一期一会とは? 意味や読み方
一期一会(いちごいちえ)とは、次の意味で使われる言葉です。
・一生に一度しかない出会い
・一生に一度限りであること
もともと「一期一会」という言葉は、茶道書「山上宗二記(やまのうえのそうじき)」に書かれた言葉です。筆者である安土桃山時代の茶人・山上宗二は、同書のなかで、どの茶会においても主人と客人が誠心誠意向き合うべきだと説きました。
いちご‐いちえ〔‐イチヱ〕
出典:小学館 デジタル大辞泉
《「山上宗二記」の中の「一期に一度の会」から》茶の湯で、茶会は毎回、一生に一度だという思いをこめて、主客とも誠心誠意、真剣に行うべきことを説いた語。転じて、一生に一度しかない出会い。一生に一度かぎりであること。
意味1.一生に一度しかない出会い
一期一会は、元々茶道で使われる言葉。茶会で出会う主人や客人は、もしかしたら一生に一度しか同席できない巡り合わせかもしれません。そのため、心残りがないよう、どの茶会でも常に誠心誠意向き合うことが必要です。
茶道以外の世界でも、一生に一度しかない出会いは訪れます。次のように使ってみましょう。
・特急列車の隣に座った人と話が弾んだ。一期一会とはいうけれど、名前だけでも聞いておけばよかったかもしれない
・毎日きれいに身だしなみを整えるのは、一期一会に備えているからです
意味2.一生に一度限りであること
出会いに限らず、一生に一度限りであることも「一期一会」といいます。茶道では、主人はまだ見ぬ客人のことを思って誠実に茶会の準備をし、当日は真剣にお茶を点てて、客人を最高の状態でもてなすことが必要です。また、客人も主人の心配りに感謝し、すべての行為に隠されたもてなしの気持ちを感じ取り、感謝をしてお茶を味わいます。
今回の茶会は二度と訪れず、同じ場所・同じメンバーで茶会を開いたとしても、それは別の茶会です。どのようなときでも常に最後だと思い、誠実に行うことの大切さを伝える言葉といえるでしょう。以下、例文を紹介します。
・どの仕事も一期一会だと思い、誠実に向き合ってきました
・このようなチャンスは一期一会だと思います。無駄にしないよう、しっかりと結果を出します
一期一会と類似する意味の言葉
一期一会のように、出会いや機会などの意味で使われる言葉をいくつか紹介します。
・巡り合い・巡り会い
・出合い・出会い・出逢い
・邂逅(かいこう)
それぞれのニュアンスや意味を、例文を使って解説します。
巡り合い・巡り会い
巡り合い(めぐりあい)とは、言葉通り巡り合うことです。めぐりめぐって出会うことや、別れ別れになっていた相手、長く求めていたものに出会うことを意味します。「巡り会い」と書くこともあります。
・彼とは数年に一度、偶然に巡り会う。何かしらの縁があるのだろう
・小学校のときの親友に偶然巡り合った。20年も経ったのにすぐにわかったのは、それだけお互いのことを深く理解していたからだと思う
出会い・出合い・出逢い
出会いとは、思いがけなく会うことや、めぐり会いのことです。「出合い」や「出逢い」と表記することもあります。
・彼との出会いは運命的なものだった
・一冊の本との出会いが、わたしの考え方を大きく変えた
「出合い」の漢字を使うときは、川や沢などの合流するところや、男女が密会することなどを指すことがあります。
・本流との出合い地点は、鮎釣りのスポットとしても知られている
・彼女は旅の男と出合い茶屋に入っていった
邂逅(かいこう)
邂逅(かいこう)とは、思いがけなく出会うことや巡り会いのことです。思いがけない出会いを指す言葉に「遭遇(そうぐう)」もありますが、遭遇は人だけでなく、動物や現象と思いがけなく出くわしたときにも使うのに対し、邂逅は人との出会いに主に使われる傾向にあります。
・旧友との邂逅に、胸が躍った
・長いときを経て、邂逅を果たした
一期一会と反対の意味を持つ言葉
一期一会のように、人との出会いや特別な巡り会いとは反対の意味を持つ言葉としては、次のものが挙げられます。
・日常茶飯・日常茶飯事
・定番
・お決まり
いずれも日常会話でもよく用いられる言葉です。それぞれの使い方やニュアンスを、例文を通して紹介します。
日常茶飯・日常茶飯事
日常茶飯(にちじょうさはん)とは、「毎日の食事」という意味から、毎日のありふれた事柄を指す言葉として使われています。日常茶飯事(にちじょうさはんじ)と表記することもあります。
・隣の家はいつでも大声で親子喧嘩をしている。日常茶飯だから、最近では気にならない
・彼が遅刻をするのは日常茶飯事だ。反省していないのもいつものことだ
定番
定番(ていばん)とは、流行に左右されない基本的な商品や、いつでもどこにでもあるもの、誰もがするような事柄を意味する言葉です。元々は、安定した需要があり、台帳の商品番号が固定している商品を指す言葉として使われていました。
・このシャツは定番商品だから、特に宣伝をしなくても手に取る人が多い
・おにぎりと卵焼きは、お弁当の定番メニューだ
お決まり
お決まり(おきまり)とは、言動がいつも同じで新鮮味がないことや、きまり文句のことです。「決まり」ともいいますが、多くは「お決まり」と「お」をつけて表現します。
・祖父のお決まりの自慢話が始まった。これは長くなりそうだ
・お風呂上がりにはお決まりのビール。いつものルーティンだが、わたしには一番の喜びだ
一期一会の意味を押さえよう
一期一会は、元々は安土桃山時代の茶人、山上宗二の茶道書に記された言葉です。茶席に向かうときは一生に一度だけの出会いと思い、心をこめて誠心誠意対応することの大切さを説いた言葉でしたが、茶道以外の場面でも使われるようになりました。
一期一会は、日常会話でも使われることがあります。誰に対しても最高のもてなしや対応を心がけるためにも、一期一会の意味と精神を理解しておきたいものですね。
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