側が伸び、股関節の柔軟性アップも望めるとか。股関節が柔軟になると、腰痛の緩和にもつながるでしょう。
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しゃがんだ姿勢により骨盤周りの筋肉が鍛えられ、骨盤の調整にも役立ちます。骨盤が整えば、姿勢改善や代謝アップといった効果も期待できます。
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また、蹲踞のポーズは健康やダイエットの効果だけでなく、本来の効果である心を落ち着かせる作用ももたらしてくれるでしょう。
蹲踞は日本の伝統文化に欠かせない要素とも
蹲踞は、剣道や相撲で行われている日本の伝統的な座り方です。心を落ち着かせ、集中力を高める役割を果たします。また、茶道では「つくばい」と呼ばれる手水鉢を意味しており、茶室に入る前に手を清めるとともに、茶道における結界の役割をするものです。
蹲踞のポーズは、日常生活に取り入れて健康やダイエットに役立てることもできます。場所をとらず、スキマ時間で行えるため、ぜひ試してみてください。
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