皆さんは、薬を飲んだ時に、「苦くてまずい…!」と思った経験はありませんか? こんなに苦いのだからきっと効くはず、と言い聞かせて飲む人も多いかもしれませんね。これとよく似た「良薬は口に苦し」ということわざがありますが、一体どのような意味があるのでしょうか。本記事では、言葉の意味や使い方、類語、英語表現を解説します。
「良薬は口に苦し」の意味
「良薬は口に苦し」は、「りょうやくはくちににがし」と読みます。意味を辞書で確認してみましょう。
《「孔子家語」六本から》よく効く薬は苦くて飲みにくい。よい忠告の言葉は聞くのがつらいが、身のためになるというたとえ。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
病気を治すために、苦い薬を我慢して飲んだ、という記憶がある方も多いはず。よく効く薬ほど、苦味が強いというイメージがありますよね。「良薬は口に苦し」における、「良薬」とは、「人からのよい忠告」のこと。時に耳が痛いアドバイスほど、実は自分の身のためになるということです。
語源
「良薬は口に苦し」は、中国、春秋時代の思想家 孔子(こうし)の言行や、門人との門答などを集録した『孔子家語』に由来するとされています。この中に、「良薬苦於口、而利於病、忠言逆於耳、而利於行」と記され、「よく効く薬は苦いものだが、よく病気を治す。真心から諌めた言葉はなかなか聞き入れづらいが、有益である」と孔子は述べています。
他人からの手厳しいアドバイスほど身のためになることは、今も昔も変わっていないのかもしれませんね。
使い方を例文でチェック!
「良薬は口に苦し」は、日常会話でどのように使われるのでしょうか? 一緒に見ていきましょう。
1:良薬は口に苦しというし、先生からのアドバイスはきちんと聞いたほうがいいよ。
目上の人の言うことをなかなか聞かないでいると、他人からこのように言われることもあるでしょう。自分のできていないことを注意されるのは、不愉快に感じるものですが、後から振り返ると、「あのアドバイスのおかげでやり遂げられた」と思うことも。
自分の成長のために、厳しい言葉を受け入れられるといいですね。
2:良薬は口に苦しとはわかっていても、父の説教を素直に聞くことができない。
両親や兄妹など、身内からの言葉ほど、素直に受け入れることができないこともあるものです。説教されると、「はいはい」と流してしまったり、言い合いになってしまったりした経験はありませんか? 身近な人からのアドバイスほど、意地を張って聞こうとしないことは珍しくありません。
3:上司からの厳しい言葉ほど、良薬は口に苦しと思って、受け入れようとしている。
ビジネスシーンでは、上司や取引先の人から手厳しいことを言われることもあるでしょう。自分の短所や至らない部分を指摘され、恥ずかしい思いをすることもあるかもしれません。しかし、そんな時ほど、腐らずアドバイスを今後に活かそうとすることを心がけたいですね。
類語や言い換え表現は?
「良薬は口に苦し」と似た意味を持つことわざに、「金言耳に逆らう」「薬の灸は身に熱く、毒な酒は甘い」があります。どちらも馴染みがない言葉ですが、どのような意味なのでしょうか? 一緒に確認してみましょう。
1:金言耳に逆らう
「金言耳に逆らう」は、「きんげんみみにさからう」と読みます。意味は以下の通りです。
金言は、ややもすると人の感情を損なって、聞き入れられない。
『デジタル大辞泉』(小学館)より引用
そもそも「金言」とは、世渡りの手本とすべき優れた言葉のこと。目上の人から人生の教訓を語られて、頭ではその通りだと思いながらも、なかなか素直に受け入れられないということです。
若く、人生経験が浅い時ほど、目上の人の助言に対して逆らってしまうことはありますよね。
(例文)
・金言耳に逆らうというように、若い頃の私は父親に反発してばかりいた。
・先生の言葉がなかなか受け入れられない。金言耳に逆らうだ。
2:薬の灸は身に熱く、毒な酒は甘い
「薬の灸(きゅう)は身に熱く、毒(どく)な酒は甘い」とは、本人のためになる忠告は厳しく感じられ、身を滅ぼす甘い言葉や誘惑は心地よく感じるものだ、ということのたとえです。
「薬の灸」とは、「お灸」のことで、もぐさを皮膚の上に置いて燃やし、その温熱刺激によって体調を整える治療方法のこと。体を健康にするための治療は、時に痛みを伴うように、心を成長させるためには、厳しい言葉が必要となることも。
一方で、耳障りのいい言葉は人を傲慢にさせ、堕落させる原因になることもあるでしょう。本当に自分のためになるのはどちらなのか、言葉の中の本質を見抜く必要がありますね。
(例文)
・薬の灸は身に熱く、毒な酒は甘いという言葉もあるから、慎重に判断しなさい。
・両親の忠告を無視して、詐欺師の誘いに引っかかってしまった。薬の灸は身に熱く、毒な酒は甘いとはこのことだ。
英語表現は?
「良薬は口に苦し」と似たニュアンスを持つ英語表現には、ことわざの「Good medicine tastes bitter to the mouth.」があります。
たとえば、「良薬は口に苦しというけれど、親の忠告を素直に聞けない」と英語で言いたい時には、「They say good medicine tastes bitter to the mouth, but I can’t listen to my parents’ advice.」と表現できますよ。
最後に
「良薬は口に苦し」は、「よく効く薬は苦くて飲みにくい。よい忠告の言葉は聞くのがつらいが、身のためになるというたとえ」です。現代の薬は、だいぶ飲みやすくはなっているものの、やはり美味しい味ではありませんよね。
目上の人に忠告されて不愉快な気持ちになった時ほど、このことわざを思い出して、自分の成長に繋げてみてくださいね。
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